この素晴らしい世界に祝福を! if カズマが復讐のダークヒーローになるルート
冒険者サトウ・カズマは、パーティーメンバーのアクア、めぐみん、ダクネスと共に魔王軍幹部ベルディアと戦っていた。
しかし最終決戦直前、アクアの失態により作戦が敵に漏洩。ついにカズマはブチ切れ、「お前ら、最低だ!」と叫び、パーティーを追放し、一人で戦うことを決意する。
「もう二度と誰も信じない」
その誓いと共に、カズマは闇ギルド『シャドウストーカー』に加入。そこで出会ったのは、かつてアクアに騙された元女神の闇神官マリア。彼女から、怒りと恨みを力に変える禁断スキル『怨念武装』を教わる。
カズマは怒りを武器に変え、ベルディアを一撃で撃破。しかしその姿は、もはや英雄のそれではなかった。
一方、アクアたちはカズマの本当の大切さに気づく。ダクネスは「私が彼を連れ戻す!」と宣言し、めぐみんは「私の爆裂魔法だけが彼を救える!」と誓い、アクアは……おにぎりを食べながら泣いていた。
カズマは魔王軍幹部を次々と倒し、ついに単身魔王城へ突入する。待ち受ける魔王は言う。「お前の本当の敵は俺ではない。お前自身の憎しみだ」
その言葉に、カズマは気づく。自分はただ、アクアたちに「ごめん」と言いたかっただけ
この素晴らしい世界に祝福を! if カズマが復讐のダークヒーローになるルート - 暴走の果て ― 粉砕された絆と震える手
ヴェルトラン山脈の麓は、音が死んでいた。
風も、鳥の声も、何もかもが押し殺されたように静かで、ただひたすらに冷たい空気だけが肌を刺す。
「来たか、冒険者」
そいつはそこに立っていた。全身を覆う漆黒の鎧——凍呪の鎧。周囲の空気を凍らせ、地面に霜を走らせる。小脇に抱えた自分の首が、ぎょろりと俺を見た。
「首なし騎士ベルディア……魔王軍の幹部だな」
声は震えていなかった。それが、少しだけ自分でも意外だった。
右手の甲が、どくん、どくんと脈打っている。マリアに刻まれた呪印の刻印が、熱を持って疼いていた。頭の奥であの声が響く——もっと憎め。
(アクア……)
心の中で、その名前を呼んだ。途端に、刻印がずきりと痛む。頭の中に、あのヘラヘラした笑顔が浮かんだ。『えへへ、ごめ~ん』。五万エリスを川に落とした。酔った勢いで作戦を全部バラした。三十万エリスの借金。
(めぐみん……)
さらに刻印が輝きを増す。『我が名はめぐみん!』毎日毎日爆裂魔法ぶっ放して、動けなくなって、俺が背負って帰る。何度言ってもやめない。街灯をいくつ吹き飛ばしたかわからない。
(ダクネス……)
『もっと……もっと罵ってくれ……!』戦いのたびにわざと攻撃を受けて、鎧を毎回ダメにした。変態。ドM。でも、俺がピンチの時は、いつも盾になってくれた——
「——ふざけんなよ」
声が、低くなる。自分でもわかるくらい、冷たい声だった。
「お前らは、俺の信頼をなんだと思ってたんだ……!」
右手を前に突き出す。
【怨念武器化】
ブワッ——!!
全身から、どす黒いオーラが噴き出した。それは渦を巻きながら俺の右手に集まり、一本の長剣の形を取る。黒く、禍々しく、宙を震える刃。
「…………ほぅ」
ベルディアの目が、わずかに見開かれた。
「その力、ただの怒りではないな。もっと深い……嘆きと、恨みだ」
「うるせえ!」
地面を蹴った。
一瞬で距離を詰める。風を切る音すら置き去りにして、黒い刃を振り下ろした。
「お前からだ、ベルディア——!」
ガキイイイイイイイイイイイイン!!!
衝撃。
凍呪の鎧が、一撃で粉々に砕け散った。漆黒の破片が、スローモーションのように宙を舞う。ベルディアの胴体が、袈裟斬りに両断される。
「——ぐ、ぅ……!」
断末魔。
だが——それだけでは終わらなかった。
剣を振り抜いた瞬間、地面が爆ぜた。
ズドォォォォォォォオン!!!
怨念の刃から放たれた衝撃波が、周囲の岩壁をえぐり、地面を裂き、大気そのものを震わせた。轟音。閃光。砂塵が舞い上がり、視界が奪われる。
「これが……この力が、俺の……」
右手が震える。
刻印が、かつてないほど激しく脈打っている。頭の中の声が、大きくなる——そうだ、これでいい。お前は正しい。憎め。もっと憎め。
「……見事だ」
崩れ落ちながら、ベルディアが言った。
「だが、その力は……いずれお前自身を喰らうぞ。憎しみは、刃と同じだ。振るえば振るうほど、お前の手もまた……切り裂かれる」
「うるせえって言ってんだろ!」
叫んだ。
でも——心のどこかで、その言葉が引っかかっていた。
(俺自身を、喰らう……?)
刹那。
「——カズマァァァァァァ!!」
背後から、声がした。
振り返る。
山道を全力で駆け上がってくる小さな影。腰まである長い黒髪が風になびき、深紅の目がまっすぐに俺を見つめている。
「め……ぐみん……?」
なんで、ここに——。
「我が爆裂魔法の素晴らしさを、まだ語り尽くしていないのだ!」
息を切らせながら、彼女は叫んだ。
「お前が、いなくては——我の、爆裂魔法は——」
その時。
さっきの一撃で崩れた岩壁が、ゆっくりと、めぐみんの頭上に傾いでいた。
「——っ!!」
とっさに剣を振るう。
でも——遅かった。
というより、この剣は——俺の怒りは——もう、制御できなかった。
ゴオオオオオオオオオン!!!
剣を振った瞬間、発生した爆風が、岩も、砂塵も、めぐみんの小さな体も、すべてを吹き飛ばした。
「————ぁ」
めぐみんの体が、十数メートルも宙を舞う。
そして——
ドシャアッ!!
岩肌に、叩きつけられた。
「……え?」
頭が、真っ白になった。
剣が、手から落ちる。黒い霧となって消えた。
「め、めぐみん……?」
駆け寄った。
彼女は、岩の上にぐったりと横たわっていた。左腕が、おかしな方向に曲がっている。胸の辺りも、呼吸をするたびに変な音がしている。肋骨が折れているんだ。そして——こめかみから、赤いものが、とめどなく流れている。
「おい……おい、冗談だろ……」
震える手で、彼女の小さな肩に触れた。
めぐみんの瞼が、かすかに開く。
「……カズ……マ」
血の混じった声だった。
「我が……爆裂魔法を……カズマに、まだ…………」
言葉は、そこで途切れた。
深紅の目から、光が消える。
「……めぐみん……?」
揺さぶった。
返事はない。
「おい、めぐみん!おい!!」
もう一度、強く揺さぶる。でも、彼女の首は、がくんと揺れるだけだ。糸が切れた人形みたいに。
「——俺が、やったのか……?」
自分の手を見下ろした。
右手の甲の刻印が、どす黒く、ぐちゃぐちゃに光っている。まるで笑っているみたいだった。
「俺が……めぐみんを……」
声が、震える。
体が、震える。
頭の中で、声が響いた。
——そうだ、お前がやった。
(ちがう……俺は、守りたかった……)
——守る?笑わせるな。お前は怒りに任せて剣を振るった。
(ちがう……ちがうんだ……!)
——同じだ。怒りも、守りたいという想いも、お前の力は破壊しか生まない。
「——うるせえええええええ!!」
頭を抱えて、叫んだ。
でも、声は止まらない。
頭の中で、ぐるぐると、自分じゃない誰かの声が木霊する。右手の刻印が、痛い。熱い。燃えるみたいに、痛い。
「あ……ああ……」
膝から崩れ落ちた。
岩に額をこすりつけて、ただ震えることしかできない。
「——ふふ」
闇の中から、笑い声がした。
薄紫色の長い髪。金色の冷たい目。いつもの薄ら笑いを浮かべて、マリアがゆっくりと歩み寄ってくる。
「いいわ……いい目だわ、カズマ」
彼女は、震える俺の前にしゃがみ込んだ。
「苦しい?悲しい?自分を責めてる?」
「ま……リア……」
「だったら——もっと憎みなさい」
彼女の冷たい指が、俺の右手の刻印に触れた。
「アクアを憎みなさい。彼女がドジをしなければ、あなたはここにいなかった。めぐみんを憎みなさい。彼女が追いかけて来なければ、あなたの手で傷つくこともなかった。ダクネスを憎みなさい。何もできなかった役立たずのクルセイダーを」
「ちが……う……」
「違わないわ。あなたをここに追いやったのは、あなたの怒り。そして——それを生んだのは、あの最低な仲間たち」
彼女の声は、優しかった。
でも、その優しさが、余計に怖い。
「憎しみだけが、あなたを強くする。怒りだけが、本当の力になる。さあ——立ちなさい、カズマ」
「——————」
何も、言えなかった。
刻印が、もっと強く輝く。頭の中の声が、マリアの声と重なって、一つの大きなうねりになる。
——憎め。
——もっと憎め。
——殺せ。
「……はは」
気がつくと、笑っていた。
泣いているのか、笑っているのか、自分でもわからない。ただ、どす黒い感情が体の底から込み上げてきて、それが笑いの形になって漏れ出していた。
「ふふ……そうよ。それでいいの」
マリアは、立ち上がった。
「次は、魔王城よ。あなたの怒りの、本当の意味を確かめに行きましょう」
彼女は、それだけ言うと、闇の中に消えていった。
後に残されたのは——震える俺と、血を流して倒れているめぐみんだけ。
「……………」
時間が、どれだけ経ったのかわからない。
やがて。
「——めぐみん!!」
遠くから、声がした。
「カズマ!!どこなんだ、カズマ!!」
二人が、斜面を駆け上がってくる。
アクアの透き通る水色の髪が乱れ、ダクネスのブロンドのポニーテールが揺れている。二人とも、服は汚れて、息は切れ切れだ。
「あっ……め、めぐみん……!?」
アクアが、倒れためぐみんを見つけて、顔を青ざめさせた。
「なんで……なんでこんなことに……!?」
「ち、治療を——」
ダクネスが、アクアの背中を押した。アクアは慌ててめぐみんに駆け寄り、両手をかざす。
「今、今治すからね、めぐみん!」
彼女の手のひらが、青白く輝いた。治癒魔法だ。
でも——
バチッ!!
「きゃあっ!?」
俺の体から溢れ出る黒いオーラが、アクアの魔法を弾き飛ばした。
「な、なに……これ……」
彼女の大きな青い目が、俺に向けられる。
「カズ……マ……?」
俺は——ただ、震えていることしかできなかった。
「俺が……俺が、めぐみんを……」
声が、蚊の鳴くようにしか出ない。
「カズマ……お前……」
ダクネスが、一歩、俺に近づこうとした。
でも——
彼女の足が、止まる。
俺の顔を見たからだ。
涙でぐしゃぐしゃで、それでも、右手からはどす黒いオーラが溢れ出ていて——笑っているのか、泣いているのか、自分でもわからない顔をしているからだ。
「カズマ……!」
アクアが、泣きながら俺の名前を叫んだ。
「お願い、カズマ!もとに戻って!私たちのところに戻ってきてよぉ!!」
「…………………」
俺は——立ち上がった。
ふらふらと、おぼつかない足取りで。
「……ごめん」
それだけ言って、背を向ける。
「待って!!カズマ、待ってよぉ!!」
「どこへ行くつもりだ、カズマ!?」
二人の声が、背中に突き刺さる。
でも——振り返れなかった。
振り返ったら、もう——自分が、自分でなくなりそうだったから。
「俺は……もう、戻れない」
右手の刻印を、ぎゅっと握りしめる。
痛い。でも、この痛みだけが、俺がまだ生きてる証拠だった。
マリアの言葉が、頭の中で響く。
——憎しみだけが、本当の力よ。
「…………そうだな」
呟いて、一歩、踏み出した。
「カズマぁぁぁぁぁ!!」
アクアの絶叫が、山脈にこだまする。
でも、俺はもう——振り返らなかった。
闇の中へ。
もっと深い、闇の中へ。
アクアとダクネスは、重傷のめぐみんを抱えて、俺を追うこともできずに、ただ立ち尽くしていた。
俺の右手からは、黒いオーラがいつまでも消えずに、闇をじりじりと焼いていた。Noveliaとは?
Noveliaは、AIでライトノベルや二次創作を「読んで・数タップで作って・キャラクターと会話できる」プラットフォームです。挿絵つきの新作が毎日届き、無料で始められます。