この素晴らしい世界に祝福を! if カズマが復讐のダークヒーローになるルート
冒険者サトウ・カズマは、パーティーメンバーのアクア、めぐみん、ダクネスと共に魔王軍幹部ベルディアと戦っていた。
しかし最終決戦直前、アクアの失態により作戦が敵に漏洩。ついにカズマはブチ切れ、「お前ら、最低だ!」と叫び、パーティーを追放し、一人で戦うことを決意する。
「もう二度と誰も信じない」
その誓いと共に、カズマは闇ギルド『シャドウストーカー』に加入。そこで出会ったのは、かつてアクアに騙された元女神の闇神官マリア。彼女から、怒りと恨みを力に変える禁断スキル『怨念武装』を教わる。
カズマは怒りを武器に変え、ベルディアを一撃で撃破。しかしその姿は、もはや英雄のそれではなかった。
一方、アクアたちはカズマの本当の大切さに気づく。ダクネスは「私が彼を連れ戻す!」と宣言し、めぐみんは「私の爆裂魔法だけが彼を救える!」と誓い、アクアは……おにぎりを食べながら泣いていた。
カズマは魔王軍幹部を次々と倒し、ついに単身魔王城へ突入する。待ち受ける魔王は言う。「お前の本当の敵は俺ではない。お前自身の憎しみだ」
その言葉に、カズマは気づく。自分はただ、アクアたちに「ごめん」と言いたかっただけ
この素晴らしい世界に祝福を! if カズマが復讐のダークヒーローになるルート - 絆の逆襲 ― ダメ女神と変態騎士と爆裂バカの命がけ救出
ズドォォォォォン!!
魔王城ヴォルガーナ城塞の巨大な黒門が、耳をつんざく轟音を立てて粉々に砕け散った。
漆黒の破片が、スローモーションのように玉座の間の空気を裂いて飛び散る。舞う砂煙の中、肩から体当たりを決めた女騎士が一人、傷だらけの笑みを浮かべて立っていた。
「はぁ……はぁ……! いい……音だ……!」
腰まであるブロンドのポニーテールは乱れ、高価なはずの騎士鎧は無残にへこみ、肩口からは血がにじんでいる。しかし、その青い目は恍惚と潤んでいた。
「ああ……うっ……すごい衝撃だった……肩の骨が、多分二、三本イってる……これだ、これを味わいたかった……!」
「誰かこの変態を止めなさいよー!」
背中から聞こえる金切り声。透き通る水色のポニーテールを揺らし、背中に小柄な少女を背負った女神が、涙目で叫んだ。
「背負ってるのは瀕死のめぐみんなんだからね!? 気をつけてよ! もう!」
「も、申し訳ない……つい、いつもの癖で……」
ダクネスはバツが悪そうにうつむいた。
「……っ」
アクアの背中で、めぐみんが小さく呻く。パッツンと切りそろえられた黒髪は血と埃で汚れ、深紅の目は今にも閉じそうだった。全身の骨がバラバラになりそうなほどの重傷を負っている。
でも——それでも。
「……カズマ……は……?」
かすれた声で、それだけを問うためぐみんに、アクアは涙ぐんだ。
「今から助けに行くんだよ! ちょっとカズマどこー!?」
アクアは玉座の間の広大な闇に向かって叫んだ。
部屋は、紫色の瘴気で満たされていた。呼吸をするだけで肺が焼ける。足元の黒石の床は、まるで生きているかのように微かに脈打っていた。
「こっちだ! 気配が……強くなっている!」
ダクネスが盾を構え、廊下の奥を指さす。
三人は走った。
壁に揺れる不気味な燐光。足音だけが異様に響く長い廊下。アクアは何度も転びそうになり、そのたびに背中のめぐみんが苦しそうな息を漏らす。
「ご、ごめんねめぐみん! 今度こそちゃんと走るから!」
「……アクアは、昔から……マラソン大会もビリだったのを思い出すぞ……」
「そうだったっけ……?」
「違う! あれはアクアが給水所でおにぎり食い始めたからだ!」
「今それどーでもいいでしょー!?」
アクアは叫んだ。
でも——そのバカみたいなやりとりが、少しだけ三人の心を軽くしていた。
「——いた」
突然、アクアの足が止まった。
大きな青い目が見開かれる。
「女神の勘が……アイツの居場所を告げてる……」
廊下の先。
ひときわ大きな両開きの扉。そこから漏れ出る闇が、他のどこよりも深く、濃く、まるで生き物のように渦巻いていた。
「玉座の間……!」
三人は、迷わずその扉をくぐった。
——そして。
「……カズマ!」
絶望の光景が広がっていた。
広大な玉座の間の中央。
黒いオーラに全身を包まれ、倒れている一人の少年。
寝ぐせのついた黒髪。普段は呆れた時のジト目が特徴の深い茶色の目は——今は、虚ろに見開かれている。
右手の甲の呪印の刻印が、ドス黒く、グチャグチャに脈打っていた。
黒いオーラが、少年の全身を覆い、ひび割れた皮膚の隙間からさらに噴き出している。
「カズマ! カズマ!」
アクアは背中のめぐみんをダクネスに預け、転がるようにカズマに駆け寄った。
「すぐに治すから! 私が、最高の女神が直々に治してあげるんだからね!」
両手をかざす。
青白い光が、カズマの全身を包み込む——治癒魔法、セイクリッド・ヒール。
「くっ……!」
アクアの額に汗が浮かぶ。全力の魔力を込めているのがわかる。
カズマのひび割れた皮膚が、少しずつ塞がっていく。
出血が、止まる。
「……効いてる!」
アクアの顔に、かすかな希望が浮かんだ——その瞬間。
バチィィィィッ!!!
「きゃああああっ!?」
黒いオーラが爆発した。
治癒の光を弾き飛ばし、アクアの体を壁まで吹き飛ばす。
ドゴッ!!
「がはっ……!」
壁に背中から叩きつけられ、アクアの口から血が飛び散った。
「う……うぅ……」
「アクア!」
ダクネスが叫ぶ。
でも、アクアは倒れたまま——泣き出した。
「カズマ……ごめん……ごめんよぉ……!」
床にへたり込み、涙と鼻水でぐしゃぐしゃの顔で、彼女は叫んだ。
「私がバカだった! 私が全部ドジったから! 作戦を敵にバラしちゃったのも、五万エリスを川に落としたのも、酒場で酔っ払って秘密をペラペラ喋ったのも、私なんだよぉ!」
両手で床を叩く。
「カズマが怒るのも当然だよ! 私、自分が最高の女神だってずっと思ってたけど——でも、でもね、カズマがいなくなって初めてわかったの! 私、カズマに頼ってばっかりの、ダメダメ女神だったんだって……!」
涙が、石の床に染み込んでいく。
「うぅ……ひっく……だから、だからお願いだよカズマ……戻ってきてよぉ……!」
その声に——カズマの指が、かすかに動いた。
でも。
次の瞬間。
「——ぁ」
カズマを包む黒いオーラから、無数の黒い刃が放たれた。
憎しみの結晶。
それは真っ直ぐに、床に座り込んだアクアへと殺到する。
「ひっ……!」
アクアはとっさに目を閉じた。
——ガキィィン!!
「……っぐ!!」
アクアの前に、大盾を構えたダクネスが立ちはだかっていた。
黒い刃が、盾を砕く。
だが——ダクネスは退かない。
二撃目が、彼女の左肩を切り裂いた。
血が、舞う。
「ああっ……!」
それでも。
「カズマ!! 私を……私でよければ、いくらでも殴ってくれ!!」
三撃目が、彼女の脇腹をえぐる。
鎧がへこみ、肉が裂ける音。
「——っ! はぁ、はぁ……いい……もっとだ……!」
四撃目が、彼女の太ももを貫いた。
膝が、ガクンと落ちる。
それでも。
「もっと、もっと私を痛めつけてくれ……! でも——」
ダクネスは、涙を流しながら、笑っていた。
「もう、逃げないでくれ!! 私たちを見捨てないでくれ、カズマ!!」
ドスッ。
五撃目が、彼女の右胸のすぐ下を刺す。
血が、床に大きな染みを作っていく。
でも——まだ。
彼女の青い目は、カズマを真っ直ぐに見つめていた。
「お前が……お前がいないと……私は、ただの変態だ……ただの、役立たずのドM騎士だ……! でも! お前が、お前が仲間でいてくれたから——私は、誰かの盾になれたんだ!!」
その言葉が、カズマの心に届いたのか。
黒いオーラが、一瞬、揺らいだ。
でも——それだけだった。
さらに無数の刃が生成され、今にもダクネスを八つ裂きにしようとしている。
「ダ、ダクネス……逃げて……!」
壁際でアクアが叫ぶ。
でもダクネスは動かない。
——その時。
「……我が爆裂魔法の、素晴らしさを……」
か細い声が、聞こえた。
ダクネスの背中から、めぐみんが、ゆっくりと降りる。
「め、めぐみん!? 何を——体がもたないぞ!」
血まみれのダクネスが振り返る。
めぐみんは、震える脚で立ち上がった。
折れた左腕はだらりと垂れ下がり、こめかみからはまだ血が流れている。息をするたびに、胸の折れた骨が軋む音がする。
それでも。
「まだ……カズマに……語っていない……」
深紅の目が、カズマを見つめる。
「我が爆裂魔法は、ただの破壊の魔法ではないのだ……」
めぐみんは、杖を構えた。
魔力は、とっくに底をついている。
でも——それでも。
「爆裂魔法は……我が魂の輝きなのだ! それを、なぜ毎日撃つのか……なぜそれが我の生きる意味なのか……それを、カズマに——お前に、まだちゃんと話していないのだ!!」
彼女は、力の限り叫んだ。
「ダクネス! もっとカズマの注意を引くのだ!」
その声に、ダクネスの目が輝いた。
「……わかった」
ダクネスは、ゆっくりと立ち上がる。
全身から血を流しながら。
それでも。
「カズマ!! 私を殴れ!! 愛しているからこそ、私を殴ってくれ!!」
——叫んだ瞬間。
あらゆる黒い刃が、ダクネス一人に向かって殺到した。
ガガガガガガガガガッ!!!
「あああああああっ!!」
盾は砕け、鎧は引き裂かれ、全身が血で染まる。
でも——それでもダクネスは、笑っていた。
その一瞬の隙に。
めぐみんは、一歩、踏み出した。
足が、震える。
折れた骨が、ギシギシと音を立てる。
でも。
彼女は、構えた杖を、カズマを包む黒いオーラに向けた。
「エクスプロージョン!!」
最後の魔力。
魂を削って放つ、一撃。
——瞬間。
世界が、白く塗りつぶされた。
ズドォォォォォォォォォォォォオオオオオオオン!!!
玉座の間全体を揺るがす、灼熱の爆発。
爆風が、全てを吹き飛ばす。
黒いオーラが、悲鳴のように渦を巻き、そして——霧散した。
「——ぁ」
轟音の後。
静寂が訪れた。
カズマを包んでいた黒いオーラは、跡形もなく消え去っている。
カズマの深い茶色の目が——ゆっくりと、焦点を取り戻した。
「……みん、な……」
かすれた声。
目の前にいるのは——
全身血まみれで、それでも笑っている変態女騎士。
壁際で、ボロボロになりながら泣いているダメ女神。
そして——魔力を使い果たし、倒れ込みながらも、深紅の目でこちらを見つめる小さな爆裂バカ。
「みんな……なんで……」
カズマの目から、涙が溢れた。
「お前ら……本当に、バカだな……」
「バカはお前だ、カズマ!!」
ダクネスが、泣き笑いで叫んだ。
「カズマぁ……よかったよぉ……!」
アクアが、四つん這いで近づいてくる。
でも——
「待ってアクア!!」
ダクネスが、アクアの肩を掴んだ。
彼女の視線の先——カズマの右手。
呪印の刻印が、まだ、かすかに光っている。
かすかに、ごくかすかに——だが、それはまだ消えていなかった。
「……ふふ」
カズマは、力なく笑った。
「まだ……完全には、消えてないみたいだな……」
アクアは、それでも手を伸ばそうとした。
でも——ダクネスが首を振る。
「……今の私たちでは、完全には浄化できない。だが——それでも、一歩は近づいた」
「……これでやっと……我が爆裂魔法を……語れる……」
倒れ込んだまま、めぐみんが小さく笑う。そして——深紅の目を閉じた。
「めぐみん!」
「大丈夫だ、気を失っただけだ」
ダクネスは、自分の傷だらけの体で、そっとめぐみんを抱き起こした。
アクアは、立ち上がる。
涙で濡れた青い目で、カズマを見つめた。
「必ず……絶対に、助けるからね、カズマ。私は、最高の女神なんだから」
その言葉に、カズマは——小さく、本当に小さく、笑った。
「……ああ。わかってるよ、バカ」
——玉座の間の、さらに奥。
物陰で。
薄紫色の長い髪を編み込んだ少女が、立ち尽くしていた。
マリア。
金色の目が、大きく見開かれている。
いつもの薄ら笑いは、消えていた。
「……なぜ」
震える声で、彼女は呟いた。
「なぜ……憎しみでしか、人は繋がれないはずなのに……」
彼女の目の前で——四人は、互いを想い合っている。
憎しみを力に変えたカズマを、それでも仲間たちは諦めなかった。
その姿が——かつて自分が失ったものと、あまりにも対照的だった。
アクアに騙され、天界から落とされ、憎しみだけで生きてきた自分。
「私が……間違っていた……」
マリアの金色の目から、初めて、涙がこぼれ落ちた。
「私は……本当は……ただ、誰かと一緒にいたかっただけなのに……」
彼女は、そっと身を翻した。
誰にも見つからないように。
静かに。
でも——その背中は、今までより少しだけ、小さく見えた。
——その時。
「やれやれ……うちの城がめちゃくちゃだな」
玉座に座ったままの魔王が、呆れたように呟いた。
黒髪の青年の姿をした、800歳の魔王。
「あっ、あんたが魔王!?」
アクアが指をさす。
「まあ、一応な。だが——今は、お前たちの喧嘩の仲裁が先だ。私は、ただの傍観者で結構」
魔王は、玉座にもたれかかりながら、手をひらひらと振った。
「そ、そんなことより! カズマを助ける方法、知ってるんじゃないの!?」
アクアが詰め寄る。
魔王は、静かに笑った。
「さあな。だが——その少年が、自分で答えを見つけるのを、ここで見ているのも悪くない」
「なによそれー!」
「……アクア、今はそれでいい」
ダクネスが、アクアの肩に手を置いた。
傷だらけの身体で、それでも彼女は微笑む。
「この傷……勲章だな……」
「また変態が発動してるー!」
アクアがツッコミを入れる。
そのやり取りを——カズマは、じっと見つめていた。
「……はは」
小さく笑う。
いつもの、呆れたようなジト目で。
でも——その目は、まだ完全には笑っていなかった。
右手の甲の刻印が、かすかに光を放つ。
——まだ。
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