キルラキルIF 〜鮮血が燃え尽きなかった世界〜
――鮮血は、死んでいなかった。
本能字学園での決戦から半年。纏流子は輪廻堂高校の教室で、ただ漫然と午後の授業を受けていた。頭の中は、あの黒いセーラー服のことばかり。宇宙空間で燃え尽きた相棒の欠片を探して、流子は週の半分以上を欠席し、各地を飛び回っている。それでも、見つかったのは何一つない。
そんなある日、下駄箱に一通の封筒が置かれていた。差出人は、針目縫。あの決戦で消えたはずの女からだった。
『鮮血を生き返らせたかったら、本能字学園にいらっしゃい。ただし、お前の大切なものを賭ける覚悟で来ること』
封筒を握りつぶし、流子は走り出す。行くしかない。鮮血を取り戻すために。
本能字町に降り立った流子を待っていたのは、かつて廃棄されたはずの極制服をまとった生徒たちと、あの無邪気な笑顔だった。縫の手には、赤く光る鮮血の右目。そして告げられる。鮮血は死んでいない。七つに分かれた欠片を集めれば、縫い合わせてやると。
「せいぜい楽しませてね、流子ちゃん」
校門が開く。数十人の極制服が、一斉に力を解放する。片太刀バサミを構え、流子は笑った。鮮血がいなくても、戦える。鮮血のためなら、なんだって
キルラキルIF 〜鮮血が燃え尽きなかった世界〜 - 包囲網突破 ― 鮮血なき初陣と縫の遊戯
校門が開いた瞬間、流子は本能字学園の校庭に足を踏み入れた。
夕日が赤く染める地面。半年前まで、ここは流子が戦い抜いた場所だった。鮮血と一緒に。あの黒いセーラー服と、二人で。
(……懐かしい、なんて思ってる場合か)
流子はギターケースを握り直した。背中に背負ったケースの中には、片太刀バサミが入っている。父・纏一身が遺した、巨大なハサミの片割れ。鮮血を失った今、これが唯一の武器だ。
校庭の空気が、ぴり、と張り詰めた。
気配がした。前から。横から。後ろから。
流子は足を止めた。
校舎の影から、体育館の裏から、校門の両脇から、生徒たちが現れる。一人、二人、五人、十人。数えるのをやめた。ざっと見て、三十人はいる。
全員、極制服を着ていた。
ただし、流子が知っている極制服とは違う。肩の装甲が厚い。胸元に赤い糸の刺繍が走り、腕や脚を覆う生地が、うっすらと脈打つように光っている。
(新型……)
極制服。生命戦維という特殊な繊維を織り込んだ、着るだけで身体能力が跳ね上がる制服。星の数でランクが決まり、一ツ星から四ツ星まである。かつて本能字学園を支配していた、力の象徴。
羅暁の野望が砕かれた後、極制服は全部廃棄されたはずだった。なのに、今、目の前の生徒たちは、前より強そうな極制服を着ている。
「……どいてもらおうか」
流子は低く言った。
返事はなかった。代わりに、生徒たちが一斉に動いた。
包囲網。完璧な連携。一人が踏み込めば、別の一人が流子の退路を塞ぐ。左右から同時に仕掛け、後ろからは投擲。呼吸が合いすぎている。
(こいつら、訓練されてる)
流子はギターケースを地面に叩きつけた。ケースが弾け、中から片太刀バサミが飛び出す。流子は空中でそれを掴み、そのまま一回転。刃が風を切る。
ザンッ!
迫ってきた生徒の一人を、柄で殴り飛ばした。吹っ飛ぶ体。地面を転がる。
「かかってこいよ。まとめて相手してやる!」
流子は叫んだ。八重歯をむき出しにして、獣みたいに笑う。
でも、心の奥では分かっていた。
(鮮血がいれば……こんなの一瞬なのに)
悔しさが、胸の奥でぐるぐる回る。鮮血。あの黒いセーラー服。父の形見。相棒。あれを着れば、身体能力が何倍にも跳ね上がる。片太刀バサミの真の力も、引き出せる。
今の流子には、それができない。
鮮血は宇宙で燃え尽きた。欠片は、まだ七つのうち一つも手に入っていない。
「うおおおっ!」
生徒の一人が、拳を振り下ろしてきた。新型極制服の腕部装甲が、空気を裂く。流子は紙一重でかわし、片太刀バサミの腹で弾く。ガキン、と火花が散った。
重い。
一撃一撃が、以前の極制服よりずっと重い。戦維含有率が高い。着ている人間の理性を奪いかねないほど、濃い戦維が織り込まれている。
(生命戦維……)
流子は歯を食いしばった。生命戦維は、人間の細胞と融合して超人的な力を発揮する繊維状のエネルギー体。極制服や神衣の原料だ。過剰摂取すれば、精神が崩壊する。
こいつらは、その危険な力に身を任せている。
「はああっ!」
流子は片太刀バサミを横薙ぎに振るった。三人まとめて吹き飛ばす。だが、代わりに別の三人が踏み込んでくる。切りがない。
蹴りが脇腹に入った。
「ぐっ……!」
流子は地面を転がり、受け身を取って立ち上がる。口の中に鉄の味が広がった。唇が切れている。
(やべえ。数が多すぎる)
息が上がってきた。腕が重い。足が、少しずつ動かなくなっていく。
それでも、流子は倒れるわけにはいかなかった。鮮血の欠片は、まだ見つかっていない。あの女から、奪い返さなければ。
「はあ……はあ……!」
肩で息をしながら、片太刀バサミを構え直す。視界の端で、生徒たちが再び包囲網を狭めてくるのが見えた。
(くそ……鮮血が、いれば)
もう何度目か分からない考えが、頭をよぎる。
その時だった。
「あはは、その程度? 鮮血なしじゃ、そんなものなのね」
声が、上から降ってきた。
流子は顔を上げた。
校舎の屋上。夕日を背にして、針目縫が立っていた。薄桃色のゆるふわツインテールが、風に揺れている。大きな青い瞳。小柄な体。白いワンピースの裾が、ひらひらと舞っていた。
指先には、指抜きグローブ。左目は前髪で隠れている。にこにこと、笑っている。目は、笑っていない。
「せっかく招待したのに、ずいぶん苦戦してるのね。昔はもっと強かったじゃない?」
縫は右手を持ち上げた。指先に、黒い布の切れ端がつままれている。
赤い光。
鮮血の右目。
流子の胸が、どくん、と跳ねた。あの布は、確かに鮮血の一部だ。布の上の大きな目が、弱々しく、でも確かに赤く光っている。
「てめえ……よくも、鮮血を」
「あら、感謝してほしいくらいよ。あの決戦の後、宇宙から私が全部拾ってあげたんだから」
縫は、布の欠片をひらひらと揺らした。
「鮮血は死んでないわ。ただ、バラバラになっただけ。全部で七つ。右目、左目、胴体、右脚、左脚、右腕、左腕」
縫の声が、校庭に響く。包囲していた生徒たちが、ぴたりと動きを止めた。縫の言葉を待っている。
「ねえ、流子ちゃん。一つ、遊びましょう?」
縫は屋上から身を乗り出した。落ちそうなほど、ぎりぎりまで。
「私が持つ欠片は七つ。お前が全部集められたら、鮮血を縫い合わせてあげる。私の癒絹の糸でね」
癒絹の糸。生命戦維を縫合し、損傷した神衣や極制服を修復する、縫だけが使える特殊な糸。
「……何が狙いだ」
流子は片太刀バサミを構えたまま、縫を睨んだ。
「狙い? 決まってるじゃない。楽しいからよ」
縫は、にこりと笑った。
「お前が必死になって欠片を探す姿、想像するだけで笑えてきちゃうわ。それに、皐月お姉さまも、きっと見に来るわよ。私がここにいれば、あの人も放っておけないはず」
皐月。
流子の実の姉。あの決戦の後、行方が分からなくなっている。
「姉さんを巻き込むな!」
「あら、もう姉さんって呼んでるのね。仲良しさんじゃない」
縫の笑顔が、一瞬だけ、冷たいものに変わった。
「でもね、流子ちゃん。遊びには、賭けが必要よ。お前が七つ集められなかったら——お前の大切なものを、貰うわ」
流子の指が、片太刀バサミの柄に食い込んだ。
(大切なもの……)
「……上等だ。やってやるよ」
流子は、はっきりと言った。
「欠片を全部集めて、鮮血を取り戻す。それで、お前の遊びに付き合ってやる」
「いい返事ね」
縫は満足そうに頷いた。
「じゃあ、まずは一つ星の子と遊んでみましょうか。地下闘技場に案内するわ」
縫が指を鳴らした。
包囲していた生徒たちが、一斉に道を開けた。校舎の入り口まで、一直線の道ができる。
「ついてきなさい。置いていかれると、つまらないわよ」
縫は屋上から消えた。
流子は片太刀バサミを肩に担ぎ、校舎へ向かって歩き出した。足が重い。体中が痛む。でも、止まるわけにはいかない。
(鮮血……待ってろよ。ぜってえ、取り戻す)
心の中で、そう誓った。
地下闘技場は、校舎の地下三階にあった。
鉄の扉をくぐると、空気が変わった。ひんやりと冷たく、黴臭い。壁はむき出しのコンクリートで、天井には裸電球が等間隔に吊るされている。
「ここ、元は何の部屋だったの?」
縫が、振り返らずに言った。
「……知るかよ」
「昔は、極制服の性能テストをする場所だったのよ。今は、こうして使ってるの。ほら、広いでしょう?」
縫が両手を広げた。
地下闘技場は、学校の体育館ほどの広さがあった。床は土。観客席はなく、壁際に古いベンチがいくつか並んでいる。天井からは、古びた照明がぶら下がっていた。
中央には、白いラインで円が描かれている。決闘のための円。
「で、一つ星ってのは、どいつだ」
流子は周囲を見回した。
「もう来てるわよ」
縫が指を鳴らすと、闘技場の隅の暗がりから、一人の生徒が歩み出てきた。
男子生徒。長身で、がっしりした体格。坊主頭。極制服は、他の生徒たちより一回り大きい。肩の装甲が、特に分厚い。胸元には、一つ星のマークが光っていた。
「こいつが、お前の初戦の相手よ。名前は……まあ、どうでもいいわね」
縫は、興味なさそうに言った。
「どうでもいいだと? てめえ、仲間だろ」
「仲間? 違うわよ。実験体よ」
縫は、にこりと笑った。
「新型極制服の、ね。戦維含有率を上げすぎると、どうなるか。そのデータを取るための、大事な実験体」
流子は、目の前の男子生徒を見た。
彼の目は、うつろだった。瞳孔が開き、焦点が合っていない。口元はだらりと開き、涎が垂れている。
(こいつ……もう、まともに意識がねえのか)
「……お前、どこまで腐ってやがる」
流子の声が、低くなった。
「あら、怒っちゃった? でも、心配しないで。お前が勝てば、この子の極制服から戦維を抜いてあげる。そうすれば、正気に戻るわ」
縫は、片太刀バサミを肩に担いだ流子を、じっと見つめた。
「さあ、始めましょう。私の可愛い実験体と、流子ちゃんの、遊びを」
縫が、一歩下がった。
男子生徒が、動いた。
「う、おおおおおっ!」
雄叫び。地面を蹴り、一直線に突っ込んでくる。速度が、異常だった。新型極制服の脚部が、彼の足を通常の数倍の力で動かしている。
流子は、横に跳んだ。
ドゴォッ!
さっきまで流子がいた場所に、男子生徒の拳がめり込んだ。土が爆ぜ、地面に小さなクレーターができる。
(馬鹿力……!)
流子は着地し、すぐに間合いを取った。男子生徒は、拳を地面から引き抜くと、再び流子に向かって突進してくる。
「うおおおおっ!」
今度は、両手を振り回しながらの乱打。一撃一撃が、風を切り裂く。流子は紙一重でかわし、後退する。
(まともに食らったら、骨が折れる)
流子は片太刀バサミを逆手に持ち替えた。
(なら、食らわせる前に、倒す)
流子は、男子生徒の突進に合わせて、前に出た。
ザンッ!
片太刀バサミの腹で、男子生徒の腕を弾く。体勢が崩れた瞬間、流子は彼の懐に飛び込んだ。
「おりゃあっ!」
片太刀バサミの柄で、鳩尾を突き上げる。
「ぐふっ……!」
男子生徒の体が、くの字に折れた。
でも、倒れない。
「う、うおおおおっ!」
彼は、血を吐きながら、再び拳を振り下ろした。
(効いてない……!?)
流子は、とっさに後方へ跳んだ。だが、男子生徒の拳が、流子の左肩をかすめた。
「っ……!」
痛み。肩の骨が、ぎしりと軋む。
(こいつ、痛みを感じてないのか)
流子は、肩を押さえながら、男子生徒を観察した。彼の目は、相変わらずうつろだ。涎が、顎から胸元に垂れている。
(新型極制服の副作用……戦維が、こいつの神経を麻痺させてる)
「どうしたの、流子ちゃん? 一つ星に苦戦してるの? 情けないわね」
縫の声が、闘技場に響く。
「うるせえ! 黙って見てろ!」
流子は叫んだ。
(情けないのは、分かってる。鮮血がいれば、こんなの一瞬だ。でも……)
流子は、片太刀バサミを正眼に構えた。
(鮮血がいなくても、私は戦える。戦わなきゃ、何も取り戻せない)
流子は、深く息を吸った。
吐く。
(行く)
流子は、地面を蹴った。
男子生徒が、迎え撃つように拳を振るう。流子は、その拳を、ぎりぎりでかわした。風圧で、髪がなびく。
(一発目、右)
流子は、男子生徒の右腕の下をくぐり抜けた。
(二発目、左)
男子生徒の左拳が、流子の顔面を狙ってくる。流子は、体を反らせてかわした。
(三発目——)
男子生徒が、両手を組んで、上から叩きつけてきた。
流子は、かわさなかった。
代わりに、片太刀バサミを、思い切り振り上げた。
ガキィィン!!
刃と拳が、正面からぶつかった。火花が散る。男子生徒の拳が、弾かれた。
(今だ!)
流子は、片太刀バサミを、男子生徒の足元に滑り込ませた。
ザシュッ!
刃が、男子生徒の右脚を切り裂いた。
「う、うがあああっ!」
男子生徒が、悲鳴を上げた。痛みが、戻ってきたのか。彼は、右脚を押さえて、その場に崩れ落ちた。
「……終わりだ」
流子は、片太刀バサミの先を、男子生徒の喉元に突きつけた。
男子生徒は、荒い呼吸をしながら、流子を見上げた。その目から、うつろさが消えている。
「た、助けて……」
彼は、震える声で言った。
「……安心しろ。殺しはしない」
流子は、片太刀バサミを下ろした。
男子生徒は、気を失った。
闘技場に、静寂が降りた。
パチ、パチ、パチ。
縫の拍手が、響いた。
「素晴らしいわ。鮮血なしでも、一つ星に勝てるのね。さすがは、羅暁の実験体」
「……てめえ、今、何て言った」
流子は、縫を睨んだ。
「あら、聞こえなかった? 羅暁の実験体って言ったのよ。お前は、羅暁に作られた、生命戦維の塊なのよ」
縫は、笑顔で言った。
「……その話は、後で、たっぷり聞かせてもらう」
流子は、片太刀バサミを握り直した。
「あら、楽しみにしてるわ。でも、まずは約束のものよ」
縫は、右手を差し出した。
指先に、黒い布の切れ端。鮮血の右目。
「はい、一つ目の欠片。右目よ。大事にしなさい」
縫は、欠片を放り投げた。
流子は、それを、空いた手で受け取った。
布は、温かかった。
(鮮血……)
流子は、欠片を握りしめた。赤い光が、指の隙間から漏れている。確かに、鮮血の一部だ。
「……次は、二つ星よ。覚悟なさい」
縫の声が、冷たくなった。
「二つ星は、一つ星とは比べ物にならないわ。新型極制服の戦維含有率も、段違い。お前、勝てるかしら?」
「……勝つさ。鮮血のためなら、なんだってな」
流子は、欠片を胸に押し当てた。
「あら、いい心がけね。でも、その前に、一つ教えてあげる」
縫は、一歩、流子に近づいた。
「お前の父、纏一身を殺したのは——私よ」
流子の体が、硬直した。
「……知ってるよ」
流子の声が、震えた。
「あら、そう? でも、知らないこともあるんじゃないかしら。例えば、なぜ私が、お前の父を殺したのか」
縫は、流子の耳元に、唇を寄せた。
「その話は、七つ集めてから、教えてあげる。お前が全部集められたらね」
流子は、片太刀バサミを握る手に、力を込めた。指が、白くなる。
「……てめえ、絶対に、許さない」
「いい顔ね、その怒り。もっと見せてよ。もっと、もっと」
縫は、愉悦に満ちた笑みを浮かべた。
「だって、お前が全部集められなかったら、教える必要もないもの。それに、お前の大切なものも、貰うわ」
縫は、くるりと背を向けた。
「……待てよ。まだ話は終わってない」
「終わったわ。続きは、次の試合の後よ。今日は、もう帰っていいわ」
縫は、歩き出した。
「……帰らない」
流子は、はっきりと言った。
縫が、足を止めた。
「あら?」
「私は、ここに留まる。欠片を全部集めて、鮮血を復活させて、父の死の真相を、お前から聞き出す。それまでは、絶対に帰らない」
流子は、縫の背中に、言い放った。
縫は、ゆっくりと振り返った。
「……あはは、面白い。面白いわ、流子ちゃん。本当に、お前は最高のおもちゃよ」
縫は、両手を広げた。
「歓迎するわ。本能字学園へ。ここで、たっぷり遊びましょう?」
縫の笑い声が、地下闘技場に響き渡った。
流子は、鮮血の欠片を握りしめたまま、縫の背中を睨み続けた。
その頃、輪廻堂高校では。
夕日が沈み、教室にオレンジ色の光が差し込んでいた。
満艦飾マコは、流子の空っぽの席を、じっと見つめていた。茶色のボサボサしたショートヘアが、窓から入る風に揺れる。丸くて大きな黒い瞳が、心配そうに潤んでいた。
「流子ちゃん、今日も来なかった……」
マコは、スマホを取り出した。流子とのトーク画面を開く。自分のメッセージが、何件も並んでいる。
『流子ちゃん、今日は来る?』
『お弁当、流子ちゃんの分も買ったよ!』
『ねえ、返事して!』
『生きてる? 心配だよ!』
既読は、一つもついていない。
マコは、新しいメッセージを打った。
『流子ちゃん、今どこにいるの? 心配だよ!』
送信。
画面を見つめる。
既読は、つかない。
「流子ちゃん、何かあったのかな……」
マコは、スマホを胸に抱きしめた。小さな体が、かすかに震えている。
流子が何を探しているのか、マコは知っている。鮮血。流子の相棒だった神衣。マコも、あの決戦の日、鮮血が燃え尽きるのを見ていた。
だから、流子が無理をしていることも、分かっている。
「大丈夫だよ、流子ちゃん。あたしがついてるから」
マコは、誰もいない教室で、小さくつぶやいた。
「……でも、心配だな。明日、流子ちゃんの家に行ってみよう」
マコは、決意を込めて、うん、と頷いた。
窓の外では、夕日が沈みかけていた。オレンジ色の光が、マコの頬を染める。
スマホの画面は、まだ暗いままだった。Noveliaとは?
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