時をかける猫 全10話 ―時間の隙間を、猫だけが知っている― - 再会:半年ぶりの再会。ベルの音が、ふたりをまた繋ぐ
達也が町に来るのは、半年に一度くらいだと、メッセージのやり取りでわかった。今度、用事があって寄るという。涼太は、ハル坂で待ち合わせた。
達也は前より背が伸びていた。制服も違う学校のものだった。
「お前、変わったな」
「お前もだろ」
二人とも、それ以上は言わなかった。坂の途中、苔の境目に、猫が座っていた。
「お前、まだそこにいるのか」
達也が猫に声をかけた。猫は答えずに、こちらを見ていた。
「鳴らないんだよな、こいつ」
「鳴く猫じゃないんだろ」
二人は坂を並んで上った。涼太は立ち漕ぎで、達也は新しい自転車で。ベルの音が、二回鳴った。涼太のものと、達也のもの。少しだけ、音が違った。
「お前のベル、なんか聞いたことある音だな」
「そうか?」
涼太はベルを鳴らさずに、答えをはぐらかした。坂の上で、二人は自転車を止めた。
「俺、来年こっちに戻るかもしれない」
達也がそう言った。涼太は驚かなかった。
「親父の仕事、また変わるのか」
「いや、俺が頼んだ。じいちゃんの家、こっちにあるから、そこから通うって手もあるって」
「お前が、頼んだのか」
「うん。なんか、こっちのこと、最近ずっと考えてて」
涼太は何も言わなかった。坂下サイクルの看板が、坂の下に見えた。
「あそこ、まだあるんだな」
達也が看板を指した。
「お前、知ってたのか、あの店」
「親父のベル、あそこで直してもらったことある」
涼太はその言葉に、何も言わなかった。聞きたいことはあったが、聞かなかった。
坂の途中の猫が、立ち上がって、塀の方へ歩いていった。
「あいつ、今日も気まぐれだな」
「いつもそうだよ」
達也は猫を見送って、それから坂の先を見た。
「俺、来年、また一緒に走れたらいいなって思ってる。お前が今もやってるなら」
「やってるよ」
「そっか」
それだけの会話だった。涼太は、ベルをもう一度鳴らした。今度は、はっきり聞こえた。
苔の境目には、もう猫はいなかった。風だけが、坂を吹き上げていった。Noveliaとは?
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