おやすみプンプン 外伝 〜翠の隠しごと〜
東京郊外の小さな喫茶店「グリーンノート」を切り盛りする看護師・大隈翠。週末だけの店は、常連客の笑い声とコーヒーの香りに包まれ、静かに愛すべき時間が流れていた。けれど彼女の日常には、三日も連絡のない夫・雄一の不在という、小さな、そして大きな穴が空いている。誰かと食卓を囲みたい——その願いを抱えながら、今日も一人分の食卓に、二つの茶碗を並べてしまう翠。そんなある夜、雄一から一本の電話が。「姉の息子が家出してる。お前んとこで預かってくんない?」——名前も知らない少年との、突然の共同生活が始まる。夫の甥っ子と、その妻。血のつながりだけの、ぎこちない二人暮らし。食卓に並ぶ二つの茶碗が、いつか「当たり前」になる日は来るのか。寂しさを抱えた大人と、行く場所をなくした少年が、雨の夜に交差する。おやすみプンプン外伝、静かな雨の物語。
おやすみプンプン 外伝 〜翠の隠しごと〜 - 小さな手、温かい食卓
朝の光が、カーテンの隙間から細く差し込んでいた。
翠は台所に立ち、慣れた手つきで卵を割った。ボウルの中で黄身がぷるんと揺れる。白身を切るように箸を動かしながら、彼女は隣の部屋の気配を探っていた。
(今日も、ちゃんと起きてるかしら)
プンプンがこの家に来てから、一週間が経とうとしていた。
あの雨の夜、ずぶ濡れで玄関に立っていたヒヨコの落書きのような少年。彼は相変わらず無口で、朝の挨拶をしても、小さくうなずくだけだった。でも、それでよかった。翠はその小さな反応が、確かに自分に向けられたものだと分かるから。
フライパンに油をひき、卵を流し込む。じゅわ、という音とともに、朝の匂いが台所に広がる。翠は隣のコンロで味噌汁を温めながら、冷蔵庫から昨日の残りの煮物を取り出した。
(雄一さんの作った煮物、まだ残ってたのよね)
大根と里芋が、薄い茶色の汁に浸かっている。雄一は料理だけは上手かった。最後に台所に立ったのは、もう二週間も前のことだ。
(……今、どこで何をしてるのかしら)
翠は一瞬だけ箸を止めた。でも、すぐに首を振って、卵焼きをくるりと巻く。甘い香りが鼻をくすぐった。
「プンプンくん、朝ごはんできたわよ」
居間から、かすかに物音がした。
しばらくして、プンプンがふらりと現れた。黄色い頭の毛が、寝癖でぴょんと跳ねている。黒い点のような目が、まだ眠たそうに半分閉じられていた。
「おはよう」
翠が声をかけると、プンプンは小さくうなずいた。
それから、二人は向かい合って座る。食卓には、二人分のごはんと味噌汁、卵焼き、煮物。湯気が細く立ち上っている。
翠は、プンプンが箸を取るのを待ってから、自分も食べ始めた。
(一人じゃない)
それだけで、ごはんが美味しい。
プンプンは黙々と食べる。口を動かすたびに、くちばしのように尖った口元が、もごもごと動いた。その姿がなんだか可愛くて、翠は思わず口元を緩める。
「お口に合う? 薄味すぎないかしら」
プンプンは、こくん、とうなずいた。
「よかった。雄一さんに味付けのことで文句を言われたことがあってね。私、少し薄味すぎるのかもしれないわ」
翠はそう言って笑った。でも、雄一の名前を口にした瞬間、胸の奥がちくりと痛んだ。
(雄一さん、まだ連絡もない)
(プンプンくんのことも、私に丸投げしたままで)
プンプンは、翠の顔をちらりと見た。
黒い点の目が、何かを言いたげに揺れている。
でも、何も言わなかった。
翠も、それ以上は何も言わなかった。
朝の光が、食卓を静かに照らしていた。
食べ終わると、プンプンは自分の食器を手に、台所へ向かった。
「あら、いいのよ。私が洗うから」
翠がそう言っても、プンプンは首を横に振る。蛇口をひねり、スポンジに洗剤をつけて、無言で茶碗を洗い始めた。
小さな手が、茶碗を丁寧にこする。
翠はその姿を、カウンターにもたれながら眺めていた。
(この一週間、ずっとこうだった)
(この子は、自分がここにいていい理由を、必死に探してるみたい)
(だから、茶碗を洗うのね)
翠の胸の奥が、きゅっと締めつけられた。
「……ありがとう、プンプンくん。助かるわ」
プンプンは、一瞬だけ手を止めた。
それから、また無言で洗い物を続ける。
でも、その背中が、ほんの少しだけ、嬉しそうに見えた。
「行ってきます」
玄関で、翠はプンプンに弁当の包みを差し出した。
プンプンは、黙ってそれを受け取る。
「今日は、卵焼きと唐揚げよ。ちゃんと食べてね」
プンプンは、こくん、とうなずいた。
「……行ってらっしゃい」
翠は、笑顔で手を振った。
プンプンは、少しの間、翠の顔を見つめていた。
それから、ゆっくりと背を向けて、歩き出す。
黄色い頭が、朝の光の中に消えていくまで、翠は玄関に立って見送っていた。
(学校、行けてるのかしら)
(この子、家出してるって言ってたけど)
(どこに行ってるんだろう)
翠は、プンプンの行き先を知らなかった。
雄一は、何も詳しいことを教えてくれなかった。プンプン自身も、自分のことをほとんど話さない。
(でも、無理に聞くのはやめよう)
(この子が話したいと思った時に、話してくれればいい)
翠は、そう心に決めていた。
病院での仕事を終え、翠が家に帰ると、プンプンはもう帰っていた。
居間のソファに座って、ぼんやりとテレビを見ている。
「ただいま。お腹すいたでしょ? 今、夕ごはん作るわね」
翠が声をかけると、プンプンは振り返って、小さくうなずいた。
翠はエプロンをつけ、冷蔵庫を開けた。
(今日は、何にしようかしら)
(この子、好き嫌いあるのかしら)
(一週間、一緒に食べてきたけど、いまだに分からない)
翠は、とりあえず冷蔵庫にあるもので、肉じゃがを作ることにした。
じゃがいもの皮をむき、にんじんを乱切りにする。玉ねぎを薄切りにして、鍋で炒める。甘い香りが、台所に広がる。
翠は、この一週間、一度も一人で夕食を食べていなかった。
雄一がいた時は、彼が突然帰ってくるかもしれないからと、二人分の食事を用意していた。でも、雄一が帰ってくることはほとんどなかった。
(だから、一人で食べる夕食が、あんなに味気なかったんだ)
(今は、違う)
(プンプンくんがいる)
翠は、鍋をかき混ぜながら、そっと微笑んだ。
夕食の時間。
食卓には、肉じゃがと、豆腐の味噌汁、それに冷奴が並んでいた。
「はい、どうぞ。熱いうちに食べてね」
プンプンは、箸を取って、肉じゃがを一口食べた。
もぐもぐ、と口を動かす。
翠は、その様子をじっと見つめた。
(美味しいかしら?)
(味付け、濃すぎない?)
プンプンは、何も言わない。
でも、二口目、三口目と、箸を進めるスピードが、少しだけ速くなった気がした。
(あ、食べてくれてる)
翠の胸が、じんわりと温かくなる。
「おかわり、あるからね。遠慮しないで」
プンプンは、こくん、とうなずいた。
それから、二人は静かに夕食を食べた。
テレビの音だけが、部屋に流れている。
でも、その静けさは、一人でいた時のそれとは、まったく違っていた。
週末。
翠は、プンプンを喫茶店「グリーンノート」に連れて行くことにした。
「今日は、お店を手伝ってくれる? 無理しなくていいから、できることだけでいいのよ」
プンプンは、こくん、とうなずいた。
店のドアを開けると、コーヒーの香りがふわりと漂ってきた。
「あら、翠さん! 今日は坊やも一緒なのね!」
店に入るなり、常連の年配女性が声を上げた。
「まあ、可愛い坊やだこと!」
「ほんと、人形みたいねえ」
三人の年配女性客が、口々にプンプンを褒めそやした。
プンプンは、照れ隠しのように、もじもじと体を揺らしている。黄色い頭の毛が、ふわふわと揺れた。
「ふふ、みなさん、そんなに褒めると、この子が照れちゃいますよ」
翠は笑いながら、エプロンをプンプンに手渡した。
「これ、つけてくれる? 床の掃除、お願いできるかしら」
プンプンは、エプロンを受け取ると、黙って床の掃除を始めた。
小さな手でほうきを持ち、黙々と掃く。
その姿を、翠はカウンターから眺めていた。
(この子が、ここにいる)
(私のお店に、この子がいる)
(それだけで、なんだか、この店がもっと好きになれる)
翠の胸の奥が、じわりと温かくなった。
「おい、翠さん」
突然、低い声がした。
振り返ると、常連客の宍戸平六が、カウンターの向こうに立っていた。不動産屋を営む、老年の男性だ。
「あら、宍戸さん。いらっしゃいませ」
翠は、笑顔で挨拶した。
「ああ。……なあ、翠さん。この間も話したが、最近、この店の周りをうろつく男がいるらしい」
宍戸は、声を潜めて言った。
翠の胸が、どきりと跳ねた。
「……まだ、いるんですか?」
「ああ。若い男で、夜中に、この路地をうろうろしてるらしい。住人の誰かが、警察に通報しようかって話してたんだ」
宍戸は、真剣な顔でうなずいた。
「翠さん、あんたも気をつけなさい。若い女性が一人で店をやってるんだ。何かあってからじゃ遅いぞ」
「……はい。ありがとうございます。気をつけます」
翠は、平静を装って答えた。
でも、心の奥に、冷たいものが流れ込んでくるのを感じていた。
(不審な男……)
(プンプンくんが来た頃から、そんな話が出始めた)
(何か、関係があるの?)
翠は、掃除をしているプンプンの背中を、ちらりと見た。
プンプンは、何も知らないかのように、黙々と床を掃いていた。
その夜。
翠は、リビングでプンプンと向かい合って、夕食をとっていた。
メニューは、昨日の肉じゃがの残りと、卵焼き、それにサラダ。
「……ねえ、プンプンくん」
翠は、思い切って口を開いた。
プンプンが、箸を止めて、翠を見る。
「……雄一さんから、何か連絡あった?」
翠の声は、自分でも驚くほど、か細かった。
プンプンは、少しの間、翠の顔を見つめていた。
それから、小さく、首を横に振った。
「……そっか」
翠は、笑おうとした。
でも、うまく笑えなかった。
口元が、ひきつるように震える。
(また、笑えなかった)
(プンプンくんの前で、こんな顔、したくなかったのに)
翠は、俯いて、ごはんを口に運んだ。
味が、しなかった。
深夜。
翠は、喉の渇きを覚えて、目を覚ました。
枕元の時計を見ると、午前二時を回っている。
(水、飲もう)
翠は、ベッドから起き上がり、台所へ向かった。
廊下に出た瞬間、翠は、足を止めた。
(……声?)
プンプンの部屋から、かすかな話し声が聞こえてくる。
(誰かと、電話してる?)
翠は、息を潜めて、プンプンの部屋のドアに近づいた。
ドアの隙間から、プンプンの声が、微かに漏れてくる。
「……まだ、帰らないの?」
翠の心臓が、大きく跳ねた。
(帰らない?)
(誰に言ってるの?)
(まさか……雄一さん?)
翠は、ドアに耳を近づけた。
でも、それ以上、プンプンの声は聞こえなかった。
かわりに、電話を切る、かすかな電子音が聞こえた。
(切った)
翠は、その場に立ち尽くした。
(プンプンくんは、雄一さんと連絡を取ってる)
(なのに、私には「連絡ない」って……)
(どうして、嘘をつくの?)
翠の胸の奥が、きゅうっと音を立てて、締めつけられた。
(問い詰めたい)
(今すぐ、このドアを開けて、問い詰めたい)
でも、翠は、それができなかった。
(怖い)
(真実を知るのが、怖い)
翠は、ゆっくりと、その場を離れた。
台所で水を飲む。
冷たい水が、喉を通っていく。
でも、心の奥の冷たさは、ちっとも消えなかった。
翌日。
翠は、店のカウンターに立っていた。
昨日の夜のことが、頭から離れない。
(プンプンくんは、今朝も、何も言わなかった)
(普通に、弁当を受け取って、行ってらっしゃいって見送った)
(あの電話のことは、何も)
翠は、ため息をつきそうになって、慌てて笑顔を作った。
(お店に立ってる時は、笑顔でいなきゃ)
(お客様に、心配かけちゃいけない)
翠は、コーヒーを淹れながら、自分に言い聞かせた。
カランカラン、とドアベルが鳴った。
「いらっしゃいませ」
翠は、笑顔で顔を上げた。
そこに立っていたのは、若い女性だった。
黒い髪を、肩のあたりで切りそろえている。細いフレームの眼鏡をかけていて、口元には小さなほくろがあった。スレンダーな体つきで、落ち着いた雰囲気を漂わせている。
(あら、初めて見るお客様かしら)
翠は、そう思いながら、カウンターの向こうに立った。
「いらっしゃいませ。お好きな席へどうぞ」
女性は、店内をぐるりと見回した。
それから、カウンター席ではなく、窓際のテーブル席に座った。
翠は、お冷やを持って、女性の席へ向かった。
「お決まりになりましたら、お呼びください」
「ええ、ありがとうございます」
女性は、静かな声で言った。
その声は、どこか冷たさを感じさせるのに、不思議と耳に心地よかった。
翠は、カウンターに戻り、女性の様子をちらりと窺った。
(綺麗な人……)
(それに、どこか、大人びてる)
(年齢は、私と同じくらいかしら)
翠は、そんなことを考えながら、コーヒーカップを磨いていた。
しばらくして、ドアベルがまた鳴った。
「いらっしゃいませ」
翠が顔を上げると、そこにはプンプンが立っていた。
「あら、プンプンくん。おかえりなさい。ちょうどよかったわ、お店、手伝ってくれる?」
翠が声をかけると、プンプンは、こくん、とうなずいた。
その時、窓際の席に座っていた女性が、立ち上がった。
「あら、プンプン」
女性は、プンプンに向かって、親しげに声をかけた。
翠の心臓が、どきりと跳ねた。
(え?)
(この人、プンプンくんを知ってるの?)
プンプンは、女性の方を向いて、小さくうなずいた。
「久しぶりね。元気にしてた?」
女性は、プンプンのそばに歩み寄り、彼の頭を軽く撫でた。
その仕草は、あまりにも自然で、二人の間に、翠の知らない時間が流れていることを、はっきりと感じさせた。
「……うん」
プンプンは、小さく答えた。
翠は、カウンターの奥で、その光景を、ただ見つめていた。
(この人、誰?)
(プンプンくんと、どういう関係?)
(なんで、プンプンくんの頭を、あんなに気軽に触るの?)
翠の胸の奥に、ざらざらした感情が、ゆっくりと広がっていく。
(私、何を考えてるの)
(プンプンくんは、私の子供じゃない)
(ただ、預かってるだけ)
(なのに、どうして、こんなに動揺してるの)
翠は、自分の感情に、自分で戸惑っていた。
「はじめまして。私、南条と申します」
女性は、翠に向かって、丁寧に頭を下げた。
「あ、はい。大隈翠と申します」
翠は、慌てて頭を下げた。
「プンプンが、お世話になっていると聞きました。本当にありがとうございます」
南条は、口元にほんの少しだけ笑みを浮かべて言った。
「……いえ、そんな。私こそ、プンプンくんには、いつも助けてもらってます」
翠は、そう答えながら、南条の顔を見た。
(この人、プンプンくんの何なんだろう)
(親戚? それとも……)
「実は、今日は、プンプンを迎えに来たんです」
南条の言葉に、翠の心臓が、大きく跳ねた。
「……迎えに?」
「ええ。そろそろ、私のところで預かろうと思いまして」
南条は、静かな口調で言った。
「プンプンも、そのつもりで、ここに来たんです」
翠は、プンプンを見た。
プンプンは、黙って、南条の隣に立っていた。
黒い点の目が、翠を見つめている。
でも、その目は、何も語っていなかった。
(プンプンくん、この人と一緒に行くの?)
(ここを、出て行くの?)
翠の頭の中が、真っ白になった。
「……そう、なんですね」
翠は、笑顔を作った。
口元を、無理やり、持ち上げる。
右の口元に、えくぼが浮かぶ。
「……良かったわ。プンプンくん、ちゃんと面倒を見てくれる人がいて」
翠は、そう言った。
でも、心の中では、まったく違うことを叫んでいた。
(嫌)
(行かないで)
(この子を、連れて行かないで)
(私の、そばにいて)
翠は、自分の心の奥底から、そんな声が聞こえてくるのを感じた。
(私、何を考えてるの)
(この子は、私のものじゃない)
(なのに、どうして、こんなに嫌なの)
(どうして、手放したくないなんて思ってるの)
翠は、罪悪感で、胸が押しつぶされそうだった。
「それじゃあ、プンプン。行きましょうか」
南条は、プンプンに声をかけた。
プンプンは、翠の方を、ちらりと見た。
それから、南条の隣に、一歩近づいた。
「……色々と、本当にありがとうございました」
南条は、翠に頭を下げた。
「……いえ。こちらこそ、何もできなくて」
翠は、笑顔のまま、頭を下げた。
南条は、プンプンの手を取って、店のドアへ向かった。
プンプンは、振り返らなかった。
カランカラン、とドアベルが鳴った。
二人の姿が、店の外に消えていく。
翠は、カウンターの奥で、立ち尽くしていた。
(行っちゃった)
(プンプンくん、行っちゃった)
翠の手が、震えていた。
カウンターに手をついて、必死に体を支える。
(なんで、私、こんなに震えてるの)
(たった一週間、一緒にいただけなのに)
(たった一週間、同じ食卓を囲んだだけなのに)
翠の目から、涙がこぼれ落ちた。
熱い涙が、頬を伝って、カウンターに落ちる。
(私、この子のこと、何も知らないのに)
(名前だって、雄一さんから聞いただけで)
(でも、でも)
翠は、声を殺して、泣いた。
その夜。
翠は、一人で食卓に座っていた。
目の前には、一人分のごはんと、一人分の味噌汁。
湯気が、細く立ち上っている。
(一人だ)
(また、一人に戻った)
翠は、箸を取った。
でも、食べる気になれなかった。
その時、翠のスマホが震えた。
画面を見ると、雄一からのメールだった。
『明日、帰る』
それだけだった。
翠は、スマホを握りしめた。
(雄一さんが、帰ってくる)
(今更、帰ってくる)
翠の心の中に、安堵と不安が、同時に湧き上がった。
(良かった。無事だった)
(でも、なんで今なの?)
(プンプンくんが出て行った、今日)
翠は、スマホを置いて、一人分の夕食を見つめた。
味噌汁の湯気が、もう、消えかかっていた。
(私、これから、どうすればいいんだろう)
翠は、静かに、箸を置いた。
窓の外では、雨が降り始めていた。
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