セナ、もう一つの空 〜君が選ばなかった道で〜
大ヒット青春ドラマの主人公、白咲ハルト。彼は親友で空手部のエース、黒瀬レンのことが気になって仕方なかった。
ドラマでは、幼なじみの空澄セナと結ばれるハッピーエンド。でも、現実のハルトはもし、あの時レンと話していたら…って考えちゃう。ある日、撮影の合間にセナがこっそり教えてくれた。レンくんね、本当はハルトに助けてほしいことがあったんだってって。
それを聞いた瞬間、ハルトの頭の中にifの記憶が流れ込んでくる!中学の時、ケガで空手をあきらめかけてたレン。ハルトは大丈夫だって!お前ならできる!って毎日さけんで、ムリヤリ道場に引っぱっていく。感動の再起をとげたレンは、なぜかハルトにベタぼれ!お前だけは死んでも守るとか平気で言ってくる。
ちがいはそれだけじゃない。ドラマの悪役だった生徒会長の白石アキラまでもが、ハルトに俺はお前に興味があるって急接近。どうやらifの世界では、みんなハルトの行動で人生が変わっちゃったらしい。
ちょっと待って!俺はセナとラブラブのはずじゃ…でもレンもカッコいいし、アキラ先輩も気になるし!?
さらに大問題が。ハルトの目の前で、ドラマの世界(セナといる方)とifの
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セナ、もう一つの空 〜君が選ばなかった道で〜 - 境界領域の三分身 — 誰も選ばない選択
神社の石段は、思ったより冷たかった。
ひんやりとした硬さが、尻にじかに伝わってくる。空気は湿っていて、かすかに線香のにおいがした。
白咲ハルトは、百八段目の石段に腰を下ろしていた。
(来ちゃったなあ)
頭の上の方で、カピ丸が心配そうにこっちを見ている。ふわふわの白い毛が、暗がりの中でぼんやりと光って見えた。
「本当に行くのか。まだ引き返せるんだぞ」
「うん。行く」
ハルトは立ち上がった。
目の前には、ミナトザカ神社の鳥居がある。
でも、それはもう普通の鳥居じゃなかった。
ぐにゃり。
空間が歪んでいる。鳥居の向こう側の景色が、ぐちゃぐちゃに溶けて、ゆらゆらと揺れている。まるで水の中に沈んだ絵の具みたいに、色と形が混ざり合って、うねっていた。
空気がひりついている。
肌に刺さるような、静電気みたいな感覚。
「境界が、すごく薄くなってる。あと数時間で、もしかしたら……」
「だから、今しかないんだろ」
ハルトは鳥居の前に立った。
心臓が、うるさいくらいにどきどきしていた。
(こわい)
正直、すごくこわい。
でも。
(こわいって言ってられないんだ)
セナの泣き顔が、頭に浮かんだ。
レンの真っ直ぐな目。
アキラ先輩の、冷たいけど、どこか悲しそうな声。
みんな、俺のせいで苦しんでる。
俺が、優柔不断だから。
俺が、誰も選べないから。
(なら、俺がやるしかないじゃん)
大丈夫だって。
自分に言い聞かせた。
ハルトは、一歩を踏み出した。
鳥居の歪みに、体が吸い込まれていく。
「ハルト! 無理するな! やっぱり戻るのだ——」
カピ丸の声が、遠くなった。
ぐにゃり。
世界が、ひっくり返った。
上下がなくなる。
右も左も、前も後ろも、ぜんぶ一緒くたになって、自分がどこにいるのか、どこを向いているのか、まったくわからない。
体が、ばらばらになりそうだった。
一瞬、すごい浮遊感。
ジェットコースターで急降下する時みたいに、内臓がふわっと浮き上がる。
そして——。
ぶわっ。
光。
まぶしい、真っ白な光が、視界ぜんぶを埋め尽くした。
「うわっ……!」
ハルトは、両手で顔をかばった。
まぶたの裏まで真っ白で、目を開けているのか閉じているのかもわからない。
……どれくらい、そうしていただろうか。
ゆっくりと、光が落ち着いてくる。
ハルトは、おそるおそる目を開けた。
「え……」
ここは——どこだ?
周りは、真っ白だった。
真っ白い床。
真っ白い天井。
真っ白い壁。
あるのかないのかもわからない。
ただ、無限に続く白い空間。
自分の影だけが、足元に濃く落ちている。
「カピ丸……?」
返事はなかった。
ハルトは、自分の手を見た。
ちゃんとある。自分の手だ。握ったり開いたりできる。指の感覚もある。
(でも……変だ)
なんとなく、自分が自分じゃないみたいな、変な感覚。
「——よう」
声。
聞き覚えのある声が、後ろからした。
ハルトは、バッと振り返った。
「なっ……」
言葉が、出なかった。
そこにいたのは——。
俺と、同じ顔。
俺と、同じ服。
俺と、同じ髪型。
でも、雰囲気が、ちょっとだけ違った。
穏やかな目。
困ったような、やわらかい微笑み。
まるで、優しい兄貴みたいな空気をまとった、もう一人のハルト。
「君が、俺か。オリジナルの、俺」
「——待ってた」
もう一つ、声がした。
今度は逆側から。
ハルトがそっちを向くと——。
もう一人いた。
今度は、熱い目をしたハルト。
拳をぎゅっと握りしめて、まっすぐにこっちを見ている。
情熱的で、何があっても絶対に折れない、強い意志を持ったハルト。
「お前がオリジナルか。待ってたぞ」
「え、え、え……!? ちょっと待って! 二人!? 二人も俺がいるの!?」
ハルトは、大声を出してしまった。
頭の中が、ぐちゃぐちゃだ。
状況が、まったく理解できない。
「うん、そうみたいだね。僕は、正史の世界でセナと一緒にいることを選んだハルト」
正史のハルトが、静かに言った。
セナ、という名前を口にした時、その目がかすかに曇った。
「俺は、ifの世界でレンとアキラを助けることを選んだハルトだ」
ifのハルトが、力強く言った。
レン、アキラ、という名前が出た瞬間、その声に熱がこもる。
「君は、まだどっちも選んでいない、オリジナルのハルト」
「俺たちは、お前の中にある『もしもの可能性』だ」
ハルトは、ふらふらと一歩、後ろに下がった。
(夢?)
(これ、夢なのか?)
でも、感覚はあまりにもリアルだった。
足の裏が白い床を踏む感触。
自分の呼吸の音。
心臓のドキドキが、うるさいくらいだ。
「セナは、俺のせいで泣いている」
正史のハルトが、突然、切り出した。
その穏やかな目が、悲しそうに細められる。
「彼女は、自分から身を引こうとしている。俺を楽にさせるために、自分を犠牲にしようとしている。……俺は、それが許せない。セナの自己犠牲なんて、絶対に認めたくない。彼女の笑顔を失いたくないんだ」
その声には、静かな怒りと、深い愛情が込められていた。
「セナは、優しいんだ。優しすぎるんだよ。だから、自分の気持ちを押し殺して、俺のために……俺のためにって、笑うんだ。そんなの、間違ってる。絶対に、間違ってるだろ……!」
ハルトは、ぐっと言葉に詰まった。
そうだ。
セナは、そういうやつだった。
俺が困ってると、いつも自分のことは後回しで、俺のことを優先しようとする。
その優しさが、今は逆に痛かった。
「だからって、レンとアキラを裏切れるのかよ!」
今度は、ifのハルトが叫んだ。
熱い目が、怒りに燃えている。
「レンは俺がいなければ空手も希望も全部失ってた! あいつは、俺に救われたんだ! 俺が『大丈夫だって』って言わなきゃ、あいつは——! それにアキラだって、俺がいたから改心したんだ! あいつらを、今さら見捨てるなんてできるわけないだろ!」
ifのハルトの声は、涙が混じっているようにも聞こえた。
「レンはな……『お前だけは死んでも守る』って言ったんだ。初めて笑った顔を、俺はまだ覚えてる。あいつがもう一度空手をやれて、心から笑えるようになったのは——俺が、いたからだ。その俺が、あいつを裏切るなんて、絶対に、絶対にできない……!」
二人のハルトが、同時にこっちを見た。
「選んでくれ。君が選ばないと、何も始まらない」
「選べ。お前が俺たちを選ばないと、全員が消える」
二つの声が重なる。
ハルトは、きつく目を閉じた。
(選べ?)
(セナか、レンとアキラか?)
(どっちかを選べって言うのか?)
頭の中で、セナの笑顔と、レンの真剣な顔と、アキラの冷たい視線が、ぐるぐる回る。
みんな、好きだ。
みんな、大事だ。
だから。
「——違う!!」
ハルトは、大声で叫んでいた。
二人のハルトが、驚いた顔でこっちを見る。
「違うんだよ! なんでどっちかなんだよ! 俺はセナもレンもアキラも、全員と生きたいんだ! 誰か一人を選んで、他の誰かを『なかったこと』にするなんて——そんなの、絶対に間違ってる!」
涙が出た。
熱いしずくが、ほおを伝って落ちる。
「誰も選ばない。俺は、全員を選ぶ! 全員と生きる道はないのかよ! 誰かが泣く未来なんて、俺は絶対にいらないんだ!」
ハルトの叫びが、真っ白な空間に吸い込まれていく。
その時だった。
ピシッ。
空間に、ひびが入った。
「え——」
白い壁に、黒い亀裂が走る。
パキパキと音を立てて、どんどん広がっていく。
「やばい! ハルト、三人同時に存在することは、世界の排他律に違反するんだ! 境界の捕食者に——」
カピ丸の声が、どこからか聞こえた。
次の瞬間。
「——見つけた」
ズルリ。
亀裂の奥から、何かが出てきた。
黒い。
どろどろした、黒いかたまり。
形が定まらなくて、ぐにゃぐにゃと蠢いている。
表面に、無数の目がぱちぱちと開いて、一斉にこっちを見た。
牙が、にちゃりと光る。
何百もの牙が、口とも呼べない裂け目から生えていた。
「あ、あれは何——」
「世界喰らい……! 境界のバグを喰らう生き物だ! 逃げるぞ! あいつに触れられたら、記憶も存在も全部喰われる!」
異形が、動いた。
ドクン、と一つ脈打って——。
獲物を狙う蛇のように、三人のハルトに向かって、すごい勢いで迫ってくる。
「走れ!!」
ハルトは、とっさに叫んだ。
三人のハルトが、同時に駆け出す。
───
現実のミナトザカ神社。
冷たい夜の空気が、肌を刺した。
鳥居が、不気味に光っている。
ゆらゆらと、青白い光。
まるで水の中をのぞいているみたいに、鳥居の向こうの景色が歪んで見えた。
「ハルトくん……」
セナは、鳥居の前で立ち尽くしていた。
亜麻色の髪が、夜風にふわりと揺れる。
大きな空色の瞳が、不安でいっぱいに見開かれていた。
スマホのGPSで、ハルトの位置がここを示していたのだ。
「やっぱり、ここに来たんだね」
セナが、震える声でつぶやいた時。
ザッ。
後ろで、砂利を踏む音がした。
「……お前も来たのか」
漆黒の髪を夜風になびかせて、黒瀬レンが立っていた。
深い藍色の瞳が、冷たくセナを射抜く。
「お前の優柔不断な優しさが、ハルトを追い詰めたんだ。全部、お前のせいだろ」
「え……?」
セナの顔が、こわばった。
「違う! 違うよ! レンくんこそ、ハルトくんに全部押し付けてるだけじゃない!」
セナが、声を張り上げた。
普段はおとなしいセナが、こんなに感情をむき出しにするのは、初めてだった。
「レンくんは、いつもそうだよ。自分の気持ちをハルトくんにぶつけて、『選べ』って迫って……ハルトくんがどんなに苦しんでるか、全然わかってない!」
「なんだと……!?」
レンが、一歩前に出た。
右膝の手術痕が、かすかに痛んだ。
「——どっちも、勝手な言い分だな」
静かな、でもよく通る声が、境内に響いた。
振り返ると、白石アキラが石段をゆっくりと登ってくるところだった。
その目は、いつも通り冷ややかだ。
「セナ、お前は『自分が身を引けばいい』と思ってる。それは、ハルトに決断を押し付けるのと同じだ。自分が傷つく道を選べば、ハルトが楽になるとでも? より深刻な傷を、ハルトに負わせてるだけだ」
セナが、はっと息をのんだ。
「レン、お前は『ハルトがいなければダメだ』と言う。それは、お前の依存だ。ハルトを救世主扱いして、自分の人生の責任を全部ハルトに背負わせているだけじゃないのか」
「アキラ、てめえ——!」
レンが、アキラの胸ぐらをつかもうとした。
「やめろ。俺は事実を言ったまでだ。どっちも、ハルトを自分のものにしようとしてるだけだ。お前らの嫉妬と独占欲が、世界を壊してるんだよ。醜いな。救えないくらいに」
アキラは、レンの手を軽く払いのけた。
三人の間に、痛いほどの沈黙が落ちる。
互いへの憎しみと、嫉妬と、どうしようもなさが、ぐるぐると渦巻いていた。
セナの目に、涙が浮かぶ。
レンの拳が、怒りで震えている。
アキラは、ただ冷たく、二人を見つめていた。
みんな、ハルトを助けたいと思っている。
その気持ちだけは、同じなのに。
どうしても、足並みが揃わなかった。
───
「くそっ、くそっ!」
境界領域の中。
ハルトたちは、必死で走っていた。
上下も左右もない空間を、転がるように、泳ぐようにして逃げる。
異形は、すぐ後ろまで迫っていた。
「■■■■!!」
声にならない叫び。
黒い触手が、ムチのようにしなり、ifのハルトを狙う。
「うわっ——!!」
避けきれなかった。
触手が、ifのハルトの右腕に巻きつく。
バチンッ!!
静電気のような音と光。
「があああああっ!!」
ifのハルトの、右腕が——消えた。
肘から先が、ぱっくりとない。
なくなった断面からは、血の代わりに、光の粒子がキラキラとこぼれている。
そして——。
ハルトの頭の中から、何かが消えた。
体育館裏。
レンが、初めて弱音を吐いた日のこと。
『俺は……もう、空手ができない……』
『諦めるなよ! 大丈夫だって!』
引きずって、道場に連れて行ったあの日の、レンの重み。
『お前だけは……死んでも守る』
そう言って、笑ったレンの顔。
それらの記憶が、自分のものなのに、どんどん薄れていく。
「あ、ああ……レン、レン……おぼえてる、のに……あれ……?」
ハルトは、頭をかかえた。
レンとの大切な思い出が、指の隙間から砂のようにこぼれ落ちていく感覚。
(やだ、やだやだ! 忘れたくない! 忘れたくないのに——!)
「これが、世界喰らいだ……! 触れられた部分から、存在ごと喰われていく! 諦めるな、ハルト! まだ、記憶は戻せる! 統合すれば——」
カピ丸が、必死に叫んだ。
「統合ってなんなんだよ!」
「並列固定! 三人のハルトを、一つの特異点に再統合するんだ! 一人の人間に、正史とif、両方の全記憶と全感情を固定する。一人で、二つの世界の『存在の重さ』を引き受ける秘術だ! でも——」
「でも?」
「全員の苦しみも、喜びも、全部一人で抱えることになる。失敗すれば、キミの存在は完全に消滅する。やるのか?」
ハルトは、拳をぎゅっと握った。
(消滅?)
(俺が、消えちゃうのかも?)
怖い。
すっごく怖い。
でも。
「——やる。俺は、みんなと生きるって決めたんだ」
ハルトは、はっきりと言った。
正史のハルトも、片腕を失ったifのハルトも、静かにうなずいた。
「そう言うと思ってた。君は、そういう奴だ」
「全員で、生きるんだ。全員でだ」
カピ丸が、空中に不思議な光の紋様を描き始める。
「並列固定座標、解放! 三人のハルト、手を重ねるのだ!」
三人のハルトが、手を伸ばす。
六つの手が、互いに重なった瞬間。
───ドォォンッ……。
世界が、光に包まれた。
温かい光だった。
太陽の光みたいに、肌の奥までじんわりとしみこんでくる。
ハルトの胸の中に、どんどん記憶が流れ込んでくる。
正史のハルトの、セナへの深い愛情。
ifのハルトの、レンとアキラへの熱い情熱。
セナと初めてデートした、海の見えるカフェ。
レンが大会で優勝した時、無我夢中で抱き合ったこと。
アキラが初めて俺に、ふっと笑いかけてくれた放課後の教室。
ぜんぶ、俺のものだ。
ぜんぶ、本当にあったことだ。
「あ、ああ……みんな、俺……」
涙が、止まらなかった。
嬉しくて、苦しくて、愛おしくて、胸が張り裂けそうだった。
光がおさまった時。
そこには、ただ一人のハルトが立っていた。
でも——それと同時に。
ピシッ!!
亀裂が、さらに大きく広がる。
異形が、その光に引き寄せられるようにして、勢いよく亀裂の中へと飛び込んでいった。
「しまった! あいつ、並列固定の光を追って、現実の神社へ抜ける気だ——!」
ハルトの目に、二重写しで現実の風景が見えた。
ミナトザカ神社。
鳥居の前で、言い争っていた、セナ、レン、アキラ。
その背後で、鳥居の歪みが一気に広がり——。
無数の黒い触手が、どろどろと溢れ出した。
「みんな——後ろだ!!」
ハルトは、叫びながら境界領域から現実へ向かって飛び降りた。
景色が、一瞬で切り替わる。
夜の神社。
冷たい空気。
ギャラリーのざわめきも、カメラもない。
あるのは、恐怖に固まる三人と、その背後にそびえる漆黒の異形だけ。
ドォン!!
ハルトは、三人の前に飛び降りた。
まるで、彼らを守る盾になるみたいに、大きく両手を広げて。
「三人とも、絶対に守る!! 明日の満月、俺は——全員と生きる未来を選ぶ!!」
ハルトの、腹の底からの叫び。
セナが、息を呑んだ。
レンが、驚きに目を見開く。
アキラが、ふっと口元をゆるめた。
三人が、初めて互いの顔を見合わせる。
異形の触手が、今にも彼らに襲いかかろうとしていた。
その時。
───ゴゴゴゴゴ……。
地鳴りにも似た、重い音が響き渡る。
鳥居の歪みが、ゆっくりと閉じていく。
異形の本体は、まだ境界領域の奥に潜んでいる。
最後の力を振り絞るようにして、亀裂がパッと光を放ち——。
ぶつん。
異形の触手が根元から千切れて、黒いかたまりとなって、神社の地面にドサリと落ちた。
異形は、境界領域の奥深くで、機会を待っている。
次の獲物を。
満月の夜を。
「……明日の夜、ここで全部を終わらせる」
ハルトは、三人に背を向けたまま、静かに言った。
「だから——それまで一緒にいてくれないか? 俺、一人じゃ心細いって言うか……な? 恥ずかしいから言わせんな!」
いつもの、ちょっと間抜けなハルトの顔に戻って、彼は照れくさそうに振り返った。
その背中は、さっきまでより、ずっと大きくて。
その目は、どんな時よりも、まっすぐだった。
夜空には、雲がかかり始めている。
明日は満月だった。Noveliaとは?
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