絶体絶命ルビー・クールの逆襲<帝都大乱編>
十九世紀末の欧州。
クリスマスの二週間ほど前の土曜日、極悪テロ組織「無産者革命党」が、帝都平民区で一斉蜂起した。いわゆる「帝都大乱」の勃発である。警察機能は停止し、街は無法地帯と化した。
赤毛の美少女ルビー・クールは、平民区の孤児院で慈善活動をしていたときに、無産者革命党に襲撃される。孤児院の子どもたちを人質に取られたルビー・クールは、絞首刑台広場に連行される。広場を埋め尽くしているのは、無産者革命党の党員や支持者の男たち1万人以上。
ルビー・クールは、首に絞首刑用ロープをかけられ、処刑直前の状況だ。
無産者革命党の司令官は、ルビー・クールと共に、孤児院の子どもたちも処刑することを宣言した。
孤立無援で絶体絶命の窮地の中、孤児院の子どもたちを救うため、死刑台の上から今、ルビー・クールの逆襲が始まる。
絶体絶命ルビー・クールの逆襲<帝都大乱編> - <第六章 第三話>
<第六章 第三話>
「待ちなさい」
少女の声だった。
視線を向けた。銀髪の美少女がいた。自由革命党の女革命家ダリアだ。
「その赤毛の女とは、休戦条約を結んだのよ」
「お嬢、いつの間に、そんな展開に?」
金髪大男は驚いた表情で、そう尋ねた。
「先々週よ。帝国魔法学園の校舎内で、偶然再会したのよ」
店内は、広かった。玄関を入ると、横に長い長方形の玄関ホールが広がっている。正面と、左右に、拳銃が展示されたショーケースが並んでいる。玄関ホールの中央付近には、ソファーが、いくつか置かれている。奥の壁には、ライフル銃や散弾銃が展示してある。
正面のショーケースの奥には、カウンターとレジがある。その奥には、ドアが二つある。二つとも開いている。左のドアの奥の部屋は、弾薬や高価な銃の保管室のようだ。右のドアの先には、地下や二階へ続く階段が見えた。
ダリアも金髪大男も、正面のカウンターの奥にいる。ダリアと金髪大男の左右には、それぞれ二名ずつ、計四名のスーツ男がいた。高そうなスーツとネクタイを身につけているのだが、全員、目つきが鋭すぎるため、紳士に変装した殺し屋のようにしか見えない。
ダリアが、ルビー・クールに視線を向けた。
「あなた、なんだってこんなひどい日に、こんなところに来たの?」
「共闘の交渉に来たのよ」
「共闘?」
「ええ。あたしたちの街を、無法者から取り戻すために」
「共闘って、あなたと?」
「あたしと、労農革命党よ。それに、マフィアも加わるかも」
ダリアが、絶句した。
「労農革命党に、マフィアですって? あなた、いったい何者なの?」
「あたしは、女革命家ルビー・クール。世界を変える女。世界を救うために。今回は、この街を救うことが目的よ」
世界を救うとは、自分でも、ずいぶんと大きなことを言ったものだと思った。
だが、相手がダリアならば、そのくらい吹いたほうがいい。そうしないと、革命家として、位(くらい)負けしてしまう。
「で、具体的な作戦は?」
ダリアが乗ってきた。これで、半分は成功だ。
「労農革命党の党員の中には、元兵士の戦争経験者も、けっこういるわ。だから、銃と弾丸さえ充分にあれば、それなりの戦力の戦闘部隊を結成できる。そこで、この銃火器店の銃と弾丸の半分を、労農革命党に提供する」
「冗談じゃないわ!」
ダリアが、叫ぶように口を挟んだ。
ルビー・クールが、したり顔で頷いた。
「心配よね。労農革命党が、あなたが提供した銃で、資本家を襲撃することが。だけど今は、争ってる暇はないわ。あなたたち自由革命党が、高級住宅街を防衛するのに手一杯なのと同様に、労農革命党は、労働者街を守るのに必死なのよ。資本家を襲撃する余裕など、ないわ」
ダリアが、思わず口を閉じた。
言葉を、続けた。ルビー・クールが。
「資本家が住む北西エリア、あなたたちの戦闘員だけで、いつまで防衛できるかしら」
「彼らは皆、歴戦の強者(つわもの)よ」
「ええ、知ってるわ。だけど、防衛線は長すぎる。あの戦闘員の数では、守り切れないわ。戦力の薄いところを人海戦術で突撃されたら、防衛線を突破されてしまう」
そこで、いったん言葉を句切った。
ダリアの表情を、読んだ。ダリアは無表情を装(よそお)っていたが、明らかに、痛いところを突かれたという表情だ。
「労農革命党の戦闘員が、高級住宅街を守ってくれるって言うの?」
「違うわ。攻勢をかけるのよ。無産者革命党のアジトにね。あたしとあなた、労農革命党と、自由革命党の戦闘部隊が、共闘してね。無産者革命党の党員の大部分は、文字の読み書きができない。だから、人体で言えば頭にあたる幹部たちを殺害すれば、彼らは組織的な行動をとれなくなる。高級住宅街を組織的に襲撃することもできなくなるわ」
ダリアは数秒間、沈黙した。考えているのだ。
「さっきあなた、マフィアって言ったわね」
「ええ。今、呼ぶわ」
店の外に出て、ジャッカルの娘エルザを店内に招き入れた。
「誰、この男?」
「女よ」
エルザがフードを取って、顔を見せた。
ルビー・クールが、紹介した。
「エルザ、この銀髪の女が、自由革命党の女革命家ダリアよ。ダリア、このブルネットの髪の女が、帝都最大のマフィア銀狼会の幹部の娘で、女殺し屋のエルザよ」
エルザは、気味の悪い笑みを浮かべた。
ダリアは絶句し、引きつった表情を見せた。数秒の沈黙後、口を開いた。
「あなた、どういう交友関係なのよ」
ルビー・クールが、ニヤリと笑った。
「ちょっと、殺し合ったことがあってね。あなたとのようにね」Noveliaとは?
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