ストライク・ザ・ブラッド 〜第四真祖は恋愛ができない〜
世界最強の吸血鬼なのに、鼻血は止められない。
絃神島に暮らす高校生・暁古城は、三か月前からちょっとした悩みを抱えていた。夜眠れない、昼は眠い、そしてなぜかちょっとした刺激で鼻血が出る。己の体質に振り回されながら、今日も遅刻寸前で学校へ走る。追い打ちをかけるのは、フリルドレス姿の担任・那月ちゃん(二十六歳自称)の容赦ない補習。親友の基樹には「お前、ほんとに気づかないんだな」と謎の呆れ顔をされ、クラスメイトの浅葱はなぜか顔を赤くして視線を逸らす。
そんなある日、古城の隣の空き部屋に、新しい住人が引っ越してきた。黒髪ボブの、彩海学園中等部の制服を着た女の子。廊下でばったり顔を合わせた瞬間、古城の鼻から生温かいものが滴り落ちる。慌てて弁明するも、「いやらしい人!」と平手打ちが飛んできて——。
世界最強の吸血鬼が、恋も日常もままならない。すれ違いだらけのラブコメが、ここに開幕。
ストライク・ザ・ブラッド 〜第四真祖は恋愛ができない〜 - 隣人のコンバットナイフと非常階段の小さな心臓
ガタン、と隣室から物音が聞こえた。
暁古城は菜箸を止め、壁に視線をやる。朝の七時二十分。まだ寝ているはずの時間ではない。
(また、あいつ……)
古城は鼻の頭を掻きながら、フライパンの中の卵焼きをくるりと巻いた。甘い香りが部屋に広がる。一人暮らしの朝には少し手の込んだ献立だ。
「……作る量、間違えたかもな」
そう呟いて、古城は隣の部屋のドアをノックした。
しばらくして、ドアが小さく開く。黒髪のボブヘアーがのぞいた。姫柊雪菜。彩海学園中等部三年生で、獅子王機関——日本政府の外郭団体で、魔族の監視や対策を任務とする国家機関——の見習い剣巫。古城の監視役として、三日前に隣室へ引っ越してきた少女だ。
「おはようございます、先輩」
雪菜はぴんと背筋を伸ばして、そう言った。制服姿ではない。白いブラウスに、紺色のスカート。休日の私服だ。
「おう。朝飯、作りすぎたんだけど、食うか?」
古城は手に持った皿を軽く持ち上げた。卵焼きと、ミニトマト、それに焼きたてのトーストが二枚。
雪菜は一瞬、唇を引き結んだ。
「……任務中の私に、そのような施しは不要です」
「施しって、お前なあ」
古城は肩を落とした。
「監視対象である先輩から、食事を恵まれる立場にはありません」
「恵むって、大げさだな。ただの朝飯だろ」
「しかし、私が先輩の手料理を食べる理由が——」
「作っちまったんだよ。一人じゃ食いきれない量を。捨てるのも勿体ないし」
古城は、雪菜の言葉を遮るように言った。
「……捨てるのは、確かに良くないです」
雪菜は、しばらく考えてから、こくりと頷いた。
「なら、いただきます。……失礼します」
雪菜は、ぎこちなく古城の部屋に足を踏み入れた。
古城の部屋は、一人暮らしの高校生らしく、きちんと片付いている。テーブルの上には、朝食の皿が並んでいた。
「先輩は、毎朝こうやって料理を?」
雪菜は、恐る恐るといった様子で椅子に座った。
「まあな。妹の弁当も作ってるし、ついでだ」
「妹さんのお弁当を……先輩が?」
雪菜は、目を少し丸くした。
「凪沙は、外の飯だとすぐに飽きるって言うからな」
古城は、雪菜の前に皿を置いた。
「ほら、冷めないうちに食えよ」
「いただきます」
雪菜は、手を合わせてから、箸を取った。卵焼きを一切れ、口に運ぶ。
もぐもぐ、と小さく咀嚼する。
「……!」
雪菜の動きが止まった。
「どうした? 口に合わなかったか?」
古城が尋ねると、雪菜は慌てて首を振った。
「い、いえ! その、おいしいです」
雪菜の声が、少しだけ弾んでいた。
「そうか。なら良かった」
古城は、ほっとしたように笑った。
雪菜は、それから無言で、しかし確かな速度で、朝食を平らげた。
「ごちそうさまでした。……先輩は、料理が上手なんですね」
「まあ、一人暮らしが長いと、自然とな」
古城は、照れくさそうに鼻の頭を掻いた。
「……私は、感心してしまいました」
雪菜は、真剣な表情で言った。
「え?」
「監視対象である先輩に、素直に感心してしまうなど、剣巫として失格です」
雪菜は、自分の発言に気づいたのか、慌てて表情を引き締めた。
「失格って、大げさだな。隣人なんだから、遠慮すんなよ」
古城は、笑いながら言った。
雪菜は、黙って俯いた。
(隣人。……そう、私は監視役。それなのに)
胸の奥に、小さな波紋が広がる。任務と私情の区別が、少しずつ曖昧になっていく。
「……先輩は、どうして私に親切にするんですか?」
雪菜は、顔を上げずに尋ねた。
「どうしてって、そりゃあ、隣だからだろ」
古城は、きょとんとした顔で答えた。
「……隣、ですか」
雪菜は、小さく繰り返した。
「そうだ。隣に住んでる奴が、朝から物音させてたら、気になるだろ」
「物音……聞こえていましたか?」
雪菜は、顔を赤くした。
「まあ、壁が薄いからな」
古城は、笑いながら、自分の朝食を食べ始めた。
雪菜は、それ以上何も言わず、黙って食器を片付け始めた。
(隣人だから。それだけの理由)
雪菜は、自分の中に生まれた小さな落胆に、気づかないふりをした。
通学路の朝は、海からの風が少し冷たい。
絃神島。東京から南へ三百三十キロ。太平洋に浮かぶ、人間と魔族が共に暮らす人工の島。人口は約十八万人。その一割が魔族登録者だ。
古城は、南学園区の住宅街を歩いていた。
「おはよう、先輩」
背後から、聞き慣れた声がした。
「おう、おはよう」
古城は振り返り、雪菜に軽く手を上げた。
雪菜は、古城の隣に並ぶ。二人の距離は、三日前より確実に縮まっていた。
「今日は、遅刻しなかったんだな」
「先輩と違って、私は毎日ちゃんと起きています」
「俺だって、今日は起きたぞ。七時二十分には」
「七時二十分は、遅刻寸前の時間です」
雪菜は、冷たい目で古城を見た。
「うるさいな。那月ちゃんに怒られなきゃいいんだよ」
「那月先生は、先輩の遅刻を心配されているんです。ちゃん付けで呼ぶのは失礼です」
「雪菜は、ほんとに真面目だなあ」
古城は、苦笑いした。
二人は、並んで通学路を歩く。すれ違う学生たちが、ちらちらと雪菜を見ていく。黒髪のボブヘアーに、真剣な眼差し。小柄で華奢な体つき。その凛とした雰囲気は、中等部の女子生徒の中でも際立っていた。
「……先輩、あれ」
雪菜が、突然、足を止めた。
「ん? どうした?」
古城も、足を止める。
雪菜の視線の先には、彩海学園の校門があった。
その校門の近くで、古城のクラスメイトである藍羽浅葱が、古城に向かって笑顔で手を振っていた。
金髪に、ターコイズブルーのピアス。腰まで届くロングヘア。派手な見た目だが、中身は純情な天才プログラマーだ。
「おーい、古城! おはよ!」
浅葱は、弾むような声で叫んだ。
「おう、浅葱。おはよう」
古城は、手を振り返した。
雪菜は、その光景を、無表情で見つめていた。
(先輩が、他の女子生徒と……)
胸の奥が、きゅっと痛む。理由は分からない。監視対象が誰と話そうと、私には関係ないはずなのに。
「……先輩、あの方は?」
雪菜は、古城に尋ねた。
「ああ、浅葱だ。俺のクラスメイトで、生徒会の会計もやってる。すげー頭のいい奴なんだぜ」
古城は、何の気なしに答えた。
「そうですか」
雪菜は、短く返した。
浅葱は、古城に駆け寄ってきた。
「ねえ古城、今日の放課後、ちょっと付き合ってくんない? 買い物行きたいんだけど」
「買い物? お前、またパソコンの部品か?」
「まあ、そんなとこ。古城の意見も聞きたいしさ」
浅葱は、古城の腕に軽く触れた。
その瞬間、雪菜は、無意識に古城との距離を詰めていた。
「先輩、そろそろ行きましょう。遅刻します」
雪菜は、古城の制服の裾を、軽く引っ張った。
「え? ああ、そうだな。浅葱、悪い、また後でな」
「あ、うん。……じゃあ、また後で」
浅葱は、少しだけ残念そうに手を振った。
雪菜は、浅葱から古城を引き離すように、歩き出した。
「おい、雪菜、そんなに急ぐなよ」
古城は、雪菜の後を追った。
「先輩が、もたもたしているからです」
雪菜は、前を向いたまま言った。
(私は、何をしているの?)
雪菜は、自分の行動に、内心で戸惑っていた。監視対象が誰と話そうと、私には関係ない。そう言い聞かせるのに、胸の痛みは消えない。
(……分からない)
雪菜は、唇を噛みしめた。
放課後。
古城は、スーパーの袋を提げて、マンションへの道を歩いていた。
(今日の夕飯は、何にしようか)
そんなことを考えながら、マンションの裏手にある非常階段の前を通りかかった時だった。
「……っ」
かすかな声が聞こえた。
古城は、足を止めた。
見上げると、非常階段の途中で、雪菜が立ち往生していた。
手すりを両手で握りしめ、真っ青な顔で、動けずにいる。
「雪菜!? お前、何してるんだ?」
古城は、声をかけた。
「せ、先輩……」
雪菜の声は、震えていた。
「もしかして、高所恐怖症か?」
古城は、雪菜の様子を見て、すぐに察した。
「ち、違います。私は、ただ、その……景色を眺めていただけで」
雪菜は、強がって言った。
「景色って、非常階段からか? 無理すんなよ。手、貸すから」
古城は、雪菜に向かって手を差し伸べた。
「結構です。自分で降りられます」
雪菜は、古城の手を拒否した。
「でも、足、震えてるぞ」
古城は、雪菜の足元を見た。
雪菜の足は、確かに、細かく震えていた。
「……これは、その、寒いからです」
雪菜は、顔を赤らめて言い訳をした。
「寒いって、今日は暖かいだろ。ほら、落ちるぞ。掴まれよ」
古城は、再び手を差し出した。
雪菜は、一瞬ためらった。
(任務対象に、弱みを見せるなんて)
剣巫として、監視役として、それは屈辱だ。
でも、足が動かない。
「……お願いします」
雪菜は、小さな声で言って、古城の手を握った。
その瞬間、雪菜の心臓が、小さく跳ねた。
(な、なに? 今の)
雪菜は、動揺した。
「ほら、ゆっくりでいいから、一段ずつ降りてこい」
古城は、雪菜の手をしっかりと握り返した。
「は、はい……」
雪菜は、古城に手を引かれながら、一段ずつ、慎重に階段を降りた。
やがて、地上に降り立つ。
「よし、到着。大丈夫だったか?」
古城は、雪菜の手を離した。
「……ありがとうございました」
雪菜は、俯いたまま、小さくお礼を言った。
「気にすんな。怖かったんだろ? 高所恐怖症なんだな」
古城は、笑いながら言った。
「だから、違います! 高所恐怖症ではありません!」
雪菜は、顔を真っ赤にして反論した。
「はいはい、違う違う。でも、無理はするなよ」
古城は、雪菜の頭を、軽くぽんぽんと叩いた。
「……っ」
雪菜は、心臓がまた跳ねるのを感じた。
(助けられた。任務対象に。それなのに、この気持ちは何?)
雪菜は、古城の顔をまともに見られなかった。
その夜。
古城の部屋のチャイムが鳴った。
「ん? 誰だ?」
古城は、玄関のドアを開けた。
そこには、エプロン姿の雪菜が立っていた。
「先輩、借りを作ったので、夕食を作らせてください」
雪菜は、真剣な表情で言った。
「借り? ああ、非常階段のか? 気にしなくていいって」
「いいえ、気にします。私は、借りを返さないと気が済まない性質です」
雪菜は、有無を言わさぬ口調で言った。
「……分かった。なら、お言葉に甘えるよ」
古城は、雪菜を部屋に招き入れた。
「お邪魔します。……台所をお借りします」
雪菜は、古城のキッチンに立った。
「何を作るんだ?」
古城は、雪菜の後ろから覗き込んだ。
「野菜炒めと、味噌汁です。……包丁はどこですか?」
「包丁なら、そこの引き出しに——」
古城が言いかけた時、雪菜は、自分のポケットから、黒い鞘に入ったコンバットナイフを取り出した。
「うおっ!? な、なんだよ、それ!」
古城は、思わず後ずさった。
「包丁です」
雪菜は、平然と答えた。
「どこが包丁だ! それ、完全に軍用ナイフだろ!」
古城は、声を荒げた。
「サバイバル訓練で、いつもこれを使っています。使いやすいんです」
雪菜は、コンバットナイフを鞘から抜いた。
刃渡り二十センチはある、無骨な刃が、蛍光灯の光を反射した。
「野菜を切るのに、そんな物騒なもん使うなよ!」
古城は、キッチンから逃げ出そうとした。
「大丈夫です。手慣れていますから」
雪菜は、そう言って、まな板の上のキャベツを、手際よく切り始めた。
ザク、ザク、ザク。
リズミカルな音が、部屋に響く。
「……お、おお?」
古城は、恐る恐るキッチンを覗き込んだ。
雪菜の包丁さばきは、意外なほど手際がよかった。
キャベツは、均等な幅に切られている。
「お前、料理、できるのか?」
古城は、驚いたように言った。
「サバイバル訓練で、一通り習いました。……これでも、女子ですから」
雪菜は、少しだけ得意げに言った。
「いや、女子とか関係なく、そのナイフは怖いだろ」
古城は、苦笑いした。
雪菜は、野菜を炒め、味噌汁を作り、手際よく夕食を完成させた。
「できました。……どうぞ」
雪菜は、テーブルに料理を並べた。
野菜炒めは、彩りが良く、味噌汁からは、出汁の良い香りがした。
「おお、うまそうだな。いただきます」
古城は、野菜炒めを一口食べた。
「……うまい。お前、ほんとに料理上手いな」
古城は、素直に感心した。
「……よかった」
雪菜は、ほっとしたように、小さく微笑んだ。
その笑顔は、古城が初めて見る、柔らかい表情だった。
(こいつ、こんな顔で笑うんだな)
古城は、少しだけ心臓が跳ねるのを感じた。
「……先輩、一つ、聞いてもいいですか?」
雪菜は、箸を置いて、古城を見た。
「ん? なんだ?」
「先輩は、どうして、私に親切にしてくれるんですか?」
雪菜は、朝にもした質問を、もう一度した。
「どうしてって、隣人だからだろ。朝も言ったじゃないか」
古城は、あっけらかんと答えた。
「……隣人、だから」
雪菜は、繰り返した。
「そうだよ。それ以外に、何があるんだ?」
古城は、笑いながら言った。
雪菜は、黙り込んだ。
(それ以外に、何があるんだ?)
古城の言葉は、何の他意もない、ただの事実だった。
でも、雪菜の胸には、言いようのない寂しさが広がった。
(私は、先輩にとって、ただの隣人)
それは、当然のことだった。
私は、先輩を監視するために派遣された、獅子王機関の見習い剣巫。
先輩は、世界最強の吸血鬼、第四真祖。
私たちの関係は、監視者と監視対象。それだけだ。
それなのに、なぜ、こんなに胸が痛むのだろう。
「……そうですね。先輩の言う通りです」
雪菜は、無理に笑顔を作った。
「雪菜? どうした?」
古城は、雪菜の異変に気づいた。
「何でもありません。……ごちそうさまでした。片付けをします」
雪菜は、立ち上がって、食器を片付け始めた。
「……先輩、今日は、本当にありがとうございました。非常階段でも、夕食でも」
雪菜は、片付けを終えると、古城に深々と頭を下げた。
「ああ。……こちらこそ、ごちそうさま。うまかった」
古城は、笑顔で言った。
「おやすみなさい、先輩」
「おう、おやすみ」
雪菜は、古城の部屋を出て、隣の自分の部屋へと戻った。
部屋のドアを閉めた瞬間、雪菜は、その場にしゃがみ込んだ。
(何なの、この気持ちは)
胸の奥が、ぎゅっと締め付けられる。
任務の建前と、自分でも名前をつけられない感情の狭間で、雪菜は初めての小さな葛藤を抱えていた。
翌朝。
雪菜は、登校前に、隣の部屋の前を通りかかった。
その時、古城の部屋のドアが開いた。
「古城、おはよ! 一緒に学校行こ!」
金髪の少女が、古城の部屋から出てきた。
藍羽浅葱。昨日、校門で古城に手を振っていた、古城のクラスメイトだ。
「浅葱!? お前、なんで俺の部屋の前に?」
古城は、驚いた声を上げた。
「近くまで来たから、ついでに寄っただけじゃん。ほら、行くよ!」
浅葱は、古城の腕を取った。
「おい、引っ張るなよ。……あ、雪菜、おはよう」
古城は、廊下に立つ雪菜に気づいて、声をかけた。
「……おはようございます、先輩」
雪菜は、小さく頭を下げた。
「え、この子、誰? 古城の知り合い?」
浅葱は、雪菜をじろじろと見た。
「ああ、隣の部屋の雪菜。中等部三年生だ。凪沙のクラスメイトでもあるんだ」
古城は、浅葱に雪菜を紹介した。
「へえ、隣の部屋!? 古城、あんた、こんな可愛い子と隣同士とか、何かあったんじゃないでしょうね?」
浅葱は、古城を睨んだ。
「何かって、何もねえよ。普通の隣人だ」
古城は、ため息をついた。
雪菜は、浅葱が古城に笑いかける姿を、黙って見つめていた。
(また、胸が痛む)
昨日、校門で見た光景と同じだ。
浅葱は、古城に楽しげに話しかけ、古城も気さくに応じている。
二人の間には、雪菜には入れない、同じクラスメイトという距離があった。
(私は、監視役。それなのに)
雪菜は、自分が監視役であることを、必死に思い出そうとした。
でも、どうしても、気持ちの整理がつかない。
「雪菜ちゃんも、一緒に学校行こうよ! ね、古城!」
浅葱は、雪菜に笑いかけた。
「……私は、大丈夫です。お先にどうぞ」
雪菜は、浅葱の申し出を断った。
「え、でも……」
「失礼します」
雪菜は、古城と浅葱に背を向けて、早足で歩き出した。
「おい、雪菜! どうしたんだよ?」
古城の声が、背後から聞こえた。
雪菜は、振り返らなかった。
(先輩の隣にいるのは、あの人が似合う)
雪菜は、唇を噛みしめた。
浅葱の存在と、自分の感情の間に、まだ名前のない小さな棘を抱えたまま、雪菜はその場を後にした。
胸の痛みは、朝の光の中でも、消えることはなかった。Noveliaとは?
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