【貞操逆転】おっさん高校生ユキ、モテすぎて困ってます!
【貞操逆転】おっさん高校生ユキ、モテすぎて困ってます!
37歳独身のおっさん、ユキが目を覚ますと、そこはパラレルワールド!しかも、自分と同じ名前の、ちょっと気弱な男子高校生に憑依していた。
喜びもつかの間、彼はこの世界のトンデモなルールを知る。ここは男が極端に少ない「貞操逆転世界」。恋愛も含め、あらゆることに女性が積極的で当たり前なのだ!
高校で待ち受けていたのは、四人の個性的な女子たち。天然お嬢様で、いきなり告白してくる白鳥美桜。本のことになると人が変わったように大胆になる、内気な図書委員の橘静香。誰もが恐れる先輩なのに、ユキの前ではデレデレの甘えん坊になる冴島凛。そして、パーソナルスペースという概念がゼロの、自由奔放なギャル南陽菜。彼女たちが、ユキに全力の恋愛猛攻撃を仕掛けてくる!
「こんなおっさんが、こんなにモテていいのか!?」と内心叫びつつ、大人の余裕でなんとか対応するユキ。しかし、このハーレム生活が平穏に続くはずもなく……。
はたしてユキは元の世界に戻れるのか、それとも、この逆転恋愛世界で人生最大の青春を謳歌するのか!?
【貞操逆転】おっさん高校生ユキ、モテすぎて困ってます! - 図書室の静寂、本好き少女の秘密の告白まがい
前日、屋上で陽菜に壁ドンされた感触がまだ背中に残っている。廊下を歩くユキの足取りは重かった。
(今日こそ平穏に過ごしたい。頼むから誰も絡んでくるな)
そんな祈りも虚しく、四時間目の終わりを告げるチャイムと同時に、教室の空気が騒がしくなる。昼休みだ。ユキがそっと席を立とうとすると、視界の隅でゆるふわの茶髪ポニーテールが揺れた。
「ユキ、ちょっと待ちなって!」
陽菜が人混みをかき分けて机の前に立ちはだかる。手には一枚のプリントが握られていた。体育祭のペア登録フォームだ。
「なんだ、それ」
「見ればわかんじゃん! 体育祭のペア登録! 締め切り明日なんだけど!」
陽菜がグイッとフォームを突きつけてくる。教室中の女子たちの視線がチラチラと集まっているのに、陽菜は全く気にしない。むしろ楽しそうですらある。
「今日中に決めなくていいだろ」
ユキが後ずさると、陽菜はさらに距離を詰めてきた。シャンプーの甘い香りがふわりと漂う。
「えー、もしかして私と組むのイヤなわけー? 昨日の今日でヒドくない?」
陽菜がニヤニヤしながらユキの二の腕を指でツンツンと突く。そのくすぐったさと距離感に、ユキの若い体がまた勝手に反応しそうになる。
(まずい。このままだと流される)
ユキは脳内で必死に逃げ道を探した。37年の人生経験が、こんな時に役立つとは思わなかった。
「悪い、ちょっとトイレ」
「は? 今トイレ!?」
ユキは陽菜の脇をすり抜け、廊下に飛び出した。背後から陽菜の声が追いかけてくる。
「ちょっとユキ! 逃げんなってばー!」
振り返ると、陽菜が追いかけてくるのが見えた。
(やっぱり追ってきた!)
ユキは本館の廊下を全力で走った。すれ違う女子生徒たちが驚いた顔で振り返る。
「え、転入生くん走ってる?」
「しかも陽菜に追われてるよ」
階段にたどり着き、二段飛ばしで駆け上がる。特別棟への渡り廊下を抜け、さらに階段を上る。息が切れてきたが、後ろから陽菜の足音が聞こえなくなるまで走り続けた。
「ユキー! 覚えてろよー!」
遠くから陽菜の叫び声が聞こえたが、だんだん遠ざかっていく。どうやらまいたらしい。
ユキは特別棟3階の廊下で立ち止まり、膝に手をついて息を整えた。心臓がバクバク言っている。
(この若い体、持久力はあるな。でも中身は37だ。精神的にキツい)
顔を上げると、目の前に「図書室」と書かれたプレートが見えた。コウヨウ学園の図書室。創立50年以上の歴史があり、蔵書数は1万8千冊を誇る。
(ここなら静かだし、陽菜も来ないだろ)
ユキはドアを静かに開けて中に入った。
図書室は思った以上に広かった。高い天井まで届く書架が何列も並び、窓から午後の光が差し込んでいる。古い紙と木の匂いが混ざった、独特の落ち着く空気。
カウンターには司書の冴島カナエが座っている。28歳の女性教員で、寡黙だが仕事は的確だと聞く。ユキが入ってきたのに気づくと、軽く会釈をした。ユキも会釈を返し、書架の間へと入っていった。
窓から見えるのは、ミナカゼ市の街並みと、遠くの太平洋。海面が午後の陽射しにキラキラと輝いている。
(落ち着くな)
ユキは深く息をつき、ゆっくりと書架の間を歩き始めた。背表紙を見ながら歩いていると、ふと一冊の本に目が止まる。
『黄昏の守り人』
そのタイトルに、ユキの手が自然と伸びた。元の世界でベストセラーになった小説にそっくりだ。表紙の雰囲気も、あらすじも、かなり似ている。
「あ、この話知ってる……こっちの世界にも似たのあるんだな」
思わず独り言が漏れた。その瞬間——
「……それ、読んだんですか?」
小さな、でもハッキリとした声が背後から聞こえた。
振り返ると、図書室の奥、L字型になった閲覧席の隅に、小柄な女子が座っていた。黒髪をおさげに結い、黒縁メガネをかけている。切れ長の黒目が、メガネの奥で大きく見開かれていた。胸には栞を挟んだ文庫本が抱えられている。
橘静香——1年生で図書委員の彼女は、普段はほとんど存在感を消しているような、静かな生徒だ。しかし今、その静香が、半立ちになってユキを凝視していた。
「え? あ、ああ、これ? あ、いや、知ってるってだけで」
ユキがしどろもどろに答えると、静香はスッと立ち上がり、ユキの手元の本をじっと見つめた。
「その本、最終章で主人公が故郷に戻りますよね。ほとんどの人が『愛のために戻った』って言うんですけど、私は違うと思うんです」
静香の口調が、堰を切ったように早くなる。普段の無口な印象が嘘のようだ。
「読んだ人に会ったのは初めてで……あ、ごめんなさい、急にこんなこと言って」
静香がハッとして顔を赤らめ、口を閉じた。
ユキはその姿に、思わず笑みが漏れた。
「いや、面白い意見だと思う。俺はあの終章、主人公が戻ってきたのは愛のためじゃなくて、責任感からだと思うんだ」
おっさん時代の読書経験が、こんなところで役に立つとは。
静香の目がキラリと光った。
「違います!」
声のトーンが一段上がる。
「愛と責任を切り離して考えるから、そう見えるんです。主人公は守りたいから戻ったんじゃない。一緒にいたいから戻ったんです。愛と責任は別々の動機じゃなくて、二つが元々ひとつの感情として溶け合っているのが、この物語の一番大事なところで……!」
静香は身振り手振りを交えて語り始めた。普段は絶対にしないであろう、熱のこもった身振りだ。おさげが揺れる。メガネの奥の瞳がキラキラしている。
ユキはその熱意に、内心で舌を巻いた。
「なるほどな。じゃあ、あのラストシーンで主人公が何も言わずにただ立ってたのは、言葉にする必要がなかったからか」
「そうです! もう全部わかってるから、言葉はいらないんです! あの沈黙が全てを語ってるんです!」
静香が嬉しそうにうなずいた。その笑顔が、あまりにも純粋で。
ユキは胸の奥に、小さな温かさが灯るのを感じた。
——ドクン。
心臓が、少しだけ早くなる。
(……なんだこれ。やばいな)
ユキは気づかないふりをした。
「君、本当に本が好きなんだな」
ユキがそう言うと、静香はハッと我に返ったように口を閉じ、みるみるうちに耳まで真っ赤になった。
「ご、ごめんなさい……つい、興奮してしまって……」
静香が小さくなって俯く。その反応がいじらしくて、ユキはまた笑ってしまった。
「謝ることじゃないだろ。むしろ、同じ本についてここまで熱く語れる相手がいるって、嬉しいもんだ」
ユキがそう言うと、静香がおそるおそる顔を上げた。目が合う。
静香が少しだけ嬉しそうに、口元をほころばせた。
「……はい。私も、嬉しいです」
窓から差し込む午後の光が、静香の横顔を柔らかく照らしている。黒髪がさらりと揺れ、長い睫毛が影を落とす。
ユキはまた、心臓がドクンと跳ねるのを感じた。
(やばいやばいやばい。若い体のせいだ、これは)
「えっと、よかったら、向かいの席に座らないか? 立ち話もなんだし」
平静を装って言うと、静香は小さくうなずいた。
二人はL字型閲覧席に向かい合って座った。窓の外では、海がキラキラと輝いている。図書室の静けさの中で、二人だけの時間がゆっくりと流れ始めた。
ユキはおっさん時代に読んだ小説の記憶を辿りながら、静香に質問を投げた。
「そういえば、著者の別の作品って読んだことある?」
「はい! 『蒼穹の果てに』と『迷宮の詩』は読みました。特に『蒼穹の果てに』の方は、『黄昏の守り人』と世界観が繋がっているという説があって——」
静香がまた目を輝かせて語り始める。話題はどんどん広がっていった。著者の他の作品、この世界の類似作品、さらには文学論にまで及ぶ。
「そういえば、似たようなテーマの作品で『海辺の記憶』って本があるんですけど、知っていますか?」
「いや、それは知らないな。面白いのか?」
「すごくいいです! 特に終盤の展開が……あっ、でもネタバレになるから言えません」
静香が口を押さえて、いたずらっぽく笑った。そんな表情もできるんだな、とユキは新鮮に思う。
会話が途切れるたびに、窓の外の景色が目に入った。校庭のイチョウの木々が風に揺れている。遠くの海に、小さな船が一艘浮かんでいる。
(こういう時間も悪くないな)
ユキは心からそう思った。美桜や陽菜のような積極的なアプローチに翻弄されるのではなく、ただ純粋に、共通の趣味について語り合う。それは37歳の心にとって、妙に落ち着く時間だった。
一方で——
静香が笑うたびに、心臓がトクンと跳ねる。
静香が身振り手振りで説明するたびに、その小さな手を見てしまう。
静香が俯いて栞をいじるたびに、その指先が妙に気になる。
(あー……これは、やっぱり、恋ってやつなのか?)
ユキは頭をかいた。
(いや、違う。これは若い体のせいだ。中身37の俺が、高校1年生の女子に本気になるわけがないだろ)
自分にそう言い聞かせるが、心臓は言うことを聞かない。
その時——
キーンコーンカーンコーン。
下校を告げるチャイムが、静かな図書室に響き渡った。
二人はほぼ同時に、ハッと顔を上げた。
「え、もうそんな時間か?」
「あ、ご、ごめんなさい! 長話させてしまって……!」
静香が慌てて文庫本に栞を挟みなおし、カバンにしまい始める。顔が耳まで真っ赤だ。おさげが揺れる。
「全然。久しぶりに本の話ができて、すごく楽しかった」
ユキが素直にそう言うと、静香の手が止まった。
しばらく沈黙が続く。カバンに本をしまったまま、静香はうつむいて動かない。
「……ユキくん」
かすれたような小さな声で、静香が口を開いた。
「私、ここにいつもいるから……」
静香が顔を上げる。真っ赤になった顔で、潤んだ目で、ユキをじっと見つめる。
「……待ってるから」
言い終わると同時に、静香は俯いてしまった。肩が小さく震えている。
ユキの脳内がフリーズした。
(え、待つってどういう意味だ? 本の話を待つ? いや、この流れでそれはないよな? ってことは、あれか? 告白か? 今のって告白なのか? いや待て俺、高校生の体だけど中身は37歳で、静香は1年生で、まだ15かそこらで——)
心の中がぐるぐると回る。平静を装おうとするが、顔が熱くなっているのが自分でもわかる。
「あ、あの……」
ユキが何か言いかけた、その瞬間——
ガチャッ!
図書室のドアが勢いよく開いた。
「発見! やっぱりユキ、ここにいたわけ!?」
入り口に立っていた陽菜が、腰に手を当てて仁王立ちしている。ゆるふわのポニーテールが、怒りと達成感で揺れていた。
静香がビクッと肩を跳ねさせる。
「陽菜……お前、なんでここが」
「あんたが逃げるからでしょ! 全っ然トイレじゃないじゃん! 教室戻ってもいないし、特別棟の方に走ってくって聞いて、探し回ったんだから!」
陽菜がズカズカと中に入ってくる。その目が、ユキと静香を見比べて、スッと細くなった。
「え、なにこれ。ふたりで何してたん?」
声のトーンが一段下がる。陽菜が静香をじっと見た。
静香が慌てて立ち上がる。
「あ、あの、私は図書委員で、ここで本を読んでて、その、たまたまユキくんと本の話になって——」
静香がしどろもどろに説明する。顔はさっきよりもさらに真っ赤だ。
「ユキ、ペア登録まだなのに、他の女子とこんなとこでデートとか、ないんだけど!」
陽菜がユキの方を振り返り、怒った顔で詰め寄ってきた。照れと怒りが混ざった、複雑な表情だ。
「いや、デートって、たまたまここで会っただけで——」
ユキが言い訳するが、陽菜は聞く耳を持たない。
「うるさい! とにかくペア登録するからね! 明日締め切りなんだから! ばーか!」
陽菜がユキの腕をガッと掴んだ。その手が、少し震えている。
(こいつ……照れてる?)
ユキは陽菜の不器用な感情表現に、少しだけ胸がチクッとした。
その時——
「わたくし、お邪魔だったかしら」
凛とした声が、図書室の入り口から聞こえた。
全員が振り返る。
そこには、腰まであるストレートの金髪を揺らして、美桜が立っていた。大きな青い瞳が、ユキと陽菜と静香を順番に、ゆっくりと見渡している。
「ユキくん、図書室にいらっしゃったのですね。わたくし、ずっとお待ちしていたのですよ」
美桜がにっこりと微笑んだ。その笑顔は完璧で、曇りがまったくない。しかし、その青い瞳の奥には、何か熱いものが宿っているように見えた。
陽菜が、ユキの腕を掴んだまま固まっている。
静香が、文庫本を抱えたまま小さくなっている。
ユキは三人の女子に囲まれて、図書室の真ん中で立ち尽くした。
(……修羅場だ)
頭の中にその二文字が浮かぶ。
ミナカゼ市の午後の光が、図書室の窓から差し込み、四人の影を床に長く落としていた。遠くから、下校する生徒たちの笑い声が聞こえる。
ユキは、目を閉じて、心の中で呟いた。
「まいったな……仕方ない」
平穏な学園生活。それはやはり、夢のまた夢だった。Noveliaとは?
Noveliaは、AIでライトノベルや二次創作を「読んで・数タップで作って・キャラクターと会話できる」プラットフォームです。挿絵つきの新作が毎日届き、無料で始められます。