アクタージュ・リビルド ~転生したら芸能一家のドタバタ恋愛劇!?~
給食費滞納のピンチを救うため、賞金100万円のオーディションに飛び込んだ夜凪景、16歳。演技経験ゼロ、特技は古い映画の真似だけ。なのに、即興演技で審査員を震撼させた彼女の“ある才能”とは——? 天才監督・黒山墨字に「君は怪物だ」と言わしめた景は、その日から芸能界の荒波へ。待っていたのは、業界最大手の天才女優・百城千世子、演劇界の怪物・明神阿良也、そして個性豊かなスタジオ大黒天の面々。さらに、届いた差出人不明の手紙——『あなたの父親を知っています』。失踪した父の謎、母の死の真相、そして景の中に眠る“化け物”の正体。ドタバタで危険で、ほんの少し切ない芸能一家の恋愛劇、開幕! 家族を守るため、景は今日も舞台に立つ。
アクタージュ・リビルド ~転生したら芸能一家のドタバタ恋愛劇!?~ - 天才女優の警告と、消えない過去
「ねえ、景ちゃん。昨日のあのシーン、もう一回見てくれる?」
千世子が、にこりと笑いながら景の腕に手を伸ばしてきた。
調布の撮影所、学園ドラマ『放課後シンフォニー』のセットの隅。木造の教室セットには、朝の光を模した照明が降り注いでいる。景は台本を胸に抱えたまま、一歩後ろに下がった。
「え、えっと……昨日の、どのシーン?」
「最後の、私があなたを抱きしめたところよ」
千世子は、さらりと言った。栗色の髪が、動きに合わせてふわりと揺れる。宝石のような紫がかった大きな瞳が、景をじっと見つめていた。
景は、昨日のことを思い出した。
撮影二日目。景は、台本のセリフがどうしても覚えられなかった。
何度も何度もNGを出した。監督の声が、スタジオに響く。
「カット! 夜凪さん、セリフが飛んでますよ!」
「す、すみません……」
景は、自分の不甲斐なさに、唇を噛んだ。
(どうして……家ではあんなに練習したのに)
右手の指先が、無意識に台本の端を、とん、とん、と叩く。
その時だった。
「監督、すみません。少しだけ、お時間をいただけますか?」
千世子が、すっと手を挙げた。
彼女は、景の隣に歩いてきて、そっと景の手を取った。
「景ちゃん、私の目を見て」
「え……」
「いいから」
千世子の声は、不思議なほど優しかった。
景が顔を上げると、千世子は、景の両手を包み込むように握った。
「あなたは今、一人じゃない。私がそばにいるよ」
それは、台本にはないセリフだった。
千世子の即興だった。
でも、その言葉が、景の胸の奥に、すとん、と落ちた。
(私が、そばにいる)
景の視界が、じわりと滲んだ。
母が死んで、父がいなくなって。
ずっと、一人で、弟と妹を守らなきゃって。
誰にも、頼れなかった。
でも、今、この瞬間だけは。
千世子の手が、温かかった。
景の目から、涙がこぼれた。
本気の涙だった。
「……っ」
景は、声にならない声を上げた。
千世子は、景をそっと抱きしめた。
「いいのよ。そのまま、泣いていいの」
千世子の声が、耳元で響く。
景は、千世子の肩に顔を埋めて、声を押し殺して泣いた。
スタジオの中が、静まり返った。
誰も、何も言わなかった。
カメラが、回っていた。
それは、台本にない、一度きりの奇跡のようなシーンだった。
——
「カット! ……OK!」
監督の声が、少し震えていた。
スタッフたちが、拍手をした。
「すごい……今の、本番で使えるよ」
「二人の掛け合い、最高だね」
景は、千世子の腕の中から、慌てて離れた。
顔が、熱い。
「あ、あの……ごめんなさい。私、勝手に泣いて……」
「謝ることないわ。あなたのその、まっすぐなところ、嫌いじゃないもの」
千世子は、くすりと笑った。
「むしろ、もっと見せてほしいくらいよ」
景は、千世子の笑顔に、どきりとした。
(この人、本当に……)
景は、顔を赤らめたまま、俯いた。
——
撮影三日目。
昼休憩の時間だった。
景は、控え室の隅で、一人でお弁当を食べようとしていた。
コンビニで買った、一番安いおにぎりと、水だけ。
家計のことを考えると、これが精一杯だった。
「景ちゃん、一緒に食べましょう?」
突然、控え室のドアが開いて、千世子が顔を出した。
彼女は、高級そうな三段重のお弁当箱を抱えている。
「え、えっと……私は、ここで……」
「ダメよ。一人で食べるなんて、寂しいじゃない」
千世子は、景の返事を待たずに、景の隣に座った。
「はい、これ。私の卵焼き。おいしいから食べて」
千世子は、自分のお弁当箱から、卵焼きを景の前にあるコンビニのおにぎりの上に、ぽん、と乗せた。
「あ、ありがとう……」
「それでね、私、前から聞きたかったんだけど」
千世子は、卵焼きを口に運びながら、景をじっと見た。
「あなたの演技、どうしてあんなに変なの?」
「へ、変?」
「変よ。だって、台本にないことをやり始めるし、泣き出すし。普通の役者なら、絶対にやらないもの」
千世子は、興味津々といった様子で、身を乗り出してきた。
「ねえ、教えて。あなたの演技の秘密」
景は、少し迷った。
でも、千世子の真っ直ぐな瞳を見ていたら、話してしまってもいいかな、と思えた。
「……私、体験したことしか、演技できないの」
景は、ぽつりと打ち明けた。
「体験したことしか?」
「うん。台本のセリフを、ただ言うだけじゃ、気持ちが入らない。でも、自分の過去の、似ている気持ちを思い出したら、その時の感情が、そのまま出てくるの」
景は、右手の指先を、無意識に膝の上で動かした。
「だから、悲しいシーンは、悲しかった時のことを思い出す。嬉しいシーンは、嬉しかった時のことを」
「それって、すごく、大変じゃない?」
千世子の表情が、少しだけ真剣になった。
「大変……なのかな。私には、これしか方法が分からないから」
景は、首をかしげた。
「でも、あなたの演技、私は好きよ。この前の、あの涙。本物だった」
千世子は、目を輝かせた。
「私、あなたのことが、もっと知りたい。もっと、あなたの芝居が見たい」
千世子の言葉は、景の胸に、じんわりと染み込んだ。
(この人に、そう言ってもらえると……)
景は、おにぎりを握る手に、少しだけ力を込めた。
その時だった。
「千世子さん、景ちゃん、ここにいたんだ」
控え室のドアが、また開いた。
入ってきたのは、星アキラだった。
アキラは、スターズ所属の俳優で、星アリサの息子。柔らかい茶色の髪に、人懐っこい笑顔。同じ学園ドラマに、景の相手役として出演している。
「景ちゃん、この前の演技、すごく良かったよ。あの涙のシーン、俺、鳥肌立った」
アキラは、景の前にしゃがみ込んで、景の顔を覗き込んだ。
「あ、ありがとう……」
景は、アキラの距離の近さに、少しだけ後ろにのけぞった。
その瞬間。
千世子が、景の肩を、ぎゅっと抱き寄せた。
「アキラったら、景は今、私とお話中なの。邪魔しないでくれる?」
千世子の声は、笑顔のままだった。
でも、その瞳は、笑っていなかった。
「千世子さん、ずるいよ。俺だって、景ちゃんと話したいのに」
アキラは、困ったように笑った。
「あら、私の景に、勝手に近づかないでほしいわ」
千世子は、景の肩を抱いたまま、アキラを見上げた。
「ち、千世子さん……あの、私、誰のものでもないんだけど……」
景は、二人の間に挟まれて、パニックになり始めていた。
「景は、私のものよ。ね、そうでしょ?」
千世子が、景の耳元で囁いた。
温かい吐息が、景の耳にかかる。
「え、え、え……!?」
景の顔が、一気に赤くなった。
「千世子さん、景ちゃんが困ってるよ」
アキラが、景を助けようと手を伸ばす。
「アキラは、ちょっと黙ってて」
千世子は、ぴしゃりと言った。
「う……」
アキラは、しょんぼりと肩を落とした。
景は、千世子の腕の中で、心臓がうるさいほど鳴っているのを感じていた。
(な、なんでこうなるの……)
景の頭の中は、ぐるぐると混乱していた。
——
その日の午後。
撮影が再開され、景は、セットの中央で、千世子と向かい合っていた。
シーンは、主人公の少女(千世子)が、親友(景)に、自分の秘密を打ち明ける場面。
「カット! 夜凪さん、もっと感情を込めて! 相手の言葉を、ちゃんと受け止めて!」
「はい……!」
景は、何度もNGを出しながら、必死に演じた。
(千世子さんのセリフを、ちゃんと聞いて……)
景は、千世子の目を見た。
千世子の瞳は、深い紫色の海のようで、景を引き込もうとする。
「……私はね、本当は、みんなに嫌われるのが怖いの」
千世子の声が、セットに響く。
それは、台本のセリフだった。
でも、景には、千世子の本心のように聞こえた。
(千世子さんが……怖い?)
景の胸が、きゅっと締め付けられる。
「だから、いつも笑ってるの。笑っていれば、嫌われないから」
千世子の顔には、完璧な笑顔が張り付いていた。
でも、その笑顔が、景には、泣いているように見えた。
「……違う」
景の口から、自然と言葉がこぼれた。
「違うよ。笑ってるだけじゃ、伝わらないこともある」
景は、千世子に一歩近づいた。
「私は、千世子さんの、笑ってない顔も見てみたい」
それは、台本にないセリフだった。
でも、景の心からの言葉だった。
千世子の目が、一瞬、大きく見開かれた。
そして、次の瞬間。
千世子の完璧な笑顔が、崩れた。
「……景ちゃんは、本当に、ずるいわ」
千世子は、泣き笑いのような表情で、景を見た。
「カット! ……OK!!」
監督の声が、スタジオに響き渡った。
「今の、最高だったよ! 二人とも!」
スタッフたちから、大きな拍手が起こった。
景は、千世子の顔を、まっすぐに見つめ返した。
千世子も、景を見つめ返した。
二人の間に、何かが、確かに生まれた瞬間だった。
——
その撮影が終わった直後。
スタジオの入り口が、急にざわついた。
「あれ、星社長じゃないか?」
「スターズの社長が、なんでここに?」
景は、ざわめきの方を振り返った。
そこに立っていたのは、一人の女性だった。
黒いスーツをきっちりと着こなし、背筋をピンと伸ばしている。長い黒髪は、後ろで一つに束ねられていた。年齢は、四十代半ばといったところか。
彼女の周りだけ、空気が、ぴんと張り詰めている。
(あの人が、星アリサ……)
景は、ごくりと唾を飲み込んだ。
スターズの社長であり、元女優。
そして、かつてメソッド演技で、心を壊したと噂される人物。
アリサは、スタジオの中を、ゆっくりと見渡した。
その視線が、景の上で、ぴたりと止まった。
アリサは、何も言わずに、景の撮影を、じっと見つめていた。
——
撮影が終わり、景が控え室に戻ろうとすると、後ろから声をかけられた。
「夜凪景さん」
低く、落ち着いた声だった。
景は、振り返った。
アリサが、無表情で、景を見下ろしていた。
「は、はい」
「少し、話があるの。いいかしら」
「……はい」
景は、アリサに連れられて、スタジオの外の、人気のない廊下に出た。
夕方の光が、窓から差し込んでいる。
アリサは、窓の外を見ながら、静かに口を開いた。
「あなたの演技、見ていたわ」
「……はい」
「率直に言うわ。あなたの演技は、危ない。自分を壊してしまうかもしれない」
アリサの言葉は、鋭い刃のように、景の胸に突き刺さった。
「……どういう、ことですか?」
景は、声が震えるのを必死に抑えた。
「あなたは、自分の過去の感情を、そのまま役に持ってきている。違う?」
「……はい。私には、その方法しか、できません」
「ええ、分かってる。あなたの才能は、本物よ。でも、その方法は、いつかあなた自身を食い潰す」
アリサは、景の方を向いた。
その瞳は、深い闇のように、景を映していた。
「私も、昔、あなたと同じ演技をしていた。そして、役から抜けられなくなった」
アリサの声は、静かだった。
でも、その言葉の重みは、計り知れなかった。
「役から、抜けられなくなる……?」
「ええ。演じているのか、自分がそうなのか、分からなくなるの。日常が、演技になる。感情が、自分のものじゃなくなる。そして、最後には、自分が誰なのか、分からなくなる」
アリサは、自分の手のひらを見つめた。
「私は、それで、すべてを失った」
景は、言葉を失った。
(この人が……そんな経験を)
「だから、あなたには、同じ道を歩んでほしくない」
アリサは、景の目を、まっすぐに見た。
「役を、演じるんじゃなくて、役を、まとう方法を教えてあげる。私の経験から、あなたを守る方法を」
アリサの申し出は、景にとって、思いがけないものだった。
でも、景は、首を振った。
「……ありがとうございます。でも、私は、これでしか演技できないんです」
景の声は、小さかった。
でも、確かな意志が、そこにはあった。
「私には、この方法しかない。だから、私は、この方法で、もっと上手くなりたい」
アリサは、しばらく、景を見つめていた。
「……そう。残念だわ」
アリサは、小さくため息をついた。
「でも、覚えておいて。あなたが壊れそうになったら、私は、必ず止めに来るから」
アリサは、それだけ言うと、景に背を向けて、去っていった。
景は、その場に立ち尽くした。
(私の演技は……危ない)
アリサの言葉が、頭の中で、何度も繰り返された。
景の右手の指先が、無意識に、制服の裾を、ぎゅっと握りしめた。
——
撮影終了後。
景は、楽屋で、一人、台本を眺めていた。
でも、内容は、まったく頭に入ってこなかった。
(私の演技は、私を壊すの?)
(でも、私には、これしか……)
景の心は、ぐらぐらと揺れていた。
「景ちゃん、入ってもいい?」
ドアの向こうから、千世子の声がした。
「……どうぞ」
千世子は、静かにドアを開けて、中に入ってきた。
「アリサ社長と、何を話したの?」
千世子は、景の隣に座った。
「……私の演技は、危ないって」
景は、ぽつりと言った。
「私の演技は、いつか、私を壊すかもしれないって」
千世子は、しばらく、黙っていた。
「……危ないかどうかは、分からない」
千世子は、静かに口を開いた。
「でも、私は、あなたの演技が好きよ。だから、やめろなんて、言わない」
千世子の声は、優しかった。
「でも、もし、あなたが壊れそうになったら、私が引き戻してあげる」
千世子は、景の顔を、覗き込んだ。
「それくらい、私、あなたに興味があるの」
千世子の顔が、すぐ近くにあった。
景は、千世子の紫の瞳に、吸い込まれそうになった。
(ち、近い……!)
景の心臓が、激しく脈打つ。
「……ありがとう」
景は、小さく答えた。
「俺も! 俺も景ちゃんのこと、支えたい!」
突然、ドアが勢いよく開いて、アキラが飛び込んできた。
「アキラは、ちょっと黙ってて」
千世子は、アキラを一蹴した。
「ひどい!」
アキラは、大げさに肩を落とした。
そのやり取りが、あまりにもおかしくて。
景は、思わず、吹き出した。
「ふふっ……」
景が笑うと、千世子も、アキラも、驚いたように景を見た。
「景ちゃん、笑った」
「え……」
「あなた、笑えるのね」
千世子が、目を丸くした。
「な、なによ、それ。私だって、笑うことくらいあるよ」
景は、照れくさくなって、俯いた。
でも、心は、さっきより、ずっと軽くなっていた。
(千世子さんと、アキラくんがいてくれる)
(だから、私は、まだ、大丈夫)
景は、そう思えた。
——
その夜。
景は、家に帰ると、弟のルイと妹のレイが、テレビを見ていた。
「お姉ちゃん、おかえり」
「遅かったじゃん。撮影、大変だった?」
「……うん、まあね」
景は、疲れた体を、ちゃぶ台の前に下ろした。
「ご飯、作るね」
「お姉ちゃん、疲れてるでしょ。今日は、私が作るよ」
レイが、立ち上がった。
「大丈夫。私がやるから」
「お姉ちゃん、無理しないでよ」
レイは、心配そうに景を見た。
「無理なんてしてない。私、やるって言ったら、やるの」
景は、台所に立った。
冷蔵庫を開ける。中には、卵と、キャベツが少し。
景は、手早く、卵焼きと、キャベツの味噌汁を作った。
三人で、ちゃぶ台を囲む。
「お姉ちゃん、今日は、何の撮影だったの?」
「学園ドラマ。千世子さんと、アキラくんと」
「へえ、あの天使の千世子と、イケメンのアキラと!」
ルイが、身を乗り出した。
「姉ちゃん、モテモテじゃん!」
「モテてない。からかわないで」
「でも、お姉ちゃん、最近、楽しそうだよ」
レイが、にこりと笑った。
「……そう見える?」
「うん。前より、笑顔が増えた気がする」
景は、レイの言葉に、少しだけ、胸が温かくなった。
(そうかも、しれない)
景は、卵焼きを口に運んだ。
少し、焦げていた。
でも、悪くない味だった。
——
食事が終わり、景が片付けをしていると、スマートフォンが震えた。
景は、手を拭いて、スマートフォンを手に取った。
画面に、知らない番号からのメッセージが表示されていた。
景は、そのメッセージを開いた。
『お前の父親のことをもっと知りたければ、明日一人で来い。来なければ、お前の弟と妹に何が起きても知らないぞ』
景の顔から、血の気が引いた。
(お父さんのこと……?)
(ルイと、レイに……?)
景の手が、震え始めた。
スマートフォンが、手から滑り落ちそうになる。
「お姉ちゃん、どうしたの?」
レイが、心配そうに声をかけてきた。
「……何でもない。ちょっと、メールが来ただけ」
景は、必死に平静を装った。
メッセージを消そうとした。
でも、震える指が、うまく動かない。
(消さなきゃ。ルイとレイに、見せられない)
景は、何度も、画面をタップした。
ようやく、メッセージは消えた。
でも、あの文字は、景の脳裏に、深く焼き付いていた。
『明日一人で来い』
『来なければ、お前の弟と妹に何が起きても知らないぞ』
景は、スマートフォンを、ぎゅっと握りしめた。
(お父さんのこと……)
(それに、ルイとレイ……)
景の心臓が、早鐘のように鳴っていた。
「お姉ちゃん、本当に大丈夫?」
レイが、景の顔を覗き込んだ。
「……大丈夫。明日、少し遅くなるから。二人で、先に寝てて」
景は、レイの頭を、そっと撫でた。
「分かった。お姉ちゃんも、無理しないでね」
レイは、心配そうにしながらも、頷いた。
景は、台所に立ち、窓の外を見た。
暗い空に、月が、細く浮かんでいた。
(明日、一人で行く)
景は、決意した。
(ルイとレイは、私が守る)
(お父さんのことも、確かめる)
景の右手の指先が、窓枠を、とん、とん、と叩いた。
その音だけが、静かな夜の台所に、小さく響いていた。Noveliaとは?
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