この素晴らしい世界に祝福を!―めぐみんと過ごすifの日々―
この素晴らしい世界に祝福を!―めぐみんと過ごすifの日々―
アクセルに住む高校生、佐藤和真は、ダスティネスの屋敷で爆裂魔法を愛する少女・めぐみんと出会う。彼女は「紅魔族の天才魔導士」と名乗り、「私の爆裂魔法は一日一回しか使えないけど、その一撃は最強よ!」と誇らしげに宣言する。
和真はアクア、ダクネス、そしてめぐみんと同居することになり、彼女たちの混沌とした日常に巻き込まれていく。めぐみんは和真にまとわりつき、毎日のように爆裂魔法を見せびらかそうとする。「見て見て!すごいでしょ!」「特別に私の魔法を見せてあげる!」
ある日、魔王軍の将軍であるデュラハン・ベルディアがアクセルを襲撃する。和真たちは共に戦うが、ベルディアの強さに圧倒される。そこでめぐみんはとんでもない提案をする。「爆裂魔法を放つわ。でも条件があるの。和真、私のことが好きだと言ったら、やってあげる」
和真は戸惑いながらも、めぐみんの爆裂魔法を目撃する。彼らはベルディアを撃退することに成功する。しかし、魔法は予想以上に強力で、町の一部を吹き飛ばしてしまう。和真は彼女を叱るが、めぐみんは涙ながらに呟く。「私はただ……認めて
この素晴らしい世界に祝福を!―めぐみんと過ごすifの日々― - 三バカトリオと魔力干渉(ステータス画面に隠し効果)
朝の光が、ハーティアの館の食堂に差し込んでいた。白いテーブルクロスの上には、焼きたてのパン、チーズ、野菜スープが並んでいる。香ばしい匂いが部屋中に満ちていた。
佐藤和真は、げんなりした顔で椅子に座っていた。黒髪はいつものように寝癖で跳ねている。深い茶色の目は半分閉じかかっていて、今にも眠ってしまいそうだ。
「下僕!今日こそ、私の爆裂魔法を見せてあげるわ!」
真紅の長い髪をサイドテールにまとめた少女、めぐみんが、パンを片手に身を乗り出してきた。紅い瞳がキラキラと輝いている。左目の眼帯が、朝の光を受けて少しずれていた。
和真はスープを啜りながら、ため息をついた。
「朝っぱらから爆裂魔法の話かよ。つか、昨日も一昨日もその前も、毎日同じこと言ってるだろ」
「何を言っているの!爆裂魔法は毎日見ても飽きない、この世界で最も美しい魔法なのよ!それに、今日は特別なの!」
「特別ってなんだよ」
「今日の私は、昨日の私よりも魔力が高まっているのよ!つまり、より強力な爆裂魔法が撃てるということ!あなたはラッキーだわ、下僕!」
「いや、お前の爆裂魔法が強力になればなるほど、俺の借金が増えるんだが」
和真はげんなりしながらパンをかじった。すると、食堂の扉が勢いよく開いた。
「和真!借金返済はどうなったの!?」
水色の長い髪を揺らしながら、アクアが入ってきた。白と青の衣装に身を包んだ、自称女神の少女だ。見た目だけは本当に女神らしく美しい。だが、中身は残念なことに、ただの駄女神だった。
「お前、毎朝同じこと聞いてくるよな。借金が一晩で消えるわけないだろ」
「だって、あなた全然働かないじゃない!この前もギルドで昼寝してたって聞いたわよ!」
「あれは作戦だ。体力温存のための、な」
「嘘つき!ただ寝てただけじゃない!」
「うるせえな、朝から騒ぐなよ」
「ちょっと、下僕!私の話を無視しないで!今日こそ爆裂魔法を見せるんだから、予定を空けておきなさい!」
めぐみんが和真の袖を引っ張った。和真がアクアと話していたのが気に入らないらしい。むっと頬を膨らませて、和真をじっと見上げている。
「お前らな、朝から二人して俺を挟んで騒ぐのやめろ。胃に悪い」
その時、食堂の扉がまた開いた。
「和真様!おはようございます!今日こそ、私を縛って鞭打ってください!」
金髪のロングヘアを輝かせながら、ダクネスが飛び込んできた。白い肌に、青い瞳。スタイルは抜群で、鎧を着ていると凛々しい女騎士に見える。だが、その口から出る言葉は、いつも変態的なリクエストばかりだった。
「朝から何を言い出すんだお前は」
「何をって、当然のことを!私は和真様の専属の盾として、鞭打たれることで喜びを感じるのです!さあ、遠慮なく!」
「遠慮するわ!つか、誰が鞭打つか!」
「では、縛るだけでも!」
「縛るだけでも何も、朝から変態プレイを要求するな!」
「下僕!私の話を聞きなさい!今日は爆裂魔法を見せる日なのよ!」
「和真!借金の話はどうするのよ!」
「和真様!縛ってください!鞭打ってください!お願いします!」
三人が一斉に和真に迫ってきた。めぐみんは袖を引き、アクアは顔を近づけ、ダクネスはなぜか嬉しそうに身をくねらせている。
「お前らまとめて黙れえええええ!」
和真は叫んだ。その瞬間、口の中のパンが喉に詰まった。
「ごほっ!ごほっ!……ぐっ……」
「あら、下僕。パンを喉に詰まらせたの?みっともないわね」
「和真!大丈夫!?水を飲みなさい!」
「和真様!私が背中を叩きましょうか!それとも、口移しで水を!?」
「口移しは絶対にやめろ!……ごほっ!……お前らが騒ぐからだろ!」
和真は必死にスープを流し込み、なんとか呼吸を整えた。三人は、そんな和真をじっと見ている。
「下僕。あなた、私以外の女と話しすぎよ」
めぐみんが、冷たい声で言った。紅い瞳が、アクアとダクネスを交互に睨んでいる。
「は?話しすぎって、お前らが一方的に話しかけてきてるんだろ」
「いいえ。あなたは私の下僕なのだから、私にだけ構っていればいいのよ」
「なんでそうなるんだよ!」
「ちょっと、めぐみんちゃん!和真は私の借金取りなんだから、私が優先よ!」
「いいえ、和真様は私の専属の盾!私が優先です!」
「何を言っているの。下僕は私のものよ」
三人がまた言い争いを始めた。和真は頭を抱えた。
(なんでこうなるんだよ……たくっ、しょうがねえな)
和真は残りのパンを口に押し込み、立ち上がった。
「俺はギルドに行くからな。お前ら、勝手に騒いでろ」
「待ちなさい、下僕!私も行くわ!」
「私も行くわよ!」
「私もお供します!」
「……来ると思ったよ」
和真は大きなため息をついた。胃がキリキリと痛む。この三バカトリオと一緒に行動すると、毎回ろくなことにならない。
だが、和真は知っていた。この三人が、なんだかんだ言って、この世界で自分が一番信頼できる仲間だということを。
アクセル冒険者ギルド。
石造りの大きな建物の中は、朝から多くの冒険者で賑わっていた。剣を背負った男、杖を持つ魔法使い、軽装の斥候らしき女。酒場のカウンターでは、朝から酒を飲んでいる連中もいる。
和真たちが中に入ると、ギルドの受付嬢、ルナが笑顔で出迎えてくれた。
「おはようございます、佐藤さん。今日は早いですね」
「まあ、朝から家にいると騒がしくてな」
「ルナさん!今日こそ、私の爆裂魔法を見せる日なのよ!」
「え、あの、それは……街の近くでは控えてくださいね?」
ルナが苦笑いした。この一週間で、めぐみんの爆裂魔法の噂はギルド中に広まっていた。
「佐藤さん。実は、ちょうどあなたに依頼をお願いしたいと思っていたんです」
「依頼?なんだよ」
「アクセル郊外の森林で、キラープレデターの異常発生が確認されました。調査と討伐の依頼です」
「キラープレデターって、危険度Cの、体長2メートルの群れで襲ってくるやつだろ?」
「ええ。普段は森の奥に生息しているんですが、最近、森の浅い場所でも目撃されるようになって。このままだと、街道や近くの村に被害が出るかもしれません」
「報酬は?」
「討伐数に応じた出来高払いです。1体につき5,000エリスです」
「5,000エリスか……」
和真は頭の中で計算した。借金は35万エリス。1体5,000エリスなら、70体倒せば返せる。いや、70体は無理だ。でも、10体倒せば5万エリス。それだけあれば、少しは借金を減らせる。
「……受けるよ。借金返済のためだ」
「ありがとうございます!ただ、今回はパーティ編成を推奨します。キラープレデターは群れで行動しますから、一人では危険です」
「パーティ編成ねえ……」
和真は後ろを振り返った。そこには、めぐみん、アクア、ダクネスが立っている。
「下僕!私をパーティに入れなさい!私の爆裂魔法があれば、キラープレデターなど一瞬よ!」
「私も行くわ!女神の力を見せてあげる!」
「私もお供します!盾として、皆さんをお守りします!」
「……お前ら、行く気満々だな。つか、お前ら以外に選択肢がないってのが悲しい」
和真は仕方なく、三人をパーティに加えることにした。
ギルドの酒場の隅では、他の冒険者たちがこそこそと話をしていた。
「おい、見ろよ。あれ、紅魔族の爆裂魔法使いと、女神様と、あの変態騎士のパーティだぞ」
「派手なことになりそうだな。あの三人、揃ってるだけでカオスだろ」
「リーダーは佐藤って男か。気の毒に」
「派手どころかカオスになるだけだよ、まったく」
和真は胃を押さえながら呟いた。
その時、ギルドの入口から、柔らかな声が聞こえてきた。
「あら、和真さん。お久しぶりです」
振り返ると、銀色の長い髪を揺らしながら、ウィズが立っていた。黒いローブを身にまとい、穏やかな微笑みを浮かべている。彼女は、この街で魔法具店を営んでいる女性で、和真たちの知り合いだった。
「ウィズさん。素材買取の相談ですか?」
「ええ、そうなんです。でも、その前に、あなたたちのパーティを見ていたら、なんだか楽しそうで」
「楽しそう?どこが?」
「ふふ。だって、皆さん、とっても仲が良さそうですもの」
「仲が良いんじゃなくて、うるさいだけだよ」
「あら、それでも、一緒にいるのが当たり前になっているんでしょう?私も混ぜてもらっていいかしら?」
「え?ウィズさんが?」
「ええ。キラープレデターの討伐、少しでもお役に立てると思いますし」
「ウィズさんが来てくれるなら心強いわ!私の爆裂魔法の美しさを、存分に見せてあげる!」
「ウィズさん!私の女神の力も見てくださいね!」
「ウィズさんも、和真様の盾としての私の活躍を見てください!」
「……パーティがどんどんカオスになっていく」
和真が頭を抱えていると、ギルドの扉がまた開いた。
「めぐみん!また勝手にどこかに行ったわね!今日こそ、私との勝負に決着をつけなさい!」
紅い髪をポニーテールにした少女、ゆんゆんが飛び込んできた。めぐみんと同じ紅魔族で、自称ライバルだ。
「ゆんゆん。あなたに構っている暇はないのよ。私はこれから、下僕と共にキラープレデターを討伐するのだから」
「キラープレデター!?危険じゃない!私も行くわ!めぐみんの足を引っ張らないように、私が守ってあげる!」
「余計なお世話よ。あなたなんて、爆裂魔法の足元にも及ばないくせに」
「な、なによ!私だって、紅魔族の魔法使いなんだから!」
「……完全に女性だらけになったな」
和真は、自分を取り囲む女性たちを見渡した。めぐみん、アクア、ダクネス、ウィズ、ゆんゆん。全員、和真の方を向いて、何かしゃべっている。
(俺、これからこの五人を連れて、キラープレデターの群れと戦うのか?)
和真の胃痛は、さらに悪化した。
アクセル郊外の森林。
木々が生い茂り、昼間なのに薄暗い。湿った土の匂いと、葉が擦れる音が、周囲を包んでいた。
和真たちは、森の入り口で足を止めた。
「よし、作戦を確認するぞ」
和真は、ステータス閲覧スキルを発動した。左手の魔法陣の痣が、うっすらと光る。目の前に、半透明の青い画面が浮かび上がった。
『めぐみん Lv.12 魔力: 高 体力: 低 スキル: 爆裂魔法』
『アクア Lv.15 魔力: 高 体力: 中 スキル: 治癒魔法、聖属性魔法』
『ダクネス Lv.14 魔力: 低 体力: 高 防御力: 規格外 攻撃力: 並以下 スキル: 盾術』
『ウィズ Lv.20 魔力: 高 体力: 低 スキル: 氷結魔法、補助魔法』
『ゆんゆん Lv.11 魔力: 中 体力: 中 スキル: 火炎魔法、風魔法』
和真は、それぞれのステータスを素早く確認した。
(めぐみんの魔力は異常に高い。でも、制御の項目が低い。ダクネスの防御力は規格外だけど、攻撃力が並以下。アクアの聖属性魔法は、キラープレデターに有効だ。ウィズの氷結魔法で足止めできる。ゆんゆんは、めぐみんの護衛に回すのがいい)
和真は、頭の中でフォーメーションを組み立てた。
「いいか、よく聞け。めぐみんは後衛で爆裂魔法の詠唱。ダクネスが前衛で敵を引きつける。アクアはダクネスの治癒。ウィズさんは氷結魔法で敵の動きを止めて。ゆんゆんは、めぐみんの護衛だ」
「下僕が私に命令するなんて、生意気だわ」
「命令じゃない、作戦だ。お前、自分の役割、分かってるのか?」
「分かっているわよ。後衛で爆裂魔法の詠唱。つまり、一番重要な役割でしょ?」
「そうだ。お前の爆裂魔法が、この作戦の要だ。頼むぞ」
和真が真剣な顔で言うと、めぐみんは少し驚いた顔をした。
「……わ、分かっているわ。私の爆裂魔法は最強なのだから、任せなさい」
めぐみんは、少し照れたように顔を赤らめた。
(こいつ、素直に褒められると照れるのか。意外とかわいいところあるんだな)
和真は心の中でそう思ったが、口には出さなかった。
「和真様!私の役割は、敵を引きつけることですね!つまり、私の体を囮にしろということですね!素晴らしい作戦です!」
「お前、囮になるのが嬉しいのかよ」
「もちろんです!私の体が、敵の攻撃を受ければ受けるほど、私は幸せを感じるのですから!」
「……変態だな、お前」
「ありがとうございます!最高の褒め言葉です!」
「褒めてないからな!」
和真がツッコんでいると、ゆんゆんが不安そうに口を開いた。
「ね、ねえ、佐藤さん。本当にキラープレデターがいるの?私、ちょっと怖いかも……」
「大丈夫だ。俺のステータス閲覧で、敵の位置と数を把握しながら進む。お前は、めぐみんの護衛に集中しろ」
「佐藤さん、意外と頼りになるのね」
「意外とはなんだ、意外とは」
「ちょっと、下僕!ゆんゆんと話しすぎよ!さっさと行くわよ!」
めぐみんが、むっとした顔で和真の袖を引っ張った。
「お前、さっきから袖引っ張りすぎだろ。伸びるわ」
「いいのよ。あなたの袖は、私が引っ張るためにあるのだから」
「なんだその理屈」
和真はため息をつきながら、森の中へ足を踏み入れた。
森の中は、思ったよりも暗かった。高い木々が日光を遮り、地面には苔が生えている。時折、鳥の鳴き声が聞こえるが、それ以外は不気味な静けさに包まれていた。
和真は、ステータス閲覧を発動しながら、慎重に進んだ。
「……いるぞ。前方、50メートル。3体だ」
和真は小声で言った。ステータス画面には、キラープレデターの情報が表示されている。
『キラープレデター Lv.8 HP: 中 弱点: 後頭部』
「弱点は後頭部だ。それと、群れで行動するから、一度に相手をするな。ダクネス、前衛頼む」
「任せてください!私の体を、思う存分囮にしてください!」
ダクネスが、大剣を構えて前に出た。
その瞬間、茂みがガサガサと揺れた。
「ギシャアアアア!」
鋭い鳴き声と共に、キラープレデターが飛び出してきた。体長2メートルの、黒い鱗に覆われた四足獣。赤い目がギラギラと光り、鋭い牙が口から覗いている。
1体、2体、3体……4体、5体。
合計5体のキラープレデターが、和真たちを取り囲んだ。
「さあ、かかってきなさい!私の体を、好きなだけ傷つけていいのよ!」
ダクネスが叫びながら、キラープレデターの群れに突っ込んでいった。
「ギシャアアア!」
キラープレデターの爪が、ダクネスの鎧を切り裂いた。ガキィン!という音と共に、火花が散る。
「ああっ!もっと!もっと私を傷つけて!」
ダクネスは、嬉しそうに叫びながら、攻撃を受け続けている。
「あいつ、本当に楽しそうだな」
「和真!ダクネスが傷ついてる!私が治癒するわ!」
「頼む!ダクネスが持つ間に、めぐみん、詠唱開始だ!」
「分かったわ。……我が名はめぐみん。紅魔族随一の天才魔法使い。かの者に宿りし紅き力よ、我が呼びかけに応え、その力を示せ……」
めぐみんが、杖を掲げて詠唱を始めた。紅い髪が、風もないのにふわりと浮き上がる。紅い瞳が、一層強く輝き始めた。
「ウィズさん!敵の動きを止めてください!」
「ええ。……氷結魔法、凍てつく息吹よ」
ウィズが手をかざすと、キラープレデターの足元から氷が広がり、動きを封じた。
「ギシャアアア!」
キラープレデターが、氷に足を取られてもがいている。
「アクア!ダクネスの治癒を続けろ!ダクネス、そのまま敵を引きつけろ!」
「任せて!聖なる光よ、傷を癒したまえ!」
アクアの手から、白い光が放たれ、ダクネスの傷が塞がっていく。
和真は、ステータス閲覧で、リアルタイムに戦況を確認していた。
(ダクネスのHPはまだ大丈夫。アクアの魔力も十分。ウィズの氷結魔法で、敵の動きは止まってる。めぐみんの詠唱は……あと10秒!)
「めぐみん、あと10秒!耐えろ!」
「……我が力、その全てを解放せん。爆裂魔法、エクスプロージョン!」
めぐみんが、杖を前方に向けた。
次の瞬間、世界が白く染まった。
ドォォォォォン!!!
轟音と共に、爆発が森を揺らした。衝撃波が、木々をなぎ倒し、地面をえぐる。キラープレデター3体が、爆発に巻き込まれ、一瞬で消し飛んだ。
「ふふ……見たか、下僕。これが私の爆裂魔法よ」
めぐみんは、得意げに笑った。だが、その足元はふらついている。
「まだ残り2体だ!ゆんゆん、めぐみんを守れ!俺が残りを片付ける!」
和真は、短剣を抜いて走り出した。残った2体のキラープレデターが、氷から抜け出して、和真に向かってくる。
「佐藤さん!危ない!」
「大丈夫だ!弱点は後頭部!ゆんゆん、援護しろ!」
「わ、分かったわ!火炎魔法、燃え上がれ!」
ゆんゆんが放った火炎魔法が、キラープレデターの1体の注意を逸らした。
和真は、もう1体の背後に回り込み、短剣を構えた。
(後頭部!ここだ!)
「おらああああ!」
和真は、短剣をキラープレデターの後頭部に突き刺した。
「ギシャアアアア!」
キラープレデターが断末魔を上げ、崩れ落ちた。
「ゆんゆん!もう1体だ!」
「ええ!風魔法、切り裂け!」
ゆんゆんの風魔法が、もう1体の動きを止めた。和真は、その隙に、また後頭部を狙って短剣を突き刺した。
「ギシャアアア……!」
最後のキラープレデターも、地面に倒れた。
戦闘が終わった。
森の中に、静寂が戻った。倒れたキラープレデターの死体から、血が流れ出し、地面を赤く染めている。
「やりましたわね!和真様!私の盾としての活躍、見てくださいましたか!?」
ダクネスが、ボロボロの鎧を着たまま、嬉しそうに近づいてきた。
「ああ、見たよ。お前、攻撃受けてる間、ずっと笑ってたな。怖いわ」
「ありがとうございます!私の体が、和真様の役に立てて、本当に幸せです!」
「……もういい、お前は黙ってろ」
和真は、めぐみんの方を振り返った。
めぐみんは、ゆんゆんに支えられながら立っていた。顔色が青い。
「めぐみん!大丈夫か!?」
和真が駆け寄ると、めぐみんは、かすかに震えていた。
「……なんで……こんなに早く魔力が回復しないの……」
「え?」
「まだ……次の魔法の詠唱ができない……こんなの、おかしいわ……」
めぐみんの声は、今にも消え入りそうだった。いつもの高飛車な態度は、どこにもない。
「もしかして……私の魔力が、不安定なの……?」
めぐみんが、初めて弱音を吐いた。
その言葉を聞いた瞬間、和真の胸の奥で、何かが激しく脈打った。
(まさか……)
和真は、自分のステータス画面を開いた。
『ステータス閲覧 Lv.1 対象の能力値を可視化する』
『追加効果: 魔力干渉(微弱)』
『魔力干渉(微弱): 周囲の魔法使いの魔力を不安定にする』
和真は、その表示を見つめた。
(俺のせいだ……俺のスキルが、めぐみんの魔力を狂わせてる……)
和真の手が、震えた。
「紅魔族の魔力が乱れるなんて、聞いたことがないわ」
ウィズが、深刻な表情で言った。
「めぐみん……大丈夫?私、何かできることない?」
ゆんゆんが、涙目でめぐみんを支えている。
「……大丈夫よ。少し休めば、治るわ」
めぐみんは、無理に笑おうとした。だが、その笑顔は、痛々しかった。
和真は、何も言えなかった。
(俺のせいだ。俺が、めぐみんを危険にさらしてる)
和真の心の中で、罪悪感が渦巻いていた。
「下僕。どうしたの?顔色が悪いわよ」
めぐみんが、和真の顔を覗き込んだ。
「……え?あ、いや、なんでもない」
和真は、慌ててステータス画面を閉じた。
「嘘。あなた、何か隠してるわ」
「隠してないって。それより、お前こそ、ちゃんと休めよ」
和真は、めぐみんの頭に、ぽんと手を置いた。
「……な、なによ、急に」
めぐみんが、顔を赤らめた。
「無茶するなよ。お前の爆裂魔法は、確かに最強だけど、その分、お前の体に負担がかかってるんだからな」
「……あ、あなたに言われなくても、分かってるわよ」
めぐみんは、照れ隠しのように、和真の手を振り払った。だが、その顔は、少し嬉しそうだった。
ギルドへの帰り道。
夕日が、アクセルの街をオレンジ色に染めていた。石畳の道を、和真たちは歩いていく。
めぐみんは、和真の隣を歩いていた。ゆんゆんが支えようとしたが、めぐみんは「もう大丈夫」と言って、自分で歩いていた。
「……あなたのスキル、悪くないわね」
めぐみんが、小声で呟いた。
「え?今、なんて言った?」
和真が振り向くと、めぐみんは顔を赤らめていた。
「べ、別に褒めてるわけじゃないわ!ただ、私の爆裂魔法を活かす指示を出せるのは、あなただけだって思っただけ!」
めぐみんは、早口でまくし立てた。
和真の胸の奥が、じわりと温かくなった。
(こいつ、素直に褒められると、こんなに慌てるのか)
和真は、めぐみんの頭を、またぽんと叩いた。
「お前の爆裂魔法は、確かにすごかったよ。あの一撃で、3体も消し飛ばしたんだからな」
「……当たり前よ。私の爆裂魔法は、最強なのだから」
めぐみんは、まだ顔を赤らめたまま、和真の袖をぎゅっと掴んだ。
和真は、その手を振り払わなかった。
(でも、俺のスキルが、めぐみんの魔力を狂わせてる……)
和真の心に、再び罪悪感が押し寄せてきた。
「めぐみん、その……俺のそばにいると、魔力が……」
和真が言いかけると、めぐみんが首を傾げた。
「何?」
「……何でもない。ただ、無茶するなよ」
和真は、言葉を飲み込んだ。
「何よ、それ。はっきり言いなさいよ」
めぐみんは不満げに言ったが、和真の袖を掴んだ手は、離さなかった。
「めぐみん、和真さんと仲いいね!」
ゆんゆんが、後ろからからかうように言った。
「ち、違うわよ!これは、下僕が勝手に私のそばを歩いてるだけよ!」
めぐみんは、顔を真っ赤にして否定した。だが、手は、まだ和真の袖を掴んだままだった。
「ふふ、めぐみん、顔真っ赤だよ」
「うるさい!ゆんゆんは黙ってなさい!」
「あはは、怒った!」
二人の言い争いを、和真は苦笑いしながら聞いていた。
(こんな日常が、ずっと続けばいいのに)
和真は、夕日に照らされたアクセルの街並みを見ながら、そう思った。
だが、和真の心の奥底には、魔力干渉という、暗い影が潜んでいた。
その夜。
ハーティアの館の一室。
和真は、ベッドに座り、ステータス画面を開いていた。
『ステータス閲覧 Lv.1 対象の能力値を可視化する』
『追加効果: 魔力干渉(微弱+)』
和真は、画面をじっと見つめた。
「微弱から、微弱+に変わってる……」
朝に確認した時は、「微弱」だった。だが、今は「微弱+」になっている。
(スキルが成長してる?俺が仲間に影響を与える力が、強くなってる?)
和真の背中に、冷たいものが走った。
(このままスキルが成長し続けたら、めぐみんの魔力は、もっと不安定になる。最悪、魔法が使えなくなるかもしれない)
和真は、画面を閉じた。
窓の外を見る。月明かりが、庭園を静かに照らしていた。
遠くの路地に、黒い影が一つ、佇んでいた。
銀色の長い髪が、月明かりに照らされて、青白く輝いている。
「魔力干渉……やはりあなたは、私のコレクションの中で、最高傑作になるわ」
影は、ハーティアの館を見つめながら、静かに微笑んだ。
「デュラハン卿に連絡を。1週間後、アクセルを訪問する準備を進めて」
シルビアは、隣に控える部下に命じた。
「かしこまりました。シルビア様」
シルビアは、もう一度、館を見つめた。
「佐藤和真……あなたのスキルは、決して外れなどではないわ。むしろ、この世界で最も希少な力。私の手で、その真価を引き出してあげる」
シルビアの金色の瞳が、獲物を見つけたように細められた。
和真は、その存在に気づかない。
隣の部屋から、めぐみんの寝息が聞こえてくる。
「俺、どうすればいいんだよ……」
和真は、小さく呟いた。
ステータス画面の「魔力干渉(微弱+)」の文字が、闇の中で、次第に輝きを増していく。
その光は、和真の不安を映し出すように、静かに、しかし確実に、強くなっていた。Noveliaとは?
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