血界戦線 残響のヘルサレムズ・ロット
義眼が疼くたび、遠くの妹の視界がひとつずつ消えていく——。
三ヶ月前の決戦で、レオナルド・ウォッチの左目は限界を超えた。神々の義眼が暴走し、離れて暮らす妹ミシェーラの両眼を焼いたのだ。兄のために目を差し出した妹は、兄の義眼によって、二度目の光を奪われた。「お兄ちゃん、大丈夫だよ」——電話越しの明るい声が、余計に胸を裂く。
そんな折、廃教会で血界の眷属の残党が儀式を行っているとの通報が入る。出動を命じられたザップ、チェイン、ツェッドを見送ったレオだったが、義眼が北西の空へ向かって激しく脈動し始める。待機命令を破り、霧の街を駆け出すレオ。追ってきたザップとともに辿り着いた祭壇で、彼が見たものは——全身に異界の術式を刻まれ、虚ろな赤い瞳で「助けて」と呟く、幼い少女リリィの姿だった。
儀式の手順は、ライブラ内部しか知り得ない機密。浮かび上がる裏切りの影。仲間を信じたい。でも、信じることが怖い。霧に沈むヘルサレムズ・ロットで、少年の決意と組織の亀裂が、静かに交差する。
これは、視力を奪われた者たちの物語。失った光の数だけ、守りたいものがある。