この素晴らしい世界に祝福を!―めぐみんと過ごすifの日々―
この素晴らしい世界に祝福を!―めぐみんと過ごすifの日々―
アクセルに住む高校生、佐藤和真は、ダスティネスの屋敷で爆裂魔法を愛する少女・めぐみんと出会う。彼女は「紅魔族の天才魔導士」と名乗り、「私の爆裂魔法は一日一回しか使えないけど、その一撃は最強よ!」と誇らしげに宣言する。
和真はアクア、ダクネス、そしてめぐみんと同居することになり、彼女たちの混沌とした日常に巻き込まれていく。めぐみんは和真にまとわりつき、毎日のように爆裂魔法を見せびらかそうとする。「見て見て!すごいでしょ!」「特別に私の魔法を見せてあげる!」
ある日、魔王軍の将軍であるデュラハン・ベルディアがアクセルを襲撃する。和真たちは共に戦うが、ベルディアの強さに圧倒される。そこでめぐみんはとんでもない提案をする。「爆裂魔法を放つわ。でも条件があるの。和真、私のことが好きだと言ったら、やってあげる」
和真は戸惑いながらも、めぐみんの爆裂魔法を目撃する。彼らはベルディアを撃退することに成功する。しかし、魔法は予想以上に強力で、町の一部を吹き飛ばしてしまう。和真は彼女を叱るが、めぐみんは涙ながらに呟く。「私はただ……認めて
この素晴らしい世界に祝福を!―めぐみんと過ごすifの日々― - 外れスキル、泥まみれのスタート
「……また、この夢か」
目を覚ますと、見慣れた天井があった。白くて、少し古くて、でもどこか温かみのある天井。ここが自分の部屋だってわかるまでに、数秒かかった。
佐藤和真、十七歳。元高校生で、現役の異世界居住者だ。日本にいた頃は、学校にも行かずに部屋に引きこもってゲームばかりしていた。そんなある日、外に出た拍子にトラックに轢かれて——いや、正確にはトラックに轢かれそうになった女の子を助けようとして、自分が轢かれた。気がついたら、女神アクアに「異世界に行かない?」と勧誘されていた。
その女神アクアを巻き込んで、今はこのアクセルという街にいる。巻き込んだ、というより、正確には「連れてきてしまった」。それが原因で、今は借金生活だ。
窓の外に広がるのは、石畳の街並み。遠くには、冒険者ギルドの塔が見える。朝の光が街を照らして、石畳がキラキラと光っていた。
「はあ……」
ため息が出た。異世界に来て、もう三週間。慣れたかと言われれば、正直まだ慣れない。日本にいた頃の記憶が、ふとした瞬間に蘇る。コンビニの明かりとか、ゲームの続きとか、あと、布団の柔らかさとか。
和真はベッドから起き上がり、伸びをした。体がギシギシと鳴る。昨日の疲れがまだ残っていた。
窓の下を、荷馬車が一台通っていく。御者の男が、大きな声で何かを叫んでいる。市場へ向かうのだろう。この街は、いつも活気に溢れていた。
和真はテーブルの上に置いてあるパンを手に取り、かじりついた。少し硬い。でも、これが今の自分の朝食だ。
「……エリス、か」
この世界の通貨単位。一エリスが、日本円でだいたい十円くらい。このパンが五十エリスだから、五百円くらいか。日本にいた頃なら、コンビニで菓子パンが二個買える値段だ。
異世界に来てから、金のことを考えない日はない。借金返済の目処も立っていない。このままじゃ、いつまで経ってもアクアに「借金返してよ!」と催促される日々が続く。
「……まあ、仕方ないか」
和真は残りのパンを口に押し込み、立ち上がった。白いシャツに黒のスラックス。それから、緑のマントを羽織る。これがこの世界での自分のスタイルだ。
鏡を見ると、そこには痩せた男が立っていた。黒髪は少し伸びていて、寝癖がついている。深い茶色の目は、なんだかジトッとしている。引きこもりだったせいか、体はひょろっとして、肉がついていない。いつもげんなりした表情をしているのは、たぶん、この世界に来てからずっとだからだ。
左手を見る。手のひらに、うっすらと見える魔法陣のような痣。これが、この世界で自分が授かったスキルの証だった。
「ステータス閲覧……か」
十五歳になると、この世界の住人は「天啓の儀」という儀式を受ける。そこで、神様からスキルを授かるのだ。約六割の人間が何らかのスキルを持っているらしい。攻撃系、生産系、補助系……その内容は千差万別。
で、自分が授かったのは「ステータス閲覧」。対象の能力値を可視化する、というだけの補助スキル。戦闘にはまるで役に立たない。
「はあ……」
またため息が出た。
ギルドの連中からは「外れスキル」と陰口を叩かれている。まあ、自分でもそう思う。せめて攻撃魔法とか、剣術の才能とか、そういうのが欲しかった。
でも、授かってしまったものは仕方ない。和真は気持ちを切り替えて、部屋を出た。
ここはハーティアの館。アクセルの中心部にある豪邸で、今は和真の居候先だ。広大な庭園に、図書室、浴室まで完備されている。使用人が八人もいるらしい。
なんでこんな豪邸に居候できているのかと言えば、アクアが「私、女神だから、この屋敷に住む権利があるのよ!」と、わけのわからないことを言って、なぜか本当に住めることになったからだ。女神って何なんだろう。
廊下を歩いていると、庭の向こうから鳥の声が聞こえた。朝の空気が、ひんやりと気持ちいい。
和真は玄関を出て、石畳の道を歩き出した。
アクセルは、大陸中央部に位置する自由都市だ。人口は十二万人。冒険者ギルドの本部があり、交易の十字路として栄えている。この街には、人間だけじゃなくて、エルフやドワーフ、亜人種なんかも住んでいる。
通りには、朝市の準備をする商人たちがいた。果物を並べる女、魚を運ぶ男、パンを焼く匂いが漂ってくる。
「おっ、佐藤じゃねえか。今日もギルドか?」
肉屋の親父が声をかけてきた。この三週間で、何人かの顔見知りができた。
「まあ、そうっすね。日銭を稼がないと」
「はっ、ご苦労なこった。今日も頑張れよ」
和真は軽く手を振って、ギルドへ向かった。
冒険者ギルドの建物は、三階建ての大きな建物だ。一階が受付と依頼掲示板、二階が酒場、三階が役員室になっている。
ギルドの扉を開けると、中はすでに多くの冒険者で賑わっていた。朝早いのに、みんな熱心だ。
「おはようございます、佐藤さん」
受付のカウンターから、ルナが声をかけてきた。ルナは、このギルドの受付嬢だ。銀色の髪を後ろで一つにまとめていて、いつも落ち着いた雰囲気を漂わせている。歳は二十代半ばくらいだろうか。ギルドの受付嬢の中でも、彼女は特に人気が高い。その理由は、たぶん、あの優しげな笑顔だ。
「おはようございます」
和真は軽く会釈して、依頼掲示板の前へ歩いていった。
掲示板には、今日もたくさんの依頼が貼られている。魔物討伐、素材採取、護衛、雑用……。毎日平均二百件の依頼が掲示されるらしい。
和真はその中から、一枚の紙に目を留めた。
「大カエル討伐……報酬五百エリスか」
大カエルは、アクセル近郊の湿地に生息している。体長は一メートルから一・五メートルくらい。危険度は低いが、群れで行動するのが厄介だ。でも、一匹五百エリスなら、五匹倒せば二千五百エリス。借金返済の足しにはなる。
「これ、受けよう」
和真は依頼票を手に取って、ルナのカウンターへ戻った。
「ルナさん、これお願いします」
「大カエル討伐ですね。……佐藤さん、大カエルは群れで行動するので、十分注意してくださいね」
ルナが心配そうな顔で言った。その表情が、妙に可愛く見える。いや、今はそんなことを考えている場合じゃない。
「大丈夫っすよ。敏捷性には自信あるんで」
和真は軽く笑って答えた。正直、大カエルごときに遅れを取る気はしない。
ギルドの二階、酒場の方から、冒険者たちの話し声が聞こえてくる。
「おい、あいつ、ステータス閲覧だってよ」
「は?なんだそれ、聞いたことねえな」
「外れもいいところだな。戦闘に使えねえスキルなんて、意味ねえだろ」
和真は拳を握りしめた。聞こえていないふりをして、ギルドを出る。
……くそ。いつか見返してやる。
アクセル郊外の湿地帯。
和真は、背の高い葦が生い茂る中を、慎重に進んでいた。足元はぬかるんでいて、一歩踏み出すたびに、ぐちゃりと音がする。空気は湿っていて、泥と草の匂いが混ざっていた。
「……いた」
前方に、大カエルが一匹。体長一メートルほどの、緑色のカエルだ。岩の上にじっと座っていて、こっちには気づいていない。
和真は腰のナイフを抜き、息を潜めた。大カエルの目は横についている。つまり、真後ろが見えにくい。ここは、事前に観察してわかっていた弱点だ。
ゆっくりと、音を立てないように近づく。五メートル、三メートル、一メートル——。
「そこだ!」
和真は一気に距離を詰め、大カエルの背後からナイフを突き立てた。
「ゲエッ!」
大カエルが短い悲鳴を上げて、崩れ落ちる。よし、一匹目。
だが、その直後だった。
周囲の葦の茂みが、一斉にざわざわと揺れた。
「……は?」
次の瞬間、五匹の大カエルが、泥の中から飛び出してきた。
「うわっ!?」
和真は慌ててナイフを構え直した。だが、大カエルの一匹が、口から粘液を吐き出してきた。
「ぐっ!?」
足元に粘液が命中し、和真は思い切り滑って転倒した。全身が泥まみれになる。口の中にまで泥が入ってきた。
「ぺっ、ぺっ!くそ、最悪だ……!」
大カエルたちが、一斉に飛びかかってくる。和真は泥の中を転がりながら、必死に回避した。
「この……!」
和真は近くの木の枝を掴み、泥を振り払いながら立ち上がった。服は泥とカエルの体液でぐちゃぐちゃだ。
でも、大カエルの動きは、事前に観察した通りだった。横にしか目がないから、真後ろへの反応が遅い。
「落ち着け……一匹ずつだ」
和真は、大カエルたちの動きをよく見ながら、一匹ずつ背後に回り込んで、ナイフで仕留めていった。
一匹、二匹、三匹……。
最後の一匹を倒した時、和真は膝をついた。
「はあ……はあ……」
疲労困憊。服は泥と返り血でぐちゃぐちゃ。髪にも泥がこびりついている。
「……ちくしょう」
和真は空を見上げた。
「こんなに泥まみれになるなら、スキルが何か役に立てばいいのに……」
大カエルの死体から討伐証明のカエル石を回収し、和真はギルドへ戻った。
ギルドの扉を開けると、中の冒険者たちが一斉にこっちを見た。
「……なんだよ」
「おいおい、佐藤、お前どうしたんだその格好!」
「大カエルにでも飲み込まれたのかよ!」
酒場から笑い声が上がった。和真は顔を赤くして、カウンターへ向かった。
「佐藤さん、大丈夫ですか!?」
ルナが驚いた顔で立ち上がった。
「……大丈夫っす。大カエル六匹、討伐しました」
和真はカエル石をカウンターに置いた。
「六匹も!?一人でですか?」
「まあ、はい」
ルナは目を丸くして、カエル石を確認した。それから、ふっと優しい笑顔になった。
「お疲れさまでした。大カエル六匹、討伐報酬の三千エリスです。それと、素材買取で五百エリス。合計三千五百エリスになります」
和真は報酬を受け取り、ほっと息をついた。
「……ありがとうございます」
和真が去ろうとした時、ルナが呼び止めた。
「あ、佐藤さん、ちょっと待ってください」
「なんですか?」
ルナは少し言いにくそうに、でも、はっきりと言った。
「佐藤さんのステータス閲覧スキル、実は私が知る限り、このギルドには一人もいないんです。大体、鑑定系スキルは王国でも数人しか確認されていません」
「……え?」
和真は、一瞬、何を言われたのかわからなかった。
「そんなに珍しいんですか?」
「ええ。外れ扱いされていますけど、見方を変えれば、とても希少な能力ですよ」
ルナが微笑んだ。その笑顔が、なんだか胸に響いた。
「……そう、なんすか」
和真の胸に、初めて、自分のスキルへの希望が芽生えた。
でも、同時に、疑問も湧いてくる。
(なぜ、天啓の儀で、こんなスキルが俺に授かったんだ?)
その夜。
ハーティアの館の一室。和真はベッドに寝転がりながら、ステータス画面を開いていた。
目の前に、半透明の青い画面が浮かんでいる。
『ステータス閲覧 Lv.1 対象の能力値を可視化する』
和真は、その表示をじっと見つめた。
「Lv.1ってことは……レベルが上がるのか?」
スキルにもレベルがある。それは知っていた。でも、ステータス閲覧がレベルアップしたら、どうなるんだろう。
「……わからん」
和真は画面を閉じた。
コンコン、とノックの音がした。
「ねえ、和真、今日はちゃんと稼いだの?借金返済の目処は立ったの?」
扉の向こうから、アクアの声がした。
「うるさいな、今考えてるところだ」
「もう!無駄遣いばっかりして!ちゃんと借金返してよ!」
アクアはそう言って、バタバタと去っていった。
和真は、またステータス画面を開いた。
「これが俺の……唯一の武器か」
その時、窓の外で、風がゴウッと吹いた。
和真は顔を上げた。
館の外の闇の中。月明かりの下に、二つの人影があった。
一つは、紅い瞳を月明かりに煌めかせている。もう一つは、黒いローブを翻しながら、静かに消えていく。
「……気のせいか」
和真は窓の外を見たが、そこには誰もいなかった。
和真はベッドに潜り込んだ。
翌朝。
和真はギルドの依頼掲示板の前で、一枚の貼り紙を見つけた。
『薬草採取の護衛募集(紅魔族の少女)』
「紅魔族……?」
聞いたことないな、と首を傾げながらも、和真は依頼票を手に取った。
ギルドの受付で、和真は依頼主の名前を確認した。
「めぐみん・紅魔の里出身……か」
「めぐみん……変わった名前だな」
そこへ、他の冒険者の男たちの話し声が聞こえてきた。
「おい、紅魔族の護衛依頼、誰か受けてるか?」
「いや、誰も受けてねえよ。紅魔族と聞いただけで、みんな怖じ気づいてる」
「爆裂魔法を使うって噂だぞ。巻き込まれたらたまらん」
「爆裂魔法……?」
なんだそれ、と思いながらも、和真はニヤリと笑った。
(他の誰も受けてないなら、報酬は俺のもんだ)
和真は、打算的に依頼票を掴んだ。
「佐藤さん、紅魔族の方とは初対面ですか?」
ルナが心配そうに尋ねてきた。
「ああ、でも大丈夫だろ。相手は薬草採取だし」
和真は気楽に答えた。
その瞬間、ギルドの扉が勢いよく開いた。
バンッ!
音に驚いて、和真は振り返った。
そこに立っていたのは、紅い髪と紅い瞳の少女だった。
和真の運命の歯車が、静かに回り始めた。Noveliaとは?
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