真白の記憶、茜の想い
『ごめんね、ましろ君』——忘れていた声が、深夜の配信終わりに蘇る。
ミナモ大学心理学部二年のましろは、都市伝説の検証配信を生業にしていた。ホラーは怖くない、むしろわくわくする。そんな彼の機材が、ある夜、勝手に起動した。映し出されたのは、知らないはずの記憶。白い天井、消毒液の匂い、誰かに手を引かれて走る自分。そして、泣き出す寸前みたいな、女性の声。
「オレは、何を忘れてるんだ——」
その頃、ましろが秘密組織クロノス機関に監視されていることを、彼だけが知らなかった。失われた記憶、揺れる能力、冷たい水しか喉を通らない奇妙な癖。すべては、2年前に消された何かへと繋がっている。
明日、あの声の主がましろの前に現れる。学園×青春×記憶ミステリー、開幕。
真白の記憶、茜の想い - 奈羅花の警告と、茜の告白——嘘が崩れる夜
雨が、降っていた。
ましろ爻は、古い一軒家の窓から、降りしきる雨をぼんやりと眺めていた。黒髪のショートヘアが、湿った空気を吸って、いつもより重たく感じる。黄色い瞳は、窓ガラスを伝う水滴を追いかけていた。安全ピンの髪飾りが、薄暗い室内で、かすかに光を反射している。
(また、雨か)
彼は心の中で、そう呟いた。
ミナモ市の東部、古びた住宅街の一角。ましろの家は、そこにひっそりと建っていた。周囲の家々からは、明かりが漏れている。けれど、ましろの家だけは、まるで廃墟のように暗く、静かだった。
大学の図書館で茜灯に出会ってから、数日が経っていた。あの夜、ネオン・ストリートの裏通りで、スーツ姿の男たちに追われた夜。茜の手を引いて、必死に路地裏を駆け抜けた夜。
あの時、茜は言った。
『私、君を守りたいんだ』
あれは、どういう意味だったのだろう。先輩として、後輩を守りたいという、ただの親切心だったのか。それとも、もっと別の、何か。
ましろは、考えるのをやめた。
(深く考えても、仕方ない)
彼は、リビングの床に座り込み、膝の上で丸くなっている二匹の猫に目をやった。三毛猫のぱわこと、黒猫のニア。二匹は兄妹で、ましろが大学に入学した頃から一緒に暮らしている。
ぱわこが、にゃあ、と小さく鳴いた。
「……なんだい、ぱわこ。お腹でも空いたのかい」
ましろは、ぱわこの頭を優しく撫でた。ふわふわとした毛並みが、指先に心地よい。ニアは、少し離れた場所から、じっとましろの様子を窺っていた。
その時だった。
ピンポーン、と、古びたインターホンが鳴った。
ましろは、ぴくりと体を震わせた。
(誰だ? こんな時間に)
時計を見ると、午後七時を少し回ったところだった。夜と呼ぶには早い時間だが、ましろの家を訪ねてくる人間など、ほとんどいない。ましてや、こんな雨の日に。
彼は、のろのろと立ち上がり、玄関へ向かった。
ドアを開けると、そこには、一人の女性が立っていた。
黒髪のロングヘアを、いつものように三つ編みにしている。紫がかった黒い瞳が、ましろをまっすぐに見つめていた。手には、小さな手帳が握られている。
「……奈羅花」
ましろは、その名前を、かすれた声で呼んだ。
「久しぶり、ましろ」
奈羅花は、落ち着いた低い声で、そう言った。
彼女は、ましろの元同期だった。にじさんじ所属のVTuber、見習いの獄卒。ましろと奈羅花、そして来栖夏芽の三人は、かつて「まななつ」というユニットを組んでいた。けれど、奈羅花は、昨年の十一月に卒業していた。
「……どうしたの、急に。連絡もなしに」
ましろは、困惑しながら尋ねた。
「話があるの。中に入れてくれる?」
奈羅花の表情は、真剣そのものだった。彼女は、いつもそうだ。真面目で、責任感が強くて、仲間思い。ましろのことを、手のかかる同期として、いつも心配してくれていた。
「……うん、いいよ。散らかってるけど」
ましろは、奈羅花をリビングへ通した。
奈羅花は、部屋の中を見渡し、小さくため息をついた。
「相変わらずね。ここ、本当に人が住んでるの?」
「失礼だな。ちゃんと住んでるよ」
「そう? 廃墟にしか見えないけど」
奈羅花は、積み上げられた段ボール箱の山を、じっと見つめた。箱の中には、ましろが収集した都市伝説の資料や、配信機材が乱雑に詰め込まれている。
「それで、話って何?」
ましろは、床に座り、奈羅花に座布団を差し出した。
奈羅花は、座布団に腰を下ろし、手帳を開いた。
「ましろ。あんたの配信、最近、変なノイズが入ってるって知ってる?」
「ノイズ?」
ましろは、首を傾げた。
「ええ。配信アーカイブを確認したの。特定の時間帯に、必ず同じ波形のノイズが混入してる。それから、フレーム単位で、一瞬だけ、見知らぬ人物の影が映り込んでる」
奈羅花は、手帳にびっしりと書き込まれたメモを、ましろに見せた。そこには、波形のグラフや、時間帯の記録、そして、不審な影の特徴が、几帳面な字で記されていた。
「……奈羅花、これ、全部自分で調べたの?」
ましろは、その手帳の内容のあまりの具体的さに、内心、動揺していた。
「卒業してから、時間があったからね。あんたの配信、全部見返したのよ。そしたら、この異常に気づいた」
奈羅花は、淡々とした口調で続けた。
「このノイズの波形、普通の機材トラブルじゃない。意図的に、外部から信号を割り込ませた時に出るパターンよ。それに、この影の映り込み方。これは、監視システムのカメラが、一瞬だけ誤作動を起こした時に見られる現象に酷似してる」
「監視システム……?」
ましろの声が、少しだけ震えた。
「ええ。私、このパターンに見覚えがあるの。あんたの配信だけじゃない。あんたの周辺で、不審な車両が目撃されたっていう情報も、いくつか集めたわ」
奈羅花は、手帳の別のページを開いた。そこには、車のナンバープレートの一部や、目撃された場所と時間が、詳細に記録されていた。
「第7研究所。記憶改変技術の噂。あんたの家の周りをうろつく、黒い車。これらが、全部、偶然だと思う?」
奈羅花の紫がかった黒い瞳が、ましろを射抜くように見つめる。
「……奈羅花、何が言いたいの?」
ましろは、乾いた唇を舐めた。
「ましろ、あんた、何かに巻き込まれてる。一人で抱え込まないで」
奈羅花は、真剣な表情で、ましろにそう告げた。
その言葉は、ましろの胸の奥に、重く突き刺さった。
(何かに巻き込まれてる……?)
ましろは、心の中で、奈羅花の言葉を反芻した。
確かに、最近、おかしなことばかり起きている。配信中のノイズ。あの夜の、スーツ姿の追手。茜の、あの不可解な言動。
けれど、ましろは、それらを認めたくなかった。
「大丈夫だよ。ただの都市伝説のネタだし」
ましろは、無理に笑みを作って、そう言った。
「……ましろ」
奈羅花は、悲しそうな目で、ましろを見つめた。
「私は、あんたのことを、ただの都市伝説好きの変人だとは思ってない。あんたは、昔から、そういうところがあった。面倒くさがりで、人に頼るのが下手で、何でも一人で抱え込もうとする。でも、今回は、そういう問題じゃない気がするの」
奈羅花は、手帳を閉じ、立ち上がった。
「私は、卒業したけど、同期のことは見捨てないからね。何かあったら、すぐに連絡して」
そう言い残し、奈羅花は、雨の中へと帰っていった。
ましろは、玄関のドアを閉め、その場に立ち尽くした。
(見捨てない、か)
奈羅花の言葉が、頭の中で、こだまする。
彼女は、昔からそうだった。口数は少ないけれど、仲間のことを、誰よりも気にかけている。ましろが無茶をすると、いつも「はあ……」とため息をつきながら、それでも、最後まで面倒を見てくれた。
(ありがたいけど……)
ましろは、リビングに戻り、再び床に座り込んだ。
ぱわこが、心配そうに、ましろの膝の上に乗ってきた。ニアも、少しだけ近づいてきて、ましろの足元に丸くなる。
「……大丈夫だよ。僕は、大丈夫」
ましろは、猫たちに言い聞かせるように、そう呟いた。
けれど、彼の心の中は、ざわざわと波立っていた。
奈羅花の手帳に書かれていた内容。それは、あまりにも具体的で、現実的だった。都市伝説のネタとして片付けるには、あまりにも生々しい情報だった。
(第7研究所……記憶改変技術……)
ましろは、それらの言葉を、心の中で繰り返した。
どこかで、聞いたことがあるような気がする。いや、気のせいだ。そんなはずはない。
彼は、頭を振り、その考えを追い出そうとした。
その時だった。
ドンドンドン、と、玄関のドアを激しく叩く音が響いた。
インターホンは鳴らなかった。直接、ドアを拳で叩いている。
ましろは、心臓が、どくりと跳ねるのを感じた。
(また誰か……?)
彼は、恐る恐る、玄関へ向かった。
ドアを開けると、そこには、ずぶ濡れの茜灯が立っていた。
明るい栗色のセミロングが、雨に濡れて、顔に張り付いている。琥珀色の大きな瞳は、赤く腫れていた。彼女は、泣いていた。
「……茜さん」
ましろは、驚きのあまり、声を失いかけた。
茜は、顔を上げ、ましろを見つめた。その目からは、涙が、雨と混ざり合って、止めどなく溢れ出していた。
「ごめんね、ましろ君。私、ずっと、嘘をついてたの」
茜は、震える声で、そう切り出した。
ましろは、茜をリビングへ連れて行き、タオルを渡した。
茜は、タオルで濡れた髪を拭きながら、ぽつりぽつりと、語り始めた。
「私、元クロノス機関の記憶管理者だったの」
「……クロノス機関?」
ましろは、その言葉を聞いた瞬間、奈羅花の手帳に書かれていた内容が、脳裏をよぎった。
「そう。記憶の抽出や改変、移植を研究してる、秘密組織。表向きは、睡眠研究の民間研究所ってことになってるけど、本当は、もっと、恐ろしいことをしてる」
茜の声は、普段の明るい口調とは打って変わって、低く、沈んでいた。
「記憶管理者っていうのは、その組織の中で、記憶を操作する技術者のこと。私、その役職に就いてた。ましろ君と出会う、ずっと前から」
茜は、俯き、ぎゅっとタオルを握りしめた。
「二年前。ましろ君が、組織に捕まった。そして、記憶消去の実験を施された。私、その実験に、立ち会ってたの」
ましろの呼吸が、止まった。
「……僕が、捕まった? 記憶を、消された?」
ましろは、自分の声が、遠くから聞こえてくるような感覚に陥った。
「うん。ましろ君の記憶の一部は、クロノス機関の技術によって、消去された。副作用で、他の記憶も、ところどころ欠落してる。それが、ましろ君が、自分の過去をうまく思い出せない理由」
茜は、涙を拭いながら、続けた。
「でも、私は、耐えられなくなった。ましろ君が、記憶を奪われて、苦しんでいる姿を見るのが。だから、組織に内緒で、ましろ君を逃がした。……それが、二年前の、真実」
ましろは、茜の言葉を、頭の中で、必死に整理しようとした。
クロノス機関。記憶管理者。記憶消去の実験。自分が、その被害者だったということ。そして、茜が、自分を逃がした共犯者だったということ。
「じゃあ……君が、僕に近づいてきたのは、偶然じゃなかったんだね」
ましろは、絞り出すような声で、尋ねた。
「……うん。偶然を装って、近づいた。ましろ君の配信を、ずっと見てた。大学のことも、調べた。それで、図書館で、偶然を装って、声をかけた」
茜は、罪悪感に押しつぶされそうな声で、そう答えた。
「全部、嘘だったんだ。あの笑顔も、あの言葉も、ぜんぶ」
ましろの声は、怒りと混乱で、震えていた。
「違う! 全部が嘘だったわけじゃない!」
茜は、顔を上げ、ましろを必死に見つめた。
「私は、ましろ君を逃がした後、ずっと、ましろ君のことを見てた。配信も、全部見てた。ましろ君が、都市伝説を追いかけて、深夜の街を歩く姿を、ずっと、見守ってた。それで、気づいたの。私は、ましろ君のことが、好きになってた」
茜の告白は、ましろの心を、鋭く突き刺した。
「……好き?」
ましろは、呆然と、茜を見つめた。
「うん。好き。ましろ君のことが、好き。だから、逃がしたの。組織に逆らってでも、ましろ君を助けたかった。……ごめんね、ましろ君。私、ずっと、嘘をついてた。許してほしいなんて、思ってない。でも、もう、嘘はつかない。これだけは、信じてほしい」
茜は、泣きながら、そう訴えた。
ましろは、茜の言葉を、信じることができなかった。
いや、信じたくなかった。
(僕の記憶を消した組織の一員だった? 僕を逃がした共犯者? 僕のことが好きだから?)
そんな都合のいい話が、あるはずがない。
「じゃあ、あの声も、あの記憶も、全部、お前のせいだったのかよ」
ましろは、怒りを込めて、茜に詰め寄った。
「あの夜、配信の後に、僕の頭に流れ込んできた、あの女性の声。『ごめんね、ましろ君』って。あれも、お前が、何かしたのか?」
茜は、ましろの剣幕に、ひるみながらも、否定しなかった。
「……あれは、ましろ君の記憶の断片。消去された記憶が、何かの拍子に、蘇りかけてる。私の声が、ましろ君の記憶を、刺激してるのかもしれない」
茜の説明は、ましろの怒りを、さらに煽った。
「お前のせいで、僕は、自分の記憶を失った。お前のせいで、僕は、自分が誰なのか、分からなくなってる。それなのに、お前は、僕のそばにいて、僕を守るだって? ふざけるな!」
ましろは、感情のままに、叫んだ。
「ごめんなさい……ごめんなさい……」
茜は、ただ、泣きながら、謝り続けた。
リビングに、重い沈黙が流れた。
雨音だけが、部屋の中に、静かに響いていた。
ぱわことニアは、ましろと茜の間に挟まれて、不安そうに、小さく鳴いていた。
「……出て行ってくれ」
ましろは、背を向け、茜にそう告げた。
「今すぐ、出て行ってくれ。僕は、お前の顔を見てると……何が本当か、分からなくなる」
ましろの声は、冷たく、突き放すような響きだった。
茜は、しばらく、その場に立ち尽くしていた。
けれど、やがて、ゆっくりと、玄関へ向かった。
「……ましろ君」
茜は、玄関のドアの前で、一度だけ、振り返った。
「奈羅花さんが、来てたんでしょ。……気をつけて。組織が、もう、動き出してるから」
茜は、そう言い残し、雨の中へと、消えていった。
ましろは、閉めたドアに背を預け、その場に、ずるずると座り込んだ。
「……オレ、何も分かんねえよ」
彼は、膝を抱え、小さく呟いた。
ぱわことニアが、心配そうに、ましろの膝の上に乗ってきた。二匹の温もりが、ましろの冷え切った心を、ほんの少しだけ、温めてくれた。
奈羅花の警告。茜の告白。
どちらが本当なのか。それとも、両方、本当なのか。
ましろは、頭を抱え、ただ、雨音を聞いていた。
――同じ頃。
茜は、ましろの家から少し離れた、人気のない路地に、一人で立ち尽くしていた。
雨は、彼女の全身を、容赦なく打ち付けていた。
その時、彼女のスマートフォンが、震えた。
画面に表示された名前を見て、茜の心臓が、凍りついた。
『玄葉』
クロノス機関の幹部。茜のかつての上司。ましろの記憶を消した実験の、責任者。
茜は、震える指で、通話ボタンを押した。
切ることが、できなかった。
「やあ、茜君。久しぶりだね」
受話器の向こうから、穏やかで、それでいて、底知れない冷たさを孕んだ声が聞こえてきた。
「……何の用ですか」
茜は、声が震えるのを、必死に抑えながら、尋ねた。
「何の用? それは、こちらの台詞だよ。君は、組織を裏切った。そして、今も、対象M——ましろ爻のそばにいる。それだけで、十分、用はある」
「私は、もう、組織には戻りません」
茜は、きっぱりと、そう言った。
「そう言うと思ったよ。だがね、茜君。君は、自分の置かれている状況を、理解していない。君がましろ爻のそばにいる限り、彼の記憶のリコールは、促進され続ける。それは、我々にとって、好都合なんだ。そして、君にとっても、ね」
「どういう、意味ですか」
茜の声は、恐怖で、かすれていた。
「戻っておいで、茜君。君の才能は、まだ必要だ。それに……ましろ爻の記憶が完全に戻る前に、君が彼のそばにいるのは、彼のためにならないだろう?」
玄葉の言葉は、茜の心を、じわじわと、締め付けていった。
「私は……もう戻らない」
茜は、絞り出すように、そう言った。
けれど、その声は、明らかに震えていた。
「君が彼を守りたいなら、なおさらだ。君がそばにいればいるほど、彼の記憶は呼び覚まされ、そして、我々の追手は、彼を確実に捕捉する。君は、彼を危険にさらしているんだよ。……分かるね?」
玄葉の一言一言が、茜の心を、深く、深く、えぐっていった。
茜は、言葉を失った。
「では、また連絡する。良い返事を期待しているよ」
通話は、一方的に切れた。
茜は、その場に、しゃがみ込んだ。
スマートフォンを握りしめたまま、動けなかった。
雨が、彼女の体を、冷たく打ち続けていた。
――ましろの家の外。
雨の降る道路を挟んだ、向かいの路地。
黒いセダンが、静かに停車していた。
車内には、スーツ姿の男が二人。
一人は、望遠カメラで、ましろの家の窓を覗いていた。
「対象C、離脱確認。対象M、自宅に孤立。玄葉様の指示を仰ぐ」
もう一人が、無線機に向かって、小声で報告した。
「了解。対象Mの動向を、継続監視せよ。強行手段に出るのは、明日だ。家ごと押さえる。それまで、対象Mを刺激するな」
「了解」
望遠カメラのレンズ越しに、ましろの家のリビングが見えた。
そこには、猫とともに、床に座り込んでいる、ましろの姿があった。
「……明日、か」
追手Aは、カメラを下ろし、雨に濡れたフロントガラスを、じっと見つめた。
「あの男、まだ、自分が何者か、分かってないんだろうな」
「さあな。だが、もうすぐ、すべてを思い出す。玄葉様が、そうお望みなら」
二人は、それきり、黙り込んだ。
雨音だけが、車内に、静かに響いていた。
ましろと茜、両方に、危険が、静かに、しかし確実に、迫っていた。
ましろは、まだ、そのことを、知らなかった。
彼は、ただ、雨音を聞きながら、猫たちの温もりを、感じていた。
「……どうすれば、いいんだろうな」
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