聖杯大戦、はじまりの日常
聖杯大戦の裏側で、今日も平和に料理が始まる――。
記憶を失い、番号だけを与えられたホムンクルスのジーク。地下の暗闇で目覚めた彼の前に現れたのは、黒のライダー・アストルフォだった。「今日からお前は俺の親友だ!」——根拠ゼロ、勢いだけのその宣言が、使い捨ての存在として造られた少年の運命を、静かに、そして騒がしく変えていく。
戦の前の奇妙な通達に従い、サーヴァントたちが厨房に集結。錬金術で超巨大鍋を生み出すアヴィケブロン、山で猪を仕留めてきたケイローン、無言で猪を解体するフランケンシュタイン。そして初めて包丁を握り、盛大に指を切るジーク。
「血が出るってことは、生きてるってことだよ!」
ドタバタに満ちた料理騒動の合間に、少年は初めて「名前」で呼ばれ、初めて「おいしい」を知り、初めて自分の名前を口にする。
これは、壮絶な聖杯大戦の幕が上がる直前——ほんの少しだけ、優しくて、少しだけ騒がしい、日常の始まりの物語。
聖杯大戦、はじまりの日常 - 竜告令呪、発動――3分間の英雄
炎が、空を焦がしていた。
トゥリファス城の中庭は、もはや地獄絵図だ。赤い火の粉が舞い、黒煙が立ちのぼる。焼け落ちた梁が、瓦礫の山と化してあちこちに突き刺さっていた。
ジークは、その瓦礫の下から這い出した。
「ぐ……うぅ……」
折れた肋骨が、呼吸のたびに内側を刺す。左腕は感覚がなかった。それでも、指を泥と灰に食い込ませ、体を前に押し出す。
(アストルフォは……セイバーさんは……)
顔を上げる。
視界に飛び込んできたのは、壁に叩きつけられて動かない、ピンク色の髪。
「アストルフォ!」
叫んだ。喉が焼けるように痛い。
アストルフォは、城壁の下で小さく丸まっていた。いつもの羽飾りは煤で汚れ、明るい笑顔はどこにもない。血の気の引いた顔。胸元には、ダーニックの爪が裂いた傷が赤く広がっていた。
「アストルフォ……アストルフォ!」
ジークは瓦礫を蹴散らし、這うようにして駆け寄る。
「……ジーク」
かすれた声。アストルフォの琥珀色の瞳が、うっすらと開く。
「よかった……生きてたんだね……」
「喋らないで。今、助けるから」
「ごめんね……僕、また、ジークを守れなかった……」
「何を言ってるんだ!アストルフォは、いつも僕を守ってくれたじゃないか!」
アストルフォの手を握る。小さな手は、氷のように冷たかった。
「だから、今度は僕が守る。絶対に、守ってみせる」
アストルフォは、泣きそうな顔で、それでも笑った。
「うん……ジークなら、できるよ……」
ジークは、アストルフォの体を瓦礫の少ない場所へと引きずった。
(くそ……体が、思うように動かない)
一歩ごとに、骨が軋む。
それでも、止まらなかった。
次に目に入ったのは、銀色の髪。
「セイバーさん!」
ジークフリートが、倒れていた。
胸を貫かれた傷から、血が流れ出ている。銀色の髪は灰にまみれ、青白い顔は、もう動かない。
「セイバーさん……セイバーさん!」
肩を揺する。反応がない。
(嘘だ……嘘だ……!)
「お願いです、目を開けてください!セイバーさん!」
ジークフリートの指が、ぴくり、と動いた。
「……ジーク」
「セイバーさん!」
「君は……まだ、死ぬな」
血を吐きながら、ジークフリートは微笑んだ。
「君には……生きる理由が、ある」
「でも、あなたが……あなたが、僕を庇って……!」
「いいんだ。これは、私の意思だ」
ジークフリートの手が、ジークの左手に触れた。
「君の、その令呪を……信じろ」
「令呪……」
ジークは、自分の左手を見た。
赤い紋様が、炎の光を受けて、どくどくと脈打っている。
「君は、君の信じる道を……行け」
ジークフリートの手が、力なく落ちた。
「セイバーさん!セイバーさん!!」
返事はない。
だが、胸はまだ、かすかに上下していた。
(生きてる……まだ、生きてる)
ジークは、唇を噛みしめた。
血の味がした。
「待っていてください。必ず、あなたの力に恥じない戦いをします」
ジークは立ち上がった。
——その時。
「きゃあああっ!」
悲鳴。
中庭の東側。炎に追われ、倒れた車椅子の横で、フィオレが床に投げ出されていた。
「姉さん!」
茶色の短髪を振り乱し、カウレスが駆け寄る。薄茶色の瞳に、炎の赤が映っていた。
「カウレス……私、足が……!」
「掴まってください。俺が背負います」
「でも、あなたも逃げないと……!」
「姉さんを置いて逃げるくらいなら、俺はここで焼け死にますよ!」
カウレスは、フィオレの体を抱き上げ、背負った。
「絶対に離さないでください。俺が、絶対に守りますから」
「……カウレス」
フィオレの目に、涙が浮かんだ。
「ありがとう……ありがとう、カウレス」
カウレスは答えず、炎の中を走り出した。
ジークは、その光景を、燃え盛る中庭で見ていた。
(カウレスさんは、フィオレさんを守ってる)
(アストルフォも、セイバーさんも、みんな、誰かを守ろうとした)
(僕も——)
胸の奥で、何かが熱く脈打った。
——ドォン!!
爆発音。
中庭の中央で、炎が渦を巻いた。
その中心から、黒い影が姿を現す。
「グフフ……」
吸血鬼と化したダーニック・プレストーン・ユグドミレニア。
黒く伸びた爪。血走った赤い瞳。口元からは涎が滴り、その体は炎をものともせず、ゆっくりと歩みを進める。
「血……もっと、若い血を……」
「ひっ……!」
カウレスの背で、フィオレが身をすくめた。
「姉さん、俺の背中から離れないでください」
カウレスは、震える足で、それでもフィオレを背負ったまま後退した。
「おや……そこにいたのは、我が愚かな後継者候補か」
ダーニックの赤い瞳が、フィオレを捉えた。
「フィオレ。お前の血は、格別に美味そうだ。特別に、我が血肉として取り込んでやろう」
「やめて……やめてください、お祖父様……!」
「祖父だと?笑わせる。我は、もはやユグドミレニアなどではない。我は、血に飢えたる王。この世の全てを喰らい尽くす、真の支配者よ」
ダーニックが、爪を振り上げた。
「姉さんから離れろぉぉぉ!!」
カウレスが叫び、フィオレを庇うように立ちはだかる。
「凡庸な弟が、姉を守るか。笑わせるな。お前ごとき、爪を立てるまでもないわ!」
ダーニックの爪が、空を裂く。
——ガキィン!!
火花。
「……なに?」
ダーニックの爪を、聖旗が受け止めていた。
「そこまでです、ダーニック」
金色の長い三つ編みを炎の熱風に揺らし、ジャンヌが立っていた。
白い装束は煤と血で汚れ、青い瞳は疲労でくすんでいる。それでも、聖女は聖旗を構え、吸血鬼の前に立ちはだかる。
「聖杯大戦のルールに則り、あなたの暴走を止めます」
「ルーラー……また、お前か」
「あなたがこれ以上、無辜の民を傷つけるのを、黙って見ているわけにはいきません」
「無辜の民?ホムンクルスや、魔術師の分際でか?笑わせる。そんなもの、我の餌に過ぎんわ!」
ダーニックの爪が、再びジャンヌを襲う。
ジャンヌは聖旗で防ぐ。
——ガキンッ!ガキンッ!ガキンッ!
連続で繰り出される爪。ジャンヌは防戦一方だ。
「くっ……!」
「どうした、聖女。その程度か。審判役が、この程度の力とはな」
「……まだ、終わりません」
ジャンヌは、聖旗を地面に突き立てた。
「我が神はここにありて——!」
聖旗が、金色の光を放つ。
光が、中庭を包み込み、薄い結界を形成した。
「結界か。だが、その程度のもの、すぐに砕いてくれるわ!」
ダーニックが、結界を爪で引き裂く。
——バキッ。
結界に、ひびが入った。
「くっ……!」
ジャンヌの顔が苦痛に歪む。
結界を維持するたびに、魔力が削られていく。霊体化できない体では、限界が近い。
——バキバキバキッ!
ひびが、広がる。
「終わりだ、聖女」
ダーニックの爪が、結界を粉砕した。
「きゃあっ!」
ジャンヌの体が、弾き飛ばされる。
「ジャンヌさん!」
ジークは、瓦礫を蹴って走り出した。
(間に合え……間に合ってくれ……!)
「邪魔だ、人形」
ダーニックの爪が、ジークを薙ぎ払う。
「ぐあっ!」
ジークの体が、地面に叩きつけられた。
(痛い……でも、これくらい……!)
ジークは、すぐに立ち上がろうとした。
「しぶとい。本当に、しぶとい人形だ」
ダーニックが、ジークの目の前に立つ。
「なぜ、そこまで足掻く。お前は消耗品だ。戦うためだけに造られた、使い捨ての道具。道具が、道具の分際で、なぜそこまで抗う」
ジークは、血を吐きながら、ダーニックを見上げた。
「……僕は、道具じゃない」
「違うのか?」
「僕は、ジークだ。アストルフォが、僕にくれた名前だ。僕は、僕の意志で、ここに立っている」
「意志?ホムンクルスに意志などあるものか!お前は、ただの魔力供給源だ!役目を終えた道具は、壊れるしかないんだよ!」
「違う。僕は、壊れない。僕が守りたいものを、あなたに奪わせはしない」
ジークの声は、震えていなかった。
「なら、死んでから後悔しろ」
ダーニックの爪が、ジークの喉元に迫る。
——その瞬間。
ジークの左手が、光った。
「……なに?」
赤い光。
灼熱の紋様。
竜告令呪が、炎の光を受けて、一際強く輝き始めた。
「令呪……?いや、これは……」
ダーニックが、一歩後ずさった。
「何をした!ホムンクルスごときが!」
ジークは、左手を握りしめた。
力が、みなぎる。
(これが、僕の——)
(僕が、まだ諦めていない証拠だ)
——その時。
「ジーク」
倒れたままのジャンヌが、ジークを見ていた。
青い瞳が、まっすぐに、ジークを捉えている。
「あなたは、まだ立ち上がれる。なぜなら、あなたは自分で決めたのでしょう?」
ジークの胸に、あの言葉が蘇る。
——あなたは、自分で決めたのでしょう?
そうだ。
僕は、決めたんだ。
守る、と。
「……はい。僕は、決めました」
ジークは、左手を突き出した。
「僕が守る。みんなで、生きる。そのために、僕は——」
竜告令呪が、爆発的な光を放つ。
「な、なんだ!?その力は……!?」
光が、ジークの体を包み込む。
銀色の粒子が、渦を巻き、ジークの全身を覆っていく。
骨が軋む。筋肉が引き裂かれるような痛み。
だが、それ以上に、力が溢れてくる。
銀色の髪。
鋼の剣。
英雄の鼓動。
——ドクン。
ジークフリートの心臓が、ジークの胸で脈打った。
「——戦う」
光が、弾けた。
そこに立っていたのは、もはや、か弱いホムンクルスではなかった。
銀色の髪を炎の熱風に揺らしながら、その英雄は、剣を構えていた。
「お、お前は……!ジークフリート……!?」
「違う。僕は、ジークだ。僕の名前は、ジーク。僕が守る。みんなで、生きる。あなたを倒して、必ず」
ジークの声は、静かだった。
けれど、その瞳は、燃えていた。
朝日のような、まっすぐな光を宿して。
「笑わせる!借り物の力で、どこまで持つか見ものだな!」
ダーニックが、爪を振り上げた。
「行きます」
ジークは、地面を蹴った。
——速い。
自分でも驚くほどの速さで、ジークはダーニックの懐に飛び込んだ。
剣を振るう。
「ぐおっ!?」
ダーニックの肩口を、剣が切り裂く。
黒い血が、飛び散った。
「小賢しい!」
ダーニックの爪が、ジークを襲う。
——ガキンッ!
剣で防ぐ。
衝撃が、腕を貫く。
(重い……!でも、まだ!)
ジークは、剣を押し返し、反撃に転じた。
一閃、二閃、三閃——。
ジークフリートの剣技が、ジークの体に染み込んでいる。
体が、勝手に動く。
英雄の経験が、ジークを戦士へと変えていく。
「ぐおおおっ!!」
ダーニックの爪が、ジークの脇腹を掠めた。
「ぐっ……!」
血が滲む。
だが、倒れない。
「まだ、終わりません」
ジークは、剣を構え直した。
「ジーク!無茶だけはやめてくれよ!」
カウレスの声が、遠くから聞こえた。
フィオレを背負ったまま、カウレスが必死に叫んでいる。
「大丈夫です、カウレスさん!僕は、やれます!」
ジークは、カウレスに一瞬だけ微笑んだ。
「よそ見をしている場合かぁ!」
ダーニックの爪が、ジークの胸を狙う。
——ザシュッ。
「ぐああっ!」
ジークの体が、吹き飛ばされた。
瓦礫に背中を打ちつけ、口から血が溢れる。
(く……まだ、立てる……)
ジークは、剣を支えに立ち上がった。
「しぶとい。本当に、しぶとい。だが、その借り物の力も、もう限界だろう」
ダーニックの言う通りだった。
左手の竜告令呪が、点滅し始めている。
3分間。
その制限が、刻一刻と迫っていた。
(あと、どれくらい……?)
ジークの額に、冷や汗が滲む。
「終わりだ、人形。お前の英雄ごっこも、ここまでよ」
ダーニックが、両手の爪を振り上げた。
黒い魔力が、爪に集中していく。
(……何か、何か手は——)
ジークの脳裏に、映像が流れ込む。
——銀色の剣を掲げる、英雄の姿。
——天を裂く、光の奔流。
——幻想大剣・天魔失墜。
(これが……セイバーさんの……!)
ジークは、剣を両手で握りしめた。
「僕は、あなたに勝つ。僕の守りたいものを、守るために——」
竜告令呪が、最後の光を放つ。
「この一撃に、全てを懸けます」
剣を、掲げた。
銀色の刃に、金色の光が集まっていく。
「な、なんだ、その光は……!?」
「——幻想大剣・天魔失墜(バルムンク)!!」
剣を、振り下ろした。
光の奔流が、放たれる。
天を裂き、地を砕き、炎を切り裂いて——。
金色の光が、ダーニックの心臓を、正確に貫いた。
「ぐ……がああああああっ!!」
ダーニックの体が、光に包まれる。
黒い血が蒸発し、吸血鬼の体が、端から崩れていく。
「お、おのれ……おのれぇ……!」
ダーニックは、消えゆく体で、それでもジークを睨みつけた。
「我は……我は、聖杯を……!」
「あなたの野望は、ここで終わりです」
ジークは、剣を構えたまま、静かに言った。
「あなたが傷つけた人たちの分まで、僕は生きる。だから、安らかに——」
ダーニックの体が、光の粒子となって、崩れ去っていく。
その最期の瞬間。
ダーニックの赤い瞳が、一瞬だけ、元の色を取り戻した。
「……すまなかった、フィオレ」
かすれた声。
「後を……頼む」
ダーニックの体は、灰となって、風に消えた。
「……お祖父様」
カウレスの背で、フィオレが涙を流した。
「……お祖父様」
カウレスは、何も言わず、ただフィオレの手を握った。
——ドクン。
ジークの胸で、ジークフリートの心臓が、最後の鼓動を打った。
「……あ」
力が、抜けていく。
銀色の髪が、元の銀色に戻る。
鋼の剣が、光の粒子となって消える。
3分間が、終わった。
「ジーク!」
ジャンヌが、倒れ込むジークの体を、抱きとめた。
「……ジャンヌ、さん」
「ジーク、ジーク……!」
ジャンヌの涙が、ジークの頬に落ちた。
「よく、頑張ったわね……本当に、よく……」
ジークは、微笑もうとした。
うまく笑えなかった。
でも、心は、温かかった。
「……僕、守れましたか」
「ええ、ええ……あなたは、みんなを守ったのよ」
「……よかった」
ジークの目から、涙が溢れた。
(僕は……初めて、誰かを守れた)
(守りたいものを、守れた)
(これが……生きるってことなんだ)
「ジーク!ジーク!」
アストルフォが、這いずって近づいてくる。
「ジーク、すごいよ!ジーク、かっこよかったよ!」
「……アストルフォ、ありがとう」
「何言ってるの!僕の方こそ、ありがとう!ジークが、みんなを守ってくれたんだよ!」
アストルフォは、ジークの手を握り、泣き笑いした。
「……ジーク、お前、本当に無茶しやがって」
フィオレを背負ったまま、カウレスが近づいてきた。
「でも……ありがとう。姉さんを、助けてくれて」
「……いいえ。僕は、僕のしたいことをしただけです」
「……そうか」
カウレスは、少しだけ笑った。
——夜明け前。
炎上した城の中で、ジークはジャンヌに支えられながら、空を見上げた。
東の空が、うっすらと白み始めている。
長い夜が、終わろうとしていた。
「ジーク、あなたは、聖杯大戦のルールに則れば、本来ならば、私が守るべき対象ではありません」
ジャンヌが、静かに言った。
「でも、私は、あなたを守りたいと思った。審判としてではなく、一人の人間として」
「……ジャンヌさん」
「あなたは、私に、大切なことを教えてくれた。戦うことだけが、全てじゃない。守りたいものを守るために、戦うこともある。そして、守るべきものは、きっと、あなたのすぐそばにあるのね」
ジャンヌは、ジークの額に、そっと手を置いた。
「ありがとう、ジーク。あなたは、私の誇りです」
ジークは、涙を流しながら、笑った。
今度は、うまく笑えた。
「……こちらこそ、ありがとうございます。ジャンヌさん」
——その時。
遠く、赤の陣営の野営地。
シロウ・コトミネは、トゥリファス城の炎を、静かに眺めていた。
「……終わったようですね」
彼の背後で、赤のキャスター、シェイクスピアが、目を輝かせた。
「ああ、なんと素晴らしい!炎に包まれる城!悲鳴!血!そして、聖女の涙!これこそ悲劇!これこそドラマ!」
「あなたは相変わらずですね」
「当然!私は物語のためなら、この世界が燃えようと歓喜しますとも!」
シロウは、微笑んだ。
「ルーラーが、あの混乱に巻き込まれている。これは、好機です」
「ほう?あの聖女が、ですか?」
「審判役が、どちらの陣営にも肩入れし、混乱を拡大させた。そう報告すれば、ルーラーの資格を問えます」
「ああ、なんて冷徹!なんて狡猾!あなたという男は、本当に、最高の悪役だ!」
「私は、悪役ではありませんよ。私は、人類を救うために、必要なことをしているだけです」
シロウの目は、炎を映しながら、氷のように冷たかった。
「赤の陣営のサーヴァントたちに、ルーラーの監視を強めるよう命じてください。それと、黒の陣営の動向も、引き続き注視を」
「おやおや、私に命令ですか?まあ、いいでしょう。あなたの書く脚本、この私が舞台にしてみせますとも!」
シェイクスピアは、大げさに一礼した。
シロウは、再び、遠くの炎を見つめた。
「ルーラー……あなたが、聖杯大戦の障害になるのなら、排除するまでです」
夜風が、彼の黒い髪を揺らした。
——トゥリファス城。
炎は、まだ消えていなかった。
だが、その炎の中で、確かに、一つの光が生まれていた。
ジークは、ジャンヌに支えられながら、東の空を見つめていた。
朝日が、もうすぐ昇る。
長い夜が、終わる。
だが、新たな戦いの火種は、すでに、静かに燃え始めていた。Noveliaとは?
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