壁の裏側、ふたりだけの体温
調査兵団のエレン・イェーガーと幼なじみのミカサ・アッカーマンは、巨人への復讐を誓う兵士である。ある夜、訓練遠征からの帰路で激しい雷雨に見舞われた二人は、森の奥深くにひっそりと佇む古びた小屋を見つける。ずぶ濡れで震えながら、人目から完全に隔絶された空間で、互いの体温を分け合うように身を寄せ合う。その瞬間、幼い頃から続く清廉な絆は砕け散る。エレンの無骨な手が凍えたミカサの身体を抱き寄せ、彼女の秘め続けた想いが涙とともに溢れ出し、二人は初めての激しい夜を貪り合う。
それは、二人だけの秘密となった。壁の外では巨人を屠り、壁の中ではただの幼なじみとして振る舞う。しかし、盗み合うような激しい肉欲の時間は、脆く危険な均衡の上に成り立っていた。
転機は、壁外調査任務の最中に訪れる。ミカサが深手を負ったのだ。彼女を失う恐怖に直面したエレンは、かつてない凶暴性をもって巨人へと変貌する。血の海の中で最後の一匹まで巨人を惨殺し、ミカサを死の淵から救い出す。
生還した二人は、秘密の関係に終止符を打つことを決意する。もう隠し立てはしない、と。しかし、そう決意したまさにその時、憲兵団のアニ・レオンハートが冷や
壁の裏側、ふたりだけの体温 - 秘密の熱 —— 訓練場の昼と兵舎の夜
訓練場の土を蹴る音だけが、やけに頭に響いた。
ウォール・ロゼの調査兵団本部、その厩舎を改装した訓練用区画で、エレン・イェーガーは立体機動装置のハーネスを締め直す。肩と腰に食い込む十五キロの重さが、頭を現実に引き戻してくれる。そうでもしなければ、おかしくなりそうだった。
あの夜から、数日。雷雨の廃屋で、ミカサと。
思い出すだけで、首の裏が熱くなる。
「ちっ……集中しろ」
エレンは悪態をつき、改めて正面の標的を見据えた。
巨人の首を模した丸太が、十メートル先の空中でぶら下がっている。頭部にあたる位置には、赤いペンキでうなじの範囲が塗られていた。あれを、一撃で斬る。深く、正確に。さもなければ、本物の巨人の前では死ぬ。それが調査兵団の現実だった。
ワイヤー射出のボタンを親指で押し込む。
ガス推進器から、シュゥゥゥッと白い蒸気が漏れた。
身体が宙に浮く。腹筋に力を込め、重心をコントロールしながら、標的の側面に回り込む。彼は樹に見立てた太い柱に足をかけ、一瞬だけタイミングを計った。
(今だ!)
エレンは無心で双刃を抜き放ち、弧を描くように斬りつける。
ザシュッ。
手応えは悪くない。着地して振り返ると、丸太の切り口からは木屑が散っていた。でも、あと三センチ深くないと駄目だ、とリヴァイ兵長の冷たい声が脳裏でこだまする。
「……くそ」
まだだ。もう一度、射出体勢に入ろうとした——その時だった。
視界の端に、黒い髪が揺らめいた。
心臓が、跳ねた。
ミカサ・アッカーマンだ。隣の訓練レーンで、仲間たちと並んで立体機動のフォームチェックを受けている。彼女の碧色の瞳は、いつも通り冷たく澄んでいた。黒くて長いストレートの髪が、落下と滞空のリズムに合わせて美しく宙を舞う。無駄のない、完璧な動きだった。同期で彼女に並べる兵士は一人もいないし、教官ですら舌を巻くほどだ。
そのミカサが、ふとエレンを見た。
ほんの一瞬だけ、目が合う。
——あの夜と同じだ、と思った。彼女の瞳の奥で、何かが熱く揺れた。彼にだけは分かる。彼女の碧い目は、彼を見つめる時だけ、氷の下の炎を見せる。
ドクン。エレンの胸の奥で何かが激しく脈打ち、指先から力が抜ける。
次の助走で、彼は足を踏み外した。
バランスを崩し、地面に膝をつく。
「馬鹿、何やってんだエレン!」
コニー・スプリンガーが、ピョンピョン跳ねながら笑っている。剃り込みの入った坊主頭のムードメーカーだ。
「[laughing]見すぎだって!ミカサに見とれてると、訓練にならねえぞ!」
周囲からも失笑が漏れる。エレンは立ち上がり、泥を払いながら言い返した。
「[angry]うるせえ、見てねえよ!ちょっと足がもつれただけだ!」
顔は熱い。ミカサを見て、ドキドキして、そのせいでミスした、なんて認められるわけがない。
(ああ、くそ。本当に、やばい)
エレンは内心で悪態をつき、もう一度標的に向き直る。
でも、彼の心は決まっていた。この熱は、誰にも知られてはいけない。
午後の光が、色を少しだけ濃くした頃だった。
水汲み当番の順番が回ってきたのは。いつもは三人一組の単純作業だが、今日に限って仲間の一人が体調を崩し、二人だけで倉庫の奥の貯水槽を満たすことになった。
薄暗い倉庫の中は、少しひんやりとしていて、外の騒がしさが嘘のように静かだ。バケツを満たす水音だけが、規則的に響いている。
「……エレン」
ミカサの声は、いつもより低く、沈んでいた。
彼女はバケツを置き、無言でエレンの腕を掴む。そのまま、彼を石壁に向かって強く押した。背中に、冷たい石の感触が伝わる。
「み、かさ——」
言い終わる前に、彼女の唇が重なっていた。
最初の夜とは違う、硬くて、必死な口づけだった。まるで、今ここで確かめなければ、消えてしまう何かがあるかのように。ミカサの細くて強い指が、エレンの胸倉を掴み、その力強さが、あの夜は現実だったのだと証明していた。
長い口づけの後、彼女は額をエレンの胸に押しつけた。
「[whispers]あの夜のこと……後悔、してない?」
それは、普段は冷静沈着な彼女が、ようやく絞り出した、震えるような問いだった。
エレンは首を振る。後悔なんて、するわけがない。
「[serious]するわけないだろ。お前こそ……」
言いかけた瞬間、ミカサの両腕が彼の背中に回った。彼女はしがみつくように、彼の胸に顔を埋める。
「[crying]安心、した。……私は、あれが全部、夢だったらどうしようって思ってた」
その言葉に、エレンの胸の真ん中がじわりと熱くなった。彼はそっと、彼女の黒い髪に手を置く。二人はしばらくの間、息を乱しながら抱き合い、互いの体温を感じていた。
「おーい、水くみ終わったかー?」
遠くから、仲間の声が響く。二人は弾かれたように離れ、何事もなかったかのようにバケツを掴み直した。ミカサの顔は、もういつもの完璧な兵士の表情に戻っている。ただ、耳の先だけがほんのりと赤い。
「今行きます」
彼女が平静を装って返事をし、倉庫を出る。その後ろ姿を、通りがかった別の仲間が首を傾げながら見つめていた。
深夜。調査兵団本部の廊下には、静寂と、巡回兵の規則正しい足音だけが支配していた。
その音が、ようやく遠ざかる。
エレンの部屋の窓が、音もなく開いた。まるで影のような動きで、黒髪のシルエットが滑り込んでくる。ミカサだ。彼女は足音一つ立てずに、彼のベッドのそばへと近づいた。
二人の間では、すでに言葉は少なかった。
エレンが手を伸ばし、ミカサの腰に腕を回す。彼女のシャツの下の肌は、夜風で少し冷たくなっていた。彼はそれを温めるように、強く抱き寄せる。彼女の吐息が、彼の首筋にかかった。彼は彼女をベッドへと導きながら、何度もその唇に食らいつく。最初は優しく、次第に激しく、彼の舌が彼女の口内を這うたびに、彼女の身体が小さく跳ねた。
薄明かりの中で、互いの服を脱がせ合う。
彼女の肌は月明かりに照らされて青白く輝き、そのなめらかな曲線をエレンの目に焼き付ける。彼は彼女の白いブラを外した。こぼれ出る、白くて小さな乳房。その頂点にある淡いピンク色の乳首が、すでに硬く尖っているのを、彼は指の腹で感じた。
「[whispers]あっ……」
彼女の口から、熱い吐息が漏れる。
エレンは彼女の細い肩を押し、そっとベッドに沈めた。細い鎖骨のラインを舌でなぞり、胸のふくらみへと顔を埋める。唇で乳首を優しく挟み、舌先で転がすと、彼女の背中がしなった。
「[whispers]や、ぁ……エレン……」
彼女は彼の髪を掴みながら、必死に声を抑える。隣室に誰かがいるかもしれない、という緊張感が、逆に体の感度を極限まで高めていた。彼の手が彼女の下腹部へと下りていき、最後の布地を取り払う。そこはもう、とろりと熱い蜜であふれ、下着に染みを作っていた。彼は指で秘所をなぞる。
「……んっ、ふぁ……!」
濡れそぼった陰唇を指で左右に開くと、その間から糸を引く愛液が溢れ出し、シーツに染みを作った。彼はそのぬめりを借りて、硬く膨らんだ自分のペニスを彼女の割れ目にあてがう。熱い亀頭が、彼女の敏感なクリトリスを擦り上げた瞬間、彼女は腰を浮かせて震えた。
「[whispers]お願い……エレン、早く……」
懇願するような声に、エレンの理性は焼き切れた。彼は腰を突き出す。
ぐちゅっ。
熱くて、狭い。彼女の膣壁が彼のペニス全体をきつく締め付け、引きずり込むように奥へと誘う。彼は奥まで一気に突き入れると、そのまま律動を始めた。
「あっ、あぁっ!……んんっ……!」
彼女は声を殺すために自分の手の甲を噛みながら、エレンの律動に合わせて身体をくねらせる。結合部からは、彼が腰を打ちつけるたびに、濡れた卑猥な水音が、小さな部屋の中に響き渡った。
その時だった。
——コツ、コツ、コツ。
廊下の外で、規則正しい巡回の足音が、部屋の前で、止まった。
二人の動きが、文字通り一瞬で凍りつく。
エレンは最奥まで突き入れた体勢のまま、ミカサは彼の背中に爪を立てたまま、彼らは裸の肌をぴったりと密着させて、数センチの距離で見つめ合った。呼吸さえも止める。ドクン、ドクンと、お互いの心臓の音だけが、こんなにもうるさい。外に聞こえるんじゃないか、と思うほどの緊張が、数十秒間続いた。
……コツ、コツ、コツ。
やがて、足音は再び遠ざかっていき、静寂が戻る。
緊張の糸が切れた瞬間、ミカサがエレンの肩口に顔を埋めて、ふるふると震えた。
「……ふふ」
泣いているのかと思った。でも違う。彼女は、声を殺して、笑っていた。エレンはその顔を、今まで一度も見たことがなかった。彼女のこんな無防備な表情が、胸に強烈に突き刺さる。
「[gentle]ミカサ……」
彼は彼女の額に口づけ、より静かに、しかし離れることを恐れるように、再び体を求め合った。今度は、彼女が彼の上に乗り、騎乗位で自ら腰を振り始める。
「[whispers]私の、エレン……誰にも、渡さない」
普段の冷静さが嘘のように、彼女はまたがったまま激しく腰を打ちつけ、彼のペニスをさらに深く咥え込んだ。彼女のヴァギナは絶え間なく痙攣し、エレンのペニスをきつく締め上げる。
「く、ぅ……出すぞ、ミカサ!」
「[crying]奥に……お願い、奥でイかせて……!」
彼は彼女の腰を掴み、下から何度も何度も突き上げた。そして彼のペニスが彼女の子宮口にキスをするたびに、彼女は小さく悲鳴を上げて絶頂に達した。最後に、彼は彼女の最奥にペニスを押し込んだまま、どくどくと熱い精液のすべてを吐き出した。彼女の膣内が、彼の白濁液で満たされていく。
「あ……あああぁぁっ……!」
ミカサもまた、全身を痙攣させながら、最後の絶頂に達していた。二人は汗と体液にまみれたまま、長い間、強く抱きしめ合っていた。
夜が明ける、少し前。
外はまだ、深い藍色に包まれている。ミカサはエレンの胸に頬を乗せ、彼の心臓の音を聞きながら、静かに言葉を紡いだ。
「[whispers]もし……これが見つかったら、除隊か、もっと悪ければ拘束です」
彼女の声は、現実を突きつけるにはあまりにも穏やかだった。
「[serious]分かってる」
エレンは天井を見つめたまま、短く答える。
「[whispers]それでも」
彼女は少しだけ間を置き、続けた。
「[crying]それでも、私、止められない。……エレンを失うのが、怖い。巨人に殺されるよりも、誰かにあなたを奪われる方が、ずっと怖い」
彼女の指が、エレンの胸に軽く食い込む。その言葉の重さを、彼は黙って受け止めながら、彼女の黒い髪に手を乗せた。
二人の関係は、もう単なる衝動ではなかった。互いの存在への深い依存と、執着へと変わっていく、決定的な夜だった。
翌朝の朝礼は、いつも通り無機質に終わった。しかし、その後の簡単なミーティングで、副長のグンタが雑談混じりに口を開いたのだ。
「あー、そういや最近、やけに一緒にいる二人組がいるよな、と」
心臓が、凍りついた。
グンタは、少し白髪の混じった無骨な戦士だ。厳しいが、仲間思いで、こういう冗談を言う人柄でもある。彼はわざとらしく咳払いをし、続けた。
「[serious]まあ、若い兵士がどうしようと、俺は構わんが……惚れた腫れたで気が散るなら、今のうちに言っとけ。壁の外じゃ、そんな感傷は即、死因になるぞ」
名指しじゃない。でも、エレンには分かった。この言葉は、俺たちに向けられている。隣に立つミカサも、ほんの一瞬だけ目を細め、冷たい視線をグンタに向けた。
「[laughing]おいエレン、お前たちのことかな?」
解散の後、コニーがエレンの肩を叩きながら、笑って軽口を叩いた。
「[sarcastic]笑えねえ。俺みたいなのとミカサが一緒にいるわけないだろ」
エレンはわざと肩をすくめて、嫌味な感じで笑い飛ばす。コニーはそれを信じた様子で、「だよなー!」と笑いながら去っていった。
周囲に仲間がいなくなり、ほっと息を吐いたその時、ミカサがエレンの横を通り過ぎざまに、ほんの一秒だけ、彼の手の甲に自分の指先を重ねた。誰にも見えない、小さな、小さな接触。
「[whispers]気をつけて」
それだけ言って、彼女はいつもの無表情で歩き去る。
エレンは、手の甲に残る彼女の微かなぬくもりを感じながら、一人、訓練場に立っていた。壁外調査の選抜試験が、すぐそこまで迫っている。皆が必死で、生き残るためにしのぎを削っている。その中で、この秘密を守り抜くことは、巨人と戦うのとは別の、もう一つの戦いだった。
彼は、誰にも気づかれないように、静かに拳を握りしめた。