絶体絶命ルビー・クールの逆襲<帝都大乱編>
十九世紀末の欧州。
クリスマスの二週間ほど前の土曜日、極悪テロ組織「無産者革命党」が、帝都平民区で一斉蜂起した。いわゆる「帝都大乱」の勃発である。警察機能は停止し、街は無法地帯と化した。
赤毛の美少女ルビー・クールは、平民区の孤児院で慈善活動をしていたときに、無産者革命党に襲撃される。孤児院の子どもたちを人質に取られたルビー・クールは、絞首刑台広場に連行される。広場を埋め尽くしているのは、無産者革命党の党員や支持者の男たち1万人以上。
ルビー・クールは、首に絞首刑用ロープをかけられ、処刑直前の状況だ。
無産者革命党の司令官は、ルビー・クールと共に、孤児院の子どもたちも処刑することを宣言した。
孤立無援で絶体絶命の窮地の中、孤児院の子どもたちを救うため、死刑台の上から今、ルビー・クールの逆襲が始まる。
絶体絶命ルビー・クールの逆襲<帝都大乱編> - 第六章 女革命家登場で絶体絶命<第一話>
<第六章 第一話>
ルビー・クールが、尋ねた。
「なぜかしら?」
労農革命党員の中年小男が、答えた。
「銃火器店の周囲は、無産者革命党の部隊に包囲されている。人数は、おそらく千名だ」
「包囲っていうことは、まだ占拠されていないのね。店員が、がんばっているのかしら?」
「いや、あいつらは店員じゃない。人数も多すぎるし、射撃が正確だ。その上、人を射殺するのに、躊躇しない。あいつらは絶対、元軍人で戦争経験者だ。オレもそうだから、よく分かる」
「あたしの父も、前回の戦争に従軍したわ。地獄の戦場だったそうね」
「ああ。戦線によってはな」
「それで、その元軍人は、店に雇われたのかしら?」
「たぶん、違う。あれだけの人数を雇う資金は、あの店にはないはずだ。やつらはおそらく、自由革命党に雇われたプロの戦闘員だ」
自由革命党は、大資本家たちが結成した非合法組織で、貴族政を打倒し、ブルジョア革命の実現を目指している。
労農革命党とは、古くから犬猿の仲だ。
なるほど、そういうことか。ルビー・クールは、状況を理解した。
無産者革命党は、銃火器店を占拠して、銃と弾丸を入手しようと計画した。それを阻止するために、自由革命党が、先に店を占拠した。高級住宅街が、銃を持った大軍に攻撃されることを阻止するために。労農革命党も、銃火器店を占拠しようとしたが、無産者革命党が先に店を包囲した。そこで、その周囲に見張りを置いて、情報収集をしているのだろう。
「ねえ、同志。あなたたちの革命家名は?」
中年小男はホイールで、若いやせた男はナットだった。彼らが把握している情報を、いろいろと教えてもらった。
自由革命党は、高級住宅街を抱える北西エリアの周囲に、馬車の車体などを連ねてバリケードを設置し、銃を持った戦闘員を配備している。ここ北東エリアから、南北大通りを横切り、北西エリアに向かおうとすると、銃撃される。南北大通りの中央分離帯付近で。
南三区警察署の本署は、南北大通りと東西大通りの交差点近くにある。エリアとしては南西エリアの南北大通り沿いだ。無産者革命党数千人が、本署を遠巻きに包囲し、膠着状態となっている。無産者革命党は、本署を急襲し、一気に制圧する計画だったようだ。
だが、急襲は失敗した。署長が事前に、銃の使用を警官たちに許可し、警戒していたためだ。無産者革命党側は、警官たちの銃撃で、多数の死傷者を出したようだ。
「今回に限っては、自由革命党と、共闘するのが得策ね」
ルビー・クールのその言葉に、若い男ナットが、声を荒げた。
「なにバカなこと言ってるんだ、同志ルビー・クール。資本家は、我々労働者の敵だぞ」
どうやらナットは、ルビー・クールのことを、労農革命党の党員だと思い込んでいるようだ。
十月の市長暗殺未遂事件のあと、労働者向けの新聞では、ルビー・クールのことを、労農革命党の秘密工作員のように報道していた。以前から作業員として潜入していた労農革命党男性工作員たちと共に、自由革命党が設置した時限爆弾を撤去し、自由革命党の狙撃手を取り押さえたのだから、その説明が一番理解しやすい。
その誤解は、今は都合が良い。誤解をそのまま放置し、そう思わせておくことにした。
「敵の敵とは、共闘できるわよ」
「そうかもしれんが」
中年男のホイールが、口を挟んだ。
「どうやって、自由革命党を説得するんだ?」
「あたしたちには、共通の目的があるわ」
「そんなのあるのか?」
ナットが、訝(いぶか)しげな顔で尋ねた。
「あたしたちの街(まち)を取り戻す。無法者たちの手から、あたしたちの手に。それが今回の、あたしたち全員の共通の目的よ」
「オレたちの街、か」
ホイールが、唸った。
すかさずルビー・クールが、たたみかけた。
「そうよ。この街は、あたしたちが生まれ育った、あたしたちの街よ。所有権なんて、関係ないわ。この街が、この街に住む人々が、あたしたちの故郷よ」
その言葉で、ホイールが少し興奮した面持ちになった。
「そうだ。土地所有権なんて、関係ない。この街に住む労働者は皆、仲間だ。オレたちは、この街は、一つの共同体なんだ。だからこの街は、オレたちの街なんだ」
ナットも、顔が紅潮してきた。
「そうだ、この街は、オレたちの街だ。オレも、この街で生まれ育った。北東エリアの第六ブロックだ。同志ルビー・クール、あんたは、どこのブロックだ?」
まずい、まずい、まずい。とてもまずい展開だ。ここは、うまくごまかさないと。Noveliaとは?
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