朽ちる手で、君を抱く
『朽ちる手で、君を抱く』
「呪いの森」で一人暮らす青年エリオは、触れたものを朽ちさせる力を持っていた。
人を傷つけることを恐れ、村からも追われた彼は、森の奥でただ陽だまりにまどろむだけの日々を送る。
友はいない。でも、静かだ。もう誰も傷つけずに済む。
そんな嵐の夜、森に迷い込んだ幼い少女リリィ。十歳の彼女は、王国から追われる精霊使いだった。
初めてエリオの力を見たリリィは「こわい!」と叫ぶ。
けれど、決して自分に触れまいとする彼の慎重さや、そっと差し出される食事や毛布の優しさに、少女は次第に心を開き、悲しげな顔のエリオに言う。「おにいちゃんは、やさしいよ!」
ある日、リリィの鞄から転がり落ちた、干からびた古い種。それは亡き母の形見だった。「もう、だめなんだ」と泣くリリィ。
おそるおそる、エリオがその枯れた種に指で触れる。すると、種は朽ちるどころか、奇跡のように緑を取り戻し、芽吹いたのだ!
「わあっ!」と歓声をあげるリリィ。目を見開くエリオ。彼は悟る。自分の力は、物を「壊す」だけじゃない――「健康だった過去の状態に戻す」こともできるのだと。
二人は森のあちこちで「治癒」を始める。