魔法騎士セラフィアース! 〜呪いで男女逆転☆ドタバタ戦記〜
ある日、伝説の魔法騎士、光、海、風は、呪いの泉の水を浴びてしまい、とんでもない大災害に巻き込まれる!
光は男の子に、海と風は女の子に変身! そして、その姿を見た瞬間から、セフィーロの仲間たちも次々と男女が逆転していく。
慣れない体と、仲間たちの突然の変貌に、パニックと笑いが止まらない。魔法の力も、恋模様も、すべてがぐちゃぐちゃに。
元に戻るためには、三日以内に『真実の心の欠片』を集めなければならない。しかも、新しい体に慣れながら、自分自身の本当の気持ちと向き合う必要があるらしい。
男の子になった光は、無性に親友ランティスを意識してしまい、胸が高鳴る。女の子になった海と風は、今までと違う目で見られてしまい、大混乱。
そんな中、呪いを楽しんでいるような、謎の妖精パペットが現れる。彼女は『恋のジャンケン大会』や『恥ずかしい台詞バトル』など、無茶苦茶な試練をふっかけてくる。
果たして三人は、体も心もめちゃくちゃな三日間を乗り越え、無事に元の姿に戻れるのか? それとも、新たな自分に目覚めてしまうのか?
笑いあり、胸キュンあり、ちょっぴり切なさもある、ドタバタラブコメディ、開幕!
魔法騎士セラフィアース! 〜呪いで男女逆転☆ドタバタ戦記〜 - 照れ台詞バトルと引き裂かれたラブレター!最悪の二日目が始まった
宿屋「風見鶏亭」の朝。
一階の食堂には、焼きたてパンの香りが漂っていた。
長い黒髪を後ろで束ねたランティスが、窓辺の席で静かにスープを口に運んでいる。
その向かいでは、小さくなったウミが椅子の上で足をぶらぶらさせながら、不機嫌そうにパンをちぎっていた。
ヒカルは、二人から少し離れた席に座っていた。
燃えるような赤い髪をくしゃくしゃとかきながら、皿の上の目玉焼きをフォークでつついている。
(ランティスのこと、まともに見られない……)
昨日の夕暮れ。星降りの円庭でのじゃんけん大会。
十秒間、握り合った手の感触が、まだ自分の右手に残っている気がした。
「[whispers]呪いのせい、呪いのせい……」
ヒカルが小声でぶつぶつ言っていると——
ドガンッ!
食堂の窓ガラスが、突然虹色に輝いた。
「[excited]おっはよーでちゅ!今日もいい天気でちゅねー!」
小さな妖精が、窓をすり抜けて飛び込んでくる。
ピンクと水色のモヒカンが、ぴょこぴょこ跳ねていた。
「[surprised]なっ……朝っぱらからなんなんだよ!」
ヒカルが立ち上がる。
パペットは気にせず、空中でくるっと回った。
「[serious]聞くでちゅ!本日の試練は『照れ台詞バトル』でちゅ!」
「……てれ、ぜりふ?」
ランティスがスプーンを置いた。
「[excited]そう!相手の目を見ながら、本心から出た褒め言葉を言うでちゅ!嘘や棒読みはバレバレでちゅよ~。ばれたら罰として、全員の呪いが一時間悪化するでちゅ!」
「[scared]そ、そんなの無理に決まってるだろ!」
ヒカルは、ガタンと音を立てて机に手をついた。
「[teasing]あれ~?ヒカルくんはランティスちゃんに、言いたいことの一つもないんでちゅか~?」
「[scared]なっ……!」
言葉がつまる。
ランティスの方を見ると、その深い青色の瞳と、ばっちり目が合った。
ドキン。
鼓動が跳ねる。
ヒカルはあわてて視線をそらし、テーブルに額を打ち付けた。
ゴンッ。
「[crying]死んでも無理だ……!」
「[sad]私もよ……そういうの、一番苦手なのよ……」
ウミも青ざめた顔でうつむいている。
小さな手が、膝の上でぎゅっと握られていた。
「[serious]でも断れば、呪いが悪化するでちゅ。どうするでちゅか?」
「[angry]……わかったわよ!やればいいんでしょ、やれば!」
ウミが叫んだ。
「[excited]決まりでちゅ!会場は風車村ミレーヌ!もう村人たちへの宣伝も済んでるでちゅよ~!」
「[surprised]はあ!?もう宣伝したのかよ!?」
パペットは答えず、虹色の光になって窓から飛び出していった。
残された三人の間に、重い沈黙が落ちる。
「……行くぞ」
ランティスが静かに立ち上がった。
長い黒髪が、朝日に照らされてきらめく。
その横顔は、いつもよりずっと女性らしくて、ヒカルはまた視線をそらした。
風車村ミレーヌの広場に着くと、すでに村人たちが輪を作って待っていた。
十二基の風車が、初夏の風を受けてゆっくりと回っている。
「[laughing]はっはっは!待っておったぞ、魔法騎士の皆さん!」
大柄な村長バルトスが、豪快な笑い声で三人を出迎えた。
「[excited]さあさあ、始めるでちゅよ!最初の対戦は——ウミちゃん対ヒカルくんでちゅ!」
パペットが空中で手を叩くと、村人たちから歓声が上がった。
ウミが、広場の中央に進み出る。
小さな体で、ヒカルをじっと見上げた。
「[sad]ヒカル……あなたは、その……」
「[scared]お、おう……」
ウミは、ほっぺたを真っ赤にしながら、言葉を絞り出した。
「[embarrassed]あなたは……男の子みたいに見えるけど、中身はすごくバカ正直で、たまに尊敬するわ……!」
一瞬の沈黙。
次の瞬間、村人たちがどっと笑い出した。
「[surprised]そ、それは褒めてんのか!?けなしてんのか!?」
「[angry]褒めてるわよ!!私にしては、すごく褒めたわよ!!」
ウミが、顔を真っ赤にしてぴょんぴょん跳ねる。
その姿が、あまりに子供っぽくて、村人たちの笑いがさらに大きくなった。
「[crying]わ、笑わないでよ!どうせ私は子供ですよ……!」
ウミは涙目で、広場のすみに駆けていった。
「[excited]場が温まったでちゅ!さあ、メインイベント!ランティスちゃん対ヒカルくんでちゅ!」
パペットが高らかに宣言する。
ヒカルの心臓が、ドキドキと早鐘を打ち始めた。
正面に立ったランティスが、ゆっくりとヒカルに向き直る。
風に揺れる長い黒髪。
深い青色の瞳が、まっすぐにヒカルを見つめていた。
「[serious]……聞こう」
静かな声。
でも、その声が、ヒカルの胸の奥にじわりと染み込む。
村人たちが、固唾をのんで見守る。
ヒカルは、ランティスの目をじっと見つめた。
(きれいだ)
頭の中に、その言葉だけが浮かんだ。
長いまつ毛。
すらりと伸びた背筋。
風に揺れる黒髪。
全部、きれいだ。
男の子だった頃も、かっこいいと思ってた。
でも今は、ただただ、きれいだと思う。
「[whispers]き……きれいだな、って……思った。今日の……お前」
ヒカルは、全身を真っ赤にしながら、震える声で絞り出した。
広場が、静まり返った。
風車の回る音だけが、ぎぃ、ぎぃ、と響く。
次の瞬間——
「うおおおおお!!」
「言った!言ったぞ!」
「魔法騎士様が告白した!!」
村人たちが、割れんばかりの大歓声を上げた。
ランティスは、表情を変えずに固まっている。
でも。
耳の先だけが、ほんのりと赤くなっていることに、ヒカルは気づかなかった。
その時だった。
「[gasp]ランティス様ーーー!!」
息を切らせて、ウミが村の入口から駆け込んできた。
小さな手に、美しい封筒を握りしめている。
「[surprised]ウミ?どうしたんだよ、そんな息切らして」
「[panting]宿に……届け物が……これ……」
ウミがランティスの前に差し出した封筒。
表には、達筆な文字でこう書かれていた。
『ランティス様へ フェリオより』
「[surprised]フェリオ?王子のだよな?呪いで女の子になった……」
「[excited]お、お手紙でちゅか!?ラブレターでちゅか!?パペちゃん見たいでちゅ!」
パペットが飛びつこうとするのを、ウミが必死に払いのけた。
ランティスは、無言で封筒を受け取る。
封を開き、中の便箋に目を通した。
その表情は、少しも動かない。
「[curious]なになに?なんて書いてあるんだ?」
ヒカルが、ランティスの肩越しに便箋をのぞき込もうとした——その瞬間。
ビリッ。
ランティスは、無言のまま便箋を両手で二つに引き裂いた。
破れた紙片が、風に舞う。
一枚、二枚——初夏の風に乗って、くるくると空に吸い込まれていく。
広場の喧騒が、水を打ったように静まり返った。
「[scared]…………」
誰も、何も言えない。
ランティスは、引き裂いた紙の片方を、ヒカルの手のひらに静かに押し付けた。
その手が、かすかに震えている。
「……ランティス?」
ランティスは、答えない。
ただ一言も発さず、踵を返して広場から歩み去っていく。
長い黒髪が、風に大きく揺れた。
その背中が、遠ざかっていく。
ヒカルは、引き裂かれた手紙の切れ端を両手に持ったまま、立ち尽くしていた。
「[whispers]なんで……?」
「[scared]ランティス様、怒ってた……?あんなに怖い顔、初めて見たわ……」
ウミの声も震えている。
「[muttering]……ちょっと、予定と違ったでちゅ」
パペットでさえ、いつもの高笑いをしない。
空中で足を組んで座り、金色の目をぱちぱちさせている。
ヒカルは、手の中の紙片を見つめた。
フェリオの文字が、ちぎれた部分で途切れている。
『あなたの凛とした姿に、ずっと目が離せませんでした。呪いが解けても、解けなくても——』
(フェリオは、本気でランティスのことを……)
「[confused]でも、なんで手紙を破ったんだ……?気に入らなかったのか……?」
「[angry]ヒカル、あんたねぇ……!」
ウミが何か言おうとしたが、途中で口をつぐんだ。
小さな手をぎゅっと握りしめて、うつむいてしまう。
「[whispers]自分があんなこと言ったからか?のぞき込もうとしたのが、失礼だったのか……?」
ヒカルは、ぐるぐると考え続けた。
——嫉妬。
その言葉は、ヒカルの頭の中には、一瞬たりとも浮かばなかった。
風車村の夕暮れ。
ヒカルは、まだ広場に立ち尽くしていた。
引き裂かれた手紙を、ぎゅっと握りしめたまま。
タイムリミットまで、残り一日と少し。
真実の欠片は、まだゼロ。
風が吹く。
ちぎれた紙片が、ヒカルの手の中で、かさりと音を立てた。