絶体絶命ルビー・クールの逆襲<帝都大乱編>
十九世紀末の欧州。
クリスマスの二週間ほど前の土曜日、極悪テロ組織「無産者革命党」が、帝都平民区で一斉蜂起した。いわゆる「帝都大乱」の勃発である。警察機能は停止し、街は無法地帯と化した。
赤毛の美少女ルビー・クールは、平民区の孤児院で慈善活動をしていたときに、無産者革命党に襲撃される。孤児院の子どもたちを人質に取られたルビー・クールは、絞首刑台広場に連行される。広場を埋め尽くしているのは、無産者革命党の党員や支持者の男たち1万人以上。
ルビー・クールは、首に絞首刑用ロープをかけられ、処刑直前の状況だ。
無産者革命党の司令官は、ルビー・クールと共に、孤児院の子どもたちも処刑することを宣言した。
孤立無援で絶体絶命の窮地の中、孤児院の子どもたちを救うため、死刑台の上から今、ルビー・クールの逆襲が始まる。
絶体絶命ルビー・クールの逆襲<帝都大乱編> - <第八章 第二話>
<第八章 第二話>
次の瞬間、ローズとエルザが縦に回転した。ローズの頭部を起点として。
レスリングの技だ。見たことがある。
あっという間に、エルザが下で、ローズが上の体勢となった。
フランクが銃口をローズの背中に向けた。
ダリアが魔法詠唱をやめて叫んだ。
「エルザにあてちゃダメよ!」
だがその瞬間、ローズが立ち上がった。エルザと共に。
いや、正確には、ローズが立ち上がりながら、エルザを引き起こした、と言うべきか。
「どけ、じゃまだ!」
フランクがエルザに向かって怒鳴った。
その直後、ローズが腰をひねった。右膝を、エルザの脇腹に蹴り込んだのだ。
エルザの上半身が、くの字に折れた。
次の瞬間、エルザの首に刺さった。ローズの右手のナイフが。
「エルザ!」
思わず、叫んだ。ルビー・クールが。
エルザの身体は力を失い、床に崩れ落ちた。
発砲した。ルビー・クールが。左右の手のリボルバーを。
だが、あたらなかった。
ローズは、再び腰を床に落とし、銃弾を回避した。
フランクが発砲した。
また、あたらなかった。
ローズが床を転がって回避したからだ。
しかも転がる際に、空中に何かを投げた。
円筒形の物体だ。
反射的に、ルビー・クールは床に伏せた。
「お嬢!」
そう叫びながら、フランクがダリアに抱きつき、床に飛び込んだ。ダリアの頭部を、太い腕で守りながら。
爆発音が、轟(とどろ)いた。
その爆発音は、手榴弾よりも、はるかに小さかった。
ルビー・クールが、レジカウンターから頭を出した。銃口と共に。
黒い煙(けむり)で、覆(おお)われていた。銃火器店の玄関ホールの中央部分が。
「煙幕弾よ!」
ルビー・クールが叫んだ。
フランクが怒鳴った。
「くそ! 逃がすな! 撃ち殺せ!」
その瞬間、ベルが鳴った。大音量で。目覚まし時計の十倍以上の音量だ。
次の瞬間、無数の銃弾が飛び込んできた。店内に。銃弾はショーケースのガラスを破壊し、木製のレジカウンターを貫通した。
フルメタル・ジャケット弾だ。
ルビー・クールは、反射的に床に伏せた。
視線を向けると、フランクが、ダリアに覆(おお)いかぶさっていた。ダリアを守るために。だが、人間の身体では、盾にはならない。フルメタル・ジャケット弾の場合は。
凄(すさ)まじい銃撃音が続き、大量のフルメタル・ジャケット弾が店内に飛び込んできた。
ショーケースのガラスが、次々に割れる音がした。
木製のレジカウンターを、スパスパと、フルメタル・ジャケット弾が貫通した。
ルビー・クールの頭上を、フルメタル・ジャケット弾が通過した。
恐怖で、全身が総毛立った。
ルビー・クールは、心の中で悲鳴をあげた。
怖い、怖い、怖すぎる。
フルメタル・ジャケット弾の前には、店の木製ドアも、木製レジカウンターも、遮蔽物にはならない。
心の中で悲鳴をあげながら、床に這(は)いつくばり続けた。強い恐怖のため、まったく身動きできなかった。
冷や汗を流し、恐怖に震えていた。
だがそのとき、ハッと気がついた。
店内に、銃弾が、飛び込んでこなくなっていた。最後に銃弾が飛び込んできてから、十数秒、いや、二十数秒は経っている。
銃撃戦の音は、聞こえ続けている。二階にいるダリアの部下たちと、店外にいるローズの仲間たちが、撃ち合っているのだ。
足音が、聞こえた。複数だ。ローズの仲間だろう。救出に来たのだ。先ほどの大音量のベルは、ローズが仲間に出した合図だったのだ。
動かなければ。戦うために。
そう思ったが、ルビー・クールの身体は、動かなかった。フルメタル・ジャケット弾に対する恐怖で。
だが、動かなければ、敵に見つかり殺される。
そうかしら。
敵はローズを救出してすぐに、店から脱出するかもしれない。それなら、このまま動かずに、じっとしていたほうが、安全だ。
いや、それは違うわね。それは、希望的観測にすぎないわ。
敵の目的は、この銃火器店を占拠すること。その交渉のために、ローズが来た。
いや、それも違うわね。
ローズは最初から、交渉する気など無かった。自分一人の力で、店の一階にいる敵を、魔法で皆殺しにするつもりだったのだ。
だが、その計画は狂った。原因は、ダリア、エルザ、ルビー・クールの三人だ。フランクも、ルビー・クールが心臓マッサージと人工呼吸をしなければ、あのまま死んでいた。
動け、動くのよ。床に伏せたままでは、戦えない。
心の中でそう叫んだが、ルビー・クールの身体は、フルメタル・ジャケット弾への恐怖で硬直し、動かなかった。
足音が、近づいてきた。木製のレジカウンターのほうへ。
動け!
動け!
動け!
そして、戦え!
ルビー・クールは、心の中で叫んだ。自分自身に向かって。Noveliaとは?
Noveliaは、AIでライトノベルや二次創作を「読んで・数タップで作って・キャラクターと会話できる」プラットフォームです。挿絵つきの新作が毎日届き、無料で始められます。