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六花の勇者たちの敵、凶魔統率者テグネウ。その知られざる過去が、今明かされる――。 ヨルムンガルド山脈の奥深く、無名の洞窟に潜むテグネウは、黒蜥蜴の群れを人間領へと放っていた。三百十二年もの生涯、誰にも触れられず、異端と罵られ、同族からさえ距離を置かれてきた男。彼の胸に去来するのは、冷たい孤独と、決して満たされない渇望。 そんな折、黒蜥蜴の目を通して見たのは、小さな村で薪を運ぶ少年と少女の姿だった。無造作に伸びた茶色の髪の少年アドレットと、その姉シェトラ。髪を撫で、抱きつき、笑い合う二人の、何気ない、しかし疑いようのない愛情の光景。 その光景が、テグネウの胸の奥で何かを焼き焦がした。嫉妬。三百十二年、決して与えられたことのない温もりへの、制御不能な激情。 「火を放て」 冷徹な策士の仮面の下で、彼は苦渋の決断を下す。この村を焼き、姉を奪い、少年を凶魔への復讐者へと仕立て上げる――。それは、六花の勇者に匹敵する最強の駒を作るための、計算し尽くされた計画のはずだった。 だが、燃え盛る納屋の前で立ち尽くす少年を見つめながら、テグネウの頬を伝ったのは、自分でも意味のわからない涙だった。
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