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混沌勢の掟は絶対。人間に染まった者は炎で清めなければならない。でも――トールは、私が初めて戦い方を教わった、優しい先輩だった。 純血の焔の戦士・イルルに下った任務は、人間界に潜入したまま戻らないトールの調査と、もし人間と共存しているなら制裁を下すこと。境界の裂け目をくぐり、人間界へ降り立ったイルルが見たのは、混沌界では決して見られない穏やかな街の風景と、エプロンを身につけ人間の女・小林さんに嬉しそうに料理を運ぶトールの姿だった。 「小林さんは、私のメイドとしての全てですわ」 あんな風に笑うトールを、イルルは知らない。人間は支配すべき下等種族のはずなのに。掟に背いたトールを制裁すべきなのに。なのに、なぜ胸がこんなに痛むのか。ガルドに嘘をついてしまった自分に戸惑いながら、イルルは答えの出ない問いを抱えて夜を過ごす。 これは、任務と感情のあいだで揺れる一人の竜の少女の物語。
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