この素晴らしい世界に祝福を! if カズマが復讐のダークヒーローになるルート
冒険者サトウ・カズマは、パーティーメンバーのアクア、めぐみん、ダクネスと共に魔王軍幹部ベルディアと戦っていた。
しかし最終決戦直前、アクアの失態により作戦が敵に漏洩。ついにカズマはブチ切れ、「お前ら、最低だ!」と叫び、パーティーを追放し、一人で戦うことを決意する。
「もう二度と誰も信じない」
その誓いと共に、カズマは闇ギルド『シャドウストーカー』に加入。そこで出会ったのは、かつてアクアに騙された元女神の闇神官マリア。彼女から、怒りと恨みを力に変える禁断スキル『怨念武装』を教わる。
カズマは怒りを武器に変え、ベルディアを一撃で撃破。しかしその姿は、もはや英雄のそれではなかった。
一方、アクアたちはカズマの本当の大切さに気づく。ダクネスは「私が彼を連れ戻す!」と宣言し、めぐみんは「私の爆裂魔法だけが彼を救える!」と誓い、アクアは……おにぎりを食べながら泣いていた。
カズマは魔王軍幹部を次々と倒し、ついに単身魔王城へ突入する。待ち受ける魔王は言う。「お前の本当の敵は俺ではない。お前自身の憎しみだ」
その言葉に、カズマは気づく。自分はただ、アクアたちに「ごめん」と言いたかっただけ
この素晴らしい世界に祝福を! if カズマが復讐のダークヒーローになるルート - 魔王の玉座 ― 憎しみが喰らう俺と、本当の敵
地下水路の隠し部屋は、あの日と同じ匂いだった。
カビと土と、もっと深いもの——たぶん、血と憎しみの匂いだ。
右手の甲が、どくん、どくんと脈打っている。
マリアに刻まれた呪印の刻印が、疼いてる。
「……俺は、めぐみんを」
声が震えた。
膝が、ガクガクしてる。
目の奥に焼きついて離れない——あの小さな体が、岩肌に叩きつけられる瞬間。左腕がおかしな方向に曲がって、こめかみから血が流れて、深紅の目から光が消えて——
「自分の手で大切な仲間を傷つけた」
マリアの声は冷たかった。
薄紫色の長い髪が、片側だけ編み込まれて、ゆらりと揺れる。金色の目は、いつもの薄ら笑いを浮かべて、俺を見下ろしている。
「それで?お前はこれからどうするつもり?」
「…………」
「謝りに行く?『ごめん、君を殺しかけた』って?ふふ……笑わせるわ」
彼女はしゃがみ込んで、俺と同じ目線になった。
冷たい指が、俺の右手の刻印に触れる。
「いい?カズマ。あなたに残された道は、一つだけよ」
「…………」
「もっと憎みなさい。アクアを。めぐみんを。ダクネスを。あなたをここまで追い詰めた最低な女たちを」
「やめろ——」
「やめないわ。あなたの優しさが、あなたを弱くした。憎しみだけが、あなたを強くする」
頭の中で、声が響く。
——憎め。
——もっと憎め。
——殺せ。
右手の刻印が、ぐちゃぐちゃに輝く。
「魔王を倒しなさい。全ての答えは、魔王城にある」
「魔王……城……」
「そうよ。ヴォルガーナ城塞——エルディナ大陸最南端の、断末岬に建つ魔王の居城。そこに行けば、あなたの怒りの本当の意味がわかるわ」
マリアは立ち上がった。
「私は、ここで見ているわ。あなたが——どこまで堕ちるのかを」
彼女はそれだけ言うと、闇の中に消えた。
——どこまで堕ちるのか、か。
「……はは」
笑えてきた。
もう、どこまでも堕ちてるよ。
俺はふらふらと立ち上がる。
右手の刻印が、疼く。
でも——もう、この痛みだけが、俺がまだ生きてる証拠だった。
地下から地上に出る。
商業地区の枯れ井戸の底から外に出ると、空はどんよりと曇っていた。
アクセルの街は、いつもの雑踏。
商人の呼び声、馬車の車輪の音、どこかから聞こえる子供の笑い声。
でも——全部が、遠い世界のことに感じた。
(ここには、もう戻れない)
南門を抜ける。
草原の道を、一人で歩く。
600キロ。
アクセルから魔王城まで、南へまっすぐ600キロだ。
ヴェルトラン山脈を越えて、魔族領域を突っ切って、最南端の断末岬まで。
(何日かかるんだ、これ)
でも——歩くしかなかった。
歩きながら、考えることをやめた。
考えたら——たぶん、壊れるから。
数日が過ぎた。
ヴェルトラン関門砦を抜ける時、門番の兵士が俺を見て、顔を青ざめさせた。
「あ、あんた……一人で魔族領域に行くのか?」
俺は何も答えずに、通り過ぎた。
魔族領域は、荒れ果てていた。
灰色の大地。枯れた木々。空気は重くて、喉がひりつく。
時々、モンスターが襲ってきた。
デッドリーポイズンスライム。ワイバーンの群れ。スケルトンナイトの軍勢。
でも——全部、一撃だった。
右手から溢れる黒いオーラが、獲物を捉える。
「邪魔だ」
その一言で、敵は吹き飛んだ。
(強いな、俺)
いや——この力は、俺じゃない。
憎しみが、俺を動かしてる。
それでいい。
もう、それでいいんだ。
やがて、見えてきた。
ヴォルガーナ城塞。
断末岬の先端に建つ、巨大な黒石の城。
全高120メートル。敷地面積2平方キロメートル。
魔王が800年かけて築いた、絶対の居城。
城の周囲は、紫色の瘴気に覆われている。
息をするだけで、肺が焼けるみたいだ。
でも——右手の刻印が、その瘴気を吸収していく。
黒く、深く、もっと強く。
(この力なら——行ける)
城門をくぐる。
中は、暗かった。
紫色の燐光が壁に揺れて、不気味な影を作っている。
廊下は長く、曲がりくねっていて、あちこちに罠が仕掛けられていた。
毒矢。落とし穴。呪いの結界。
全部、怨念の刃で破壊した。
第一層。第二層。第三層——
幹部クラスの守護者が次々と現れる。
でも——誰も、俺を止められなかった。
一閃。
それが終わると、敵は塵になっている。
「……次は」
声が、自分じゃないみたいに冷たい。
第四層。第五層。第六層——
瘴気が、濃くなる。
体が、重い。
呼吸が、苦しい。
でも——右手の刻印が、もっと疼く。
もっと力を寄越せと、叫んでる。
(わかってるよ)
第七層。
最上階。玉座の間。
巨大な黒い扉を、怨念の刃でぶち破った。
ギイイイイイイイイ——
扉が開く。
中は——静かだった。
広い。
サッカー場くらいありそうな大広間。
壁一面に、紫色の魔法陣が浮かんでいる。
天井は高く、闇に吸い込まれそうだ。
そして——奥に、玉座があった。
黒く、巨大な石の椅子。
そこに——座っている。
黒髪の青年。
20代半ばに見える。
なめらかな黒髪が額にかかって、深い紫色の目が、静かに俺を見つめている。
服装はシンプルな黒衣。装飾品は何もない。
でも——その存在感だけで、空気が重くなる。
「来たか、人間の冒険者よ」
声は、低く、静かだった。
「魔王——だな」
右手を前に突き出す。
ブワッ——!!
全身から、どす黒いオーラが噴き出した。
それは渦を巻きながら右手に集まり、一本の長剣の形を取る。
黒く、禍々しく、宙を震える怨念の刃。
「お前を倒す。そして——この憎しみに、答えを出す」
「そうか」
魔王は、立ち上がった。
でも——剣は抜かない。
構えもしない。
ただ、静かに俺を見つめている。
「だが、一つ聞かせてくれ。お前のその憎しみは——本当に、俺に向けられたものなのか?」
「……なに?」
「お前が憎んでいるのは、誰だ?俺か?それとも——お前の仲間たちか?」
どくん。
刻印が、疼く。
「……うるせえ」
「お前の中に、二人の自分がいる。一人は、仲間を憎む自分。もう一人は——仲間に『ごめん』と言いたい自分だ」
「黙れ!!」
叫んだ。
剣を振りかぶる。
でも——足が、動かない。
「なぜ黙る?お前の本当の敵は、俺じゃない。お前自身が作り出した憎しみの檻だ。お前は——ただ寂しかっただけじゃないのか?」
「…………」
声が、出ない。
頭の中で、アクアの顔が浮かぶ。
めぐみんの顔が浮かぶ。
ダクネスの顔が浮かぶ。
『カズマぁぁぁぁぁ!!』
アクアの絶叫が、耳の奥で木霊する。
「お前は、アクアたちに、本当は何を伝えたかったんだ?」
魔王の声は、優しかった。
それが——逆に、怖い。
「…………ごめん」
気がつくと、口が動いていた。
「ごめん……って、言いたかっただけなんだ……」
声が、震える。
「俺は——あいつらを、信じたかった。でも、信じるのが怖かった。だから、憎しみで——自分を守ろうとした」
剣を持つ手が、震える。
「でも——もう、遅いんだよ!!俺は、めぐみんを——自分の手で——」
「それが、お前の選んだ道か」
魔王は、静かに言った。
「憎しみで自分を守り、その憎しみが大切なものを傷つけた。ならば、その先にあるものは——」
その時。
右手の刻印が——爆ぜた。
「——ぐっ、ぁ……!!」
痛み。
今まで感じたことのない、強烈な痛み。
刻印が、脈打つ。どくんどくんと、心臓とは違うリズムで。
全身から、黒いオーラが制御不能に噴き出す。
腕から。足から。胸から。目から。口から——。
「な、にが——」
血の味がした。
口の中が、鉄の味でいっぱいになる。
げほっ、と咳き込むと、黒い血が床に飛び散った。
「怨念武器化の暴走か」
魔王は、攻撃してこない。
ただ、悲しげな目で、俺を見ている。
「敵を憎み、仲間を憎み、最後には自分を憎む。それがその力の本質だ。憎しみの刃は、いつか必ず——お前自身を喰らう」
「あ……あああ……!!」
皮膚が、ひび割れる。
右腕の表面から、ぱきぱきと音を立てて、ひびが入っていく。
その割れ目から、黒いオーラが噴き出して——
「やめろ……やめてくれ……!!」
叫ぶ。
でも——止まらない。
頭の中で、声が響く。
——憎め。
——もっと憎め。
——殺せ。殺せ。殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ——
「うるせええええええええ!!!」
両耳を塞ぐ。
でも——声は、頭の内側から直接響いてくる。
逃げられない。
自分の手を見る。
右手のひび割れが、腕全体に広がっている。
指先から、血がぽたぽたと落ちる。
(俺は——どうなるんだ)
膝から崩れ落ちた。
剣が、手から離れる。
黒い霧となって消えた。
でも——オーラは止まらない。
全身を蝕んで、内側から破壊していく。
「もう……嫌だ……」
涙が、溢れた。
床に倒れ込む。
冷たい石の感触。
目の前が、ぼやける。
意識が、遠のいていく——。
——遠くの物陰で。
マリアは、震えていた。
両手を口に当てて、金色の目を見開いて、カズマの姿を見つめている。
「……あ」
声が、漏れた。
彼女の手の中で、自分が刻んだのと同じ呪印が、ぐちゃぐちゃに輝いている。
「私が……間違っていたの……?」
いつもの薄ら笑いは、消えていた。
彼女の顔に浮かんでいるのは——動揺。そして、後悔。
「あの時、アクアに騙されて……憎しみだけが、私を生かしてきた……でも……でも……」
カズマの姿が、かつての自分と重なる。
憎しみに身を委ね、力に溺れ、最後には——自分自身を壊していく。
「カズマ……」
彼女の声は、震えていた。
玉座の間では——カズマが、倒れている。
意識は、混濁していた。
頭の中で、断片的な映像が流れる。
——アクアの泣き顔。
『カズマがいないと、私また引きこもり女神に逆戻りだよ!』
——めぐみんの笑顔。
『まだ私の爆裂魔法の素晴らしさを語り尽くしていない!』
——ダクネスの心配そうな顔。
『私が彼を連れ戻す!』
——三人と過ごした、バカみたいな日々。
借金まみれの貧乏生活。
クエストのたびにドジを踏むアクア。
爆裂魔法ぶっ放して動けなくなるめぐみん。
恥辱妄想で息が荒くなるダクネス。
それに、毎回ツッコミを入れる俺。
(ああ……)
(楽しかったな)
涙が、こめかみを伝って、床に落ちる。
「みんな……ごめん……」
かすれた声で、呟いた。
「ごめん……ごめんな……」
黒いオーラが、全身を覆い尽くしていく。
視界が、闇に閉ざされる——。
——その時。
ドォォォォォォォォォォォォン!!!!
遠くから、轟音が響いた。
城全体が、揺れる。
「……来たか」
魔王が、静かに微笑んだ。
「どうやら、お前の本当の仲間たちは——お前を諦めていないようだな」
天井から、砂埃が落ちてくる。
遠くから、聞き覚えのある声が響く。
『カズマー!ちょっとカズマどこー!?』
アクアだ。
『この城迷路みたいで迷ったんだけどー!』
『お前が先頭に立つなと言っただろうがー!』
ダクネスだ。
『我が爆裂魔法で壁を破壊するしかないな』
『やめろー!』
めぐみん——!?
(めぐみん……生きて……)
カズマの指が、かすかに動いた。
「……あいつら」
本当に、バカだな。
でも——そのバカさが、今は、温かかった。
魔王は、玉座に座り直した。
「あの女神——アクアは、相変わらずドジばかりしているのか?」
呆れたように、でもどこか面白そうに、彼は言った。
「お前には、まだやるべきことがある。憎しみに喰われる前に——お前を本当に救うものを見つけることだ」
遠くから、足音が近づいてくる。
三人の影——。
カズマの目から、涙が止まらなかった。
けど——その涙は、もう絶望のものじゃなかった。Noveliaとは?
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