夕焼けが逆さに落ちる日 ~全員、性別反転につき~
夕焼けが逆さに落ちる日 ~全員、性別反転につき~
千燈ゆうひは、長い茶髪に黄色いメッシュ、夕焼けのグラデーションの瞳を持つ高校生VTuber。バーチャルタレントグループ「Vuisupo!」のメンバーで、毎日のように仲間と配信をして過ごしている。自分ではのんびり屋で優しいと思っているけれど、みんなからは「うるさいし元気すぎ」と言われる。ある日、配信が終わったあと、休憩室で古い鏡を見つける。そこには「性別反転」と書かれたメモが貼られていた。冗談だと思ったゆうひは、鏡に向かって叫ぶ。「女の子ばっかりで飽きたよ——一度でいいから男の子になってみたい!」すると明かりが消え、鏡の中の自分がニヤリと笑った。翌朝、ゆうひは違う体で目を覚ます。声は低く、胸は平ら、肩幅は広い。スマホは仲間からのメッセージで爆発しそうだった。「ゆうひ、助けて!私、男になっちゃった!」「え、私も?」「待って、まさか全員の性別が反転した……?」Vuisupo!のメンバー全員が、呪いで異性になってしまったのだ。そしてなぜか、元に戻す方法を探す役目を押しつけられたのはゆうひだった。女の子は男の子に、男の子は女の子に。トイレにも行
夕焼けが逆さに落ちる日 ~全員、性別反転につき~ - 鏡の中の笑顔
「ゆうひ、声でかいって!」
金曜の夜。渋谷の配信スタジオ「ミラーボール」の控え室に、ぶいすぽっ!のメンバーが集まっていた。渋谷駅から歩いて十分の場所にある、ぶいすぽっ!専用のスタジオだ。防音室が五つもあって、最新の配信機材がずらりと並んでいる。今日は配信終わりで、みんなでだらだらしていた。
「えー? そうかなあ?」
茶色の長い髪に黄色いメッシュ。上は紫、下はオレンジの夕日みたいなグラデーションの瞳。千燈ゆうひは、ネオ・シブヤ学園の制服のまま、首をかしげた。紺のブレザーに赤いリボン、チェックのスカート。身長は百五十八センチ。華奢だけど健康的な体つきだ。
「そうかなあ、じゃないのよ。マイク割れそうだったわよ」
プラチナブロンドのショートヘアを、片側だけ三つ編みにして銀のヘアピンで留めている。夜空のような紺色の瞳が、星が瞬くようにキラキラと光る。星宮ねおんは、配信部の部長で、ゆうひの親友だ。身長は百六十二センチ。クールな見た目とは裏腹に、面倒見がいい。
「えへへ。楽しかったから、つい」
ゆうひが笑うと、目が三日月型になった。
「つい、じゃないのよ。あんたの『つい』は毎回よ」
ねおんはため息をついた。でも、その口元は少しだけ緩んでいる。
「ゆうひ先輩、今日も元気でいいなあ」
柔らかいミルクティーブラウンのふわふわショート。琥珀色の丸い大きな瞳。神楽坂るりは、グループの癒し系だ。身長は百六十五センチ。おっとりしていて、誰に対しても丁寧な話し方をする。
「るりこそ、今日の配信すごく良かったよ。寝癖、かわいかった」
「うう、あれは恥ずかしかったです……。朝、髪がはねちゃってて」
るりは両手で頭を押さえた。本当に寝癖がつきやすいらしい。
「それも個性だって。視聴者さんも『かわいい』ってコメントしてたし」
「そ、そうですか? えへへ」
るりが照れて笑う。
「お前ら、配信の振り返りは事務所でやれよ」
黒髪をオールバックにしたクールなスタイル。切れ長の翡翠色の瞳。霧島さつきは、ぶいすぽっ!の運営事務局から派遣されているスタッフだ。身長は百七十五センチ。常に冷静で、感情を表に出さない。でも、本当は後輩たちを影で支えている。
「さつきさんも、たまには一緒に雑談しましょうよ」
「俺は仕事がある」
「もう仕事終わったじゃないですか。さっき機材のチェック終わってたし」
「……お前、よく見てるな」
「部長ですから」
ねおんはふん、と鼻を鳴らした。
「そうだ、さつきさん。今度、配信に出てくれませんか? 運営スタッフ特集みたいなので」
「断る」
「即答! なんでですか?」
「顔出しはしない主義だ」
「声だけでもいいんですよ。ねおんとるりと三人で、さつきさんにインタビューする企画とか」
「却下だ」
「けちー」
ゆうひは頬を膨らませた。
「けちじゃない。俺は裏方だ」
「でも、さつきさんが映ったら絶対人気出るのに。かっこいいから」
ゆうひがにこにこしながら言う。
「……お前、そういうこと平気で言うよな」
さつきは少しだけ目を逸らした。
「え? 褒めたんだけど」
「はいはい。ゆうひのそういう天然なとこ、たまに凶器だから気をつけな」
「天然? 私、マイペースなだけだよ」
「そのマイペースが天然って言うのよ」
「むー」
ゆうひはまた頬を膨らませた。
「ゆうひ先輩、かわいい」
「るりは本当にゆうひに甘いな」
「だって、かわいいんですもん」
るりはにこにこしている。
「……まあ、否定はしないが」
「ねおん、今なんて?」
「別に。何でもないわ」
ねおんはぷいっと横を向いた。
「ねおん先輩、耳赤いですよ」
「赤くないわ!」
「あはは、ねおんかわいい」
「うるさい!」
控え室に笑い声が響く。
――これが、ぶいすぽっ!の日常だった。
ネオ・シブヤ学園に通う女子高生たちが、放課後に集まって配信をする。学校には配信部があって、部員は三十人くらいいる。渋谷のこのスタジオは、運営事務局が借りている専用の場所だ。
ぶいすぽっ!は、女の子の日常を楽しく配信することを目的にしたグループだ。ゆうひたちは、ゲームをしたり、おしゃべりをしたり、歌を歌ったり。そんな配信を、ほぼ毎日続けている。
「そういえば、明日は土曜だけど、学校行くの?」
「配信部の集まりがあるわよ。忘れたの?」
「あ、そうだった。何時からだっけ」
「十時よ。遅刻しないでよ」
「大丈夫だよ。私、最近遅刻してないし」
「先週、十五分遅刻したわよね」
「あれは電車が遅れたから」
「電車は遅れてなかったわよ。あんたが寝坊したんでしょ」
「えへへ」
「笑ってごまかすな」
「ゆうひ先輩、明日は私がモーニングコールしますね」
「るり、優しい! ありがとう」
「るり、甘やかすとまた寝坊するぞ」
「そうですか? でも、ゆうひ先輩、朝弱いから」
「そういう問題じゃない」
さつきが小さくため息をつく。
「さつきさんも、私にモーニングコールしてくれていいんだよ?」
「しない」
「即答! さつきさん、冷たい!」
「俺はお前の保護者じゃない」
「保護者でもいいよ。さつきさん、頼りになるし」
「……お前は本当に、そういうことを」
「え? 褒めたんだけど」
「同じやり取りをさっきもしたわよ」
「あはは」
ゆうひが笑う。
――このときは、みんな笑っていた。
こんな日常が、ずっと続くと思っていた。
「あれ? ねえ、あそこに鏡ない?」
ゆうひが、控え室の隅を指さした。
「鏡? 姿見なら、そっちにあるわよ」
「ううん、そうじゃなくて。布がかかってるやつ」
ゆうひは立ち上がって、隅に置かれた大きなものに近づいた。
高さ百八十センチくらいの、木の枠でできた古い姿見だ。白い布がかかっていて、ほこりをかぶっている。
「こんなのあったっけ?」
「さあ。気づかなかったわ」
「私も見たことないです」
「さつきさん、知ってます?」
「いや。俺も知らない」
さつきが眉をひそめた。
「何か書いてある。ジェンダー・リバーサル……?」
ゆうひが布を取ると、鏡面に紙が貼ってあった。
「じぇんだーりばーさるって、何?」
「性別反転、って意味かしら」
「何それ。いたずら?」
「そうでしょ。誰かが貼ったのよ」
「でも、この鏡、すごく古いよ。木枠も傷だらけだし、鏡面も曇ってる」
ゆうひは鏡に手を触れた。ひんやりと冷たい。
「やめときなさいよ。気持ち悪いわ」
「えー、でも気になるし。ちょっと拭いてみるね」
ゆうひは制服の袖で、鏡面を軽く拭いた。
鏡に、自分の顔が映る。
茶色い髪に黄色いメッシュ。夕日みたいな瞳。
「うん。普通の鏡だね」
「だから言ったでしょ。いたずらよ」
「かなあ。でも、この紙、誰が貼ったんだろ」
ゆうひは紙をはがそうとした。
でも、びくともしない。
「あれ? 取れない」
「糊で貼ってあるんじゃない?」
「うーん、そうかも」
ゆうひは紙をはがすのをあきらめた。
「ねえ、これ、おまじないかなあ」
「おまじない?」
「うん。鏡に向かってお願い事をすると、叶うとか」
「都市伝説ね。やめときなさいよ」
「でも、ちょっと面白そうじゃない?」
ゆうひは鏡の前に立った。
「ゆうひ先輩、何するんですか?」
「おまじない。やってみる」
「やめとけって」
「大丈夫だよ。冗談だし」
ゆうひは鏡に向かって、大きく息を吸った。
そして――
「女の子ばかりで飽きた~! 一回男の子になってみた~い!」
ゆうひの大きな声が、控え室に響き渡った。
その瞬間。
パチン、と音がして、部屋の電気がすべて消えた。
「え?」
真っ暗闇。
「ちょっと、何!?」
「停電!?」
「落ち着け。非常灯がつく」
さつきの声だけが、冷静だった。
数秒後、非常灯がぼんやりと灯った。
薄暗いオレンジ色の光が、控え室を照らす。
「な、なに……?」
ゆうひは、鏡の前に立っていた。
鏡の中に、自分の姿が映っている。
茶色い髪に黄色いメッシュ。夕日みたいな瞳。
――その鏡の中の自分が、ゆっくりと笑った。
ニタリ、と。
「ひっ……!」
ゆうひは腰を抜かした。
「ゆうひ!?」
「い、今、鏡の中の私が……笑った!」
「何言ってるのよ!?」
「本当だって! 私の顔が、ニタって!」
ゆうひは震える声で叫んだ。
「落ち着け。鏡を見ろ」
さつきが鏡を指さした。
鏡には、ただ普通に、怖がっているゆうひの顔が映っているだけだった。
「え……?」
「何も変わってない。気のせいだ」
「でも、確かに笑ったんだって!」
「暗かったから、見間違えたんだよ」
「そう……なのかな」
ゆうひは、まだ心臓がバクバクしていた。
そのとき、電気がパッと戻った。
「あ、電気ついた」
「停電、長かったですね」
「十秒くらいかしら」
「ゆうひ、立てるか?」
さつきが手を差し伸べた。
「う、うん。ありがとう」
ゆうひはさつきの手を借りて立ち上がった。
「もう、びっくりしたあ。心臓まだバクバクしてる」
「あんたが変なこと叫ぶからよ」
「だって、おまじないのつもりだったし」
「おまじないで停電するか、普通」
「それはそうだけど」
ゆうひは鏡をもう一度見た。
鏡は、何事もなかったように、静かにそこに立っていた。
「……なんか、ちょっと怖いね」
「そう? ただの古い鏡でしょ」
「うん。そうなんだけど」
ゆうひは、鏡に貼られた紙をもう一度見た。
「ジェンダー・リバーサル」
――性別反転。
「……まさかね」
ゆうひは小さくつぶやいた。
「ゆうひ、帰るわよ。明日も学校あるし」
「あ、うん。待って」
ゆうひは鏡から目を離し、荷物をまとめ始めた。
――このとき、誰も気づいていなかった。
鏡の中のゆうひが、もう一度だけ、笑ったことに。
◆
帰宅したゆうひは、自室のベッドに倒れ込んだ。
「あー、疲れたあ」
スマホを開くと、メンバーからのメッセージが届いていた。
『今日の停電、びっくりした~』
『ゆうひの叫び声、面白すぎ』
『鏡の中の自分が笑ったって、ゆうひ、疲れてたんじゃない?』
みんな、軽いノリだ。
「疲れてたのかなあ」
ゆうひは天井を見つめた。
「でも、あの笑い方、絶対に私の顔だったんだけどな」
ゆうひは、鏡の中の自分の顔を思い出した。
ニタリ、と笑った顔。
「……気のせいだよね。うん。きっと気のせい」
ゆうひは自分に言い聞かせた。
普段から、ゆうひは物事を深く考えすぎない性格だ。
「まあ、明日になれば忘れてるでしょ」
ゆうひはスマホを枕元に置いて、目を閉じた。
「おやすみなさい」
そう言って、ゆうひは眠りについた。
◆
翌朝。
ピピピピ、とスマホのアラームが鳴った。
「んー……うるさいなあ」
ゆうひは目を閉じたまま、手探りでスマホを探した。
アラームを止める。
「……あと五分」
ゆうひは布団をかぶり直した。
――そのとき。
「ん?」
ゆうひは、自分の声に違和感を感じた。
「……今の、私の声?」
もう一度、声を出してみる。
「あー」
低い。
いつもの自分の声より、ずっと低い。
「え? 風邪? でも、喉痛くないし」
ゆうひは起き上がった。
そして、自分の体を見て――固まった。
「……なにこれ」
胸が、ない。
正確には、あるべき膨らみが、なくなっている。
「え? え? え?」
ゆうひは自分の胸を触った。
平らだ。
「なんで!? 私の胸、どこ行ったの!?」
ゆうひは慌ててベッドから飛び降りた。
鏡の前に立つ。
そこに映っていたのは――
「だ、誰……?」
茶色い髪に黄色いメッシュ。夕日みたいな瞳。
でも、顔つきが違う。
輪郭が、少しだけシャープになっている。
肩幅が広い。
首には、うっすらと喉仏のようなものがある。
「え、これ、私……?」
声が低い。
体つきも、明らかに男性のものだ。
「うそでしょ……?」
ゆうひは鏡の前で、へなへなと座り込んだ。
――そのとき、スマホが鳴った。
着信だ。
画面を見ると、ねおんからだった。
ゆうひは震える手で、通話ボタンを押した。
「もしもし……?」
『ゆうひ!? 大変!』
ねおんの声が、スマホから飛び出してきた。
でも、その声が、いつもより低い。
「ねおん……? 声、どうしたの?」
『あんたこそ、声、低くなってない!?』
「な、なってる……かも」
『私もなの! それだけじゃない! 体が……体が、男になってる!』
「ええええ!?」
ゆうひは叫んだ。
『ちょっと、声大きいわよ! 耳キーンってなった!』
「ご、ごめん。でも、ねおんも男になってるの!?」
『そうよ! 胸がない! 肩幅広い! 声低い! 最悪!』
「私も! 私も同じ!」
『はあ!? ゆうひも!?』
「うん! 胸ない! 肩幅広い! 声低い!」
『なによそれ! どうなってるのよ!』
「わかんない! でも、ねおん、他に連絡した?」
『してない! とりあえず、あんたに電話した!』
「そっか。じゃあ、グループ通話しよう。みんなに確認」
『わかった! 私からかける!』
電話が切れた。
数秒後、グループ通話の着信が来た。
ゆうひは深呼吸して、通話に参加した。
『みんな! 聞いて!』
『ねおん先輩、どうしたんですか?』
るりの声も、いつもと違う。
高くなっている。
『るり! あんた、声、高くなってない!?』
『え? そうですか? あ、でも、体がなんか変で……』
『変って、どう変なのよ』
『あの、胸が……あって、あと、下の方が……』
『下の方って!?』
『あ、あの、男の子の時のものが、なくて……』
『はあ!? あんた、女になってるの!?』
『え? あ、はい。多分、そうだと思います……』
『ちょっと待って。るりは元々男の子でしょ? それが女になってるってこと?』
『そうみたいです……。朝起きたら、体が女の子になってて……』
『私は逆よ! 女だったのに、男になってる!』
『私も! 男になってる!』
『ゆうひ先輩も!?』
『うん! 胸ない! 肩幅広い! 声低い!』
『それ、私と一緒……』
『ねおん先輩もですか……』
『ええ。最悪よ』
『ちょっと待って。さつきさんは? さつきさんも連絡来てない?』
『俺も参加している』
低い声。
いや、いつもより高い声。
『さつきさん!? その声……』
『ああ。俺も性別が反転したようだ』
『さつきさんも!? 女になってるんですか!?』
『そうだ。朝起きたら、胸が膨らんでいて、股間のものがなくなっていた』
『さつきさん、落ち着いてますね……』
『慌てても仕方ないだろう』
『でも、どうしてこんなことに……』
『ゆうひ。お前、昨日、鏡に向かって何て言った?』
『え? 何て……』
『「女の子ばかりで飽きた~! 一回男の子になってみた~い!」って叫んだよな』
『う……うん。言った』
『それだ』
『それって、どういう……』
『あの鏡は「リフレクト・ミラー」だ。強い感情や願いが込められた場所に自然発生する特殊な鏡で、性別を反転させる力がある』
『リフレクト・ミラー……?』
『ああ。過去にも数件、同じような事例が報告されている。呪いの鏡だ』
『じゃあ、私のせいで……みんなが……』
ゆうひの声が、震えた。
『ゆうひ、落ち着け。お前のせいじゃない』
『でも、私が叫んだから……』
『あの鏡は、誰かが願えば発動する。お前が叫ばなくても、誰かがいつか叫んでいた』
『それでも……私がきっかけを作ったのは事実だし……』
『ゆうひ』
ねおんの声が、優しくなった。
『あんたが責任を感じる必要はないわ。あの場にいた全員が、あの鏡を軽く見てた。私も、いたずらだって笑ってた。だから、あんただけのせいじゃない』
『ねおん……』
『それに、さつきさんが言うには、元に戻る方法があるんでしょ?』
『ああ。呪いを解くには、呪いをかけた本人が「本当の気持ち」を誰かに伝える必要がある』
『本当の気持ち?』
『そうだ。ただし、具体的な条件は不明だ。誰に、何を、どう伝えるのか。それはまだ解明されていない』
『じゃあ、どうすれば……』
『調べるしかない。過去の事例を洗い、鏡の情報を集める。時間はかかるが、必ず手がかりはあるはずだ』
『さつきさん……』
『俺も、過去にリフレクト・ミラー事件に遭遇したことがある。だから、ある程度の知識はある。任せろ』
『さつきさん、ありがとう……』
『礼はいい。それより、今後のことを話し合うぞ』
『今後のこと?』
『学校だ。月曜から、どうやって登校する』
『あ……』
『制服、どうするの……』
るりの声が、不安そうに揺れた。
『私は男子制服を着るしかないわね。スカートは無理でしょ』
『俺は……女子制服か。正直、気が進まないが』
『さつきさん、女子制服似合いそう』
『お前、今それ言うか?』
『あはは。ごめん』
『でも、ほんと、どうするんですか? トイレとか……』
『……それは、考えたくなかった』
『俺もだ』
『みんなで、どうにかするしかないよね』
『そうね。とりあえず、今日は情報共有。明日、詳しく話し合いましょう』
『わかった』
『私も、何か調べてみます』
『ありがとう、るり』
『いえ。私も、みんなと一緒にいたいので』
『るり……』
『ゆうひ』
『ん?』
『あんた、一人で抱え込まないでよ。私たち、仲間でしょ』
『ねおん……』
『それに、あんたが元に戻る方法を探すって言うなら、私も手伝うわ。別にあんたのためじゃないけど。私も元に戻りたいだけだから』
『……うん。ありがとう』
ゆうひは、涙が出そうになるのをこらえた。
『私、絶対、元に戻る方法を見つけるから!』
『当たり前でしょ。見つけなかったら、承知しないわよ』
『はい、部長!』
『……ふん。それでいいわ』
ねおんの声が、少しだけ笑っていた。
『じゃあ、また明日。学校でね』
『ええ。遅刻しないでよ』
『大丈夫! るりがモーニングコールしてくれるから!』
『はい、任せてください』
『るり、頼んだわよ』
『了解です』
『俺も、何かわかったら連絡する』
『お願いします、さつきさん』
『ああ』
通話が終わった。
ゆうひは、スマホを胸に抱きしめた。
――胸は、平らだった。
「……本当に、男になっちゃったんだ」
鏡をもう一度見る。
そこには、茶色い髪に黄色いメッシュの、男の子が立っていた。
「……まあ、ちょっとかっこいいかも」
ゆうひは、鏡の中の自分に向かって、小さく笑った。
「でも、やっぱり元に戻りたいな」
ゆうひは、窓の外を見た。
朝日が、渋谷の街を照らしている。
「絶対、見つけるから」
ゆうひは、拳を握りしめた。
――千燈ゆうひの、元に戻るための大作戦が、今、始まろうとしていた。Noveliaとは?
Noveliaは、AIでライトノベルや二次創作を「読んで・数タップで作って・キャラクターと会話できる」プラットフォームです。挿絵つきの新作が毎日届き、無料で始められます。