異世界娼館で生きる
異世界娼館で生きる
サキは日本の平凡な学生だったが、気がつくと異世界の奇妙な森の中で目を覚ました。状況を理解する間もなく、盗賊に襲われ、集団で犯された。泣き叫び、意識を失った。再び目を開けると、奴隷商人のガロンが彼女を見つけ、「また商品が手に入った」と笑っていた。首には奴隷の刻印が焼き付けられ、逃げ道はなかった。
移送中、ガロンは何日もサキを飢えさせた。パン屋の前で空腹に耐えかね、パンを乞うと、店主は「金か、体か」と言った。飢えが羞恥心を押しつぶした。店の裏で、一斤のパンのために彼に口で奉仕した。自らの意思で堕ちたのは、それが初めてだった。
続いてガロンの「調教期間」が始まった。荷馬車や宿屋で、彼はサキの体を使い、この世界の性的技巧と魔法の媚薬を教え込んだ。「これで高く売れる」と言いながら、何度も彼女を犯した。抵抗する意思は消え失せた。
町では、荒くれの冒険者たちが市場でサキに目をつけた。ガロンは止めもせず、彼らはサキを路地に引きずり込み、集団で犯した。その後、ガロンはただ「この世界では普通のことだ」と言った。
サキは高級娼館「月光亭」に売られた。先輩の娼婦カミラは冷たかった
異世界娼館で生きる - 猿真似の檻
夜明け。
サキは壁に手をついて歩く。一歩。また一歩。膝が軋む。肋が痛む。昨夜の客、クロスに倍量の紅夢粉を吸わされ、暴力と快楽を混ぜ合わせた地獄だった。太股の内側に乾いた感触がこびりついている。
でも、目は冴えていた。
執務室の前に立つ。息を整える。胸元を、わざと少しだけはだけさせた。鎖骨がのぞく。乳房のふくらみが、薄い布の下で揺れる。
ノック。
「[cold]入りなさい」
扉を開ける。
マダム・ヴェスパが机の向こうに座っていた。黒いドレス。痩せこけた手が羽根ペンを握る。真っ黒な長い髪を緩くまとめ、冷ややかな金色の瞳がサキを貫く。左耳の小さな宝石が、魔法灯の光を受けて鈍く光っている。
「[cold]次の客を寄越してください」
声は震えていなかった。
ヴェスパの指が、ぴたりと止まる。金色の瞳が細まり、サキの全身を頭からつま先まで舐めるように見た。唇の端のがさついた傷。痣だらけの腕。それでも折れていない目。
沈黙。
ヴェスパは何も言わなかった。ただ口の端を持ち上げる。笑み——それは試験に合格した教師の顔ではなかった。獲物の価値を再評価した猟師の顔だ。
ヴェスパはゆっくりと立ち上がった。黒いドレスがかすかに揺れる。奥の扉へ歩く。手をかけ、静かに開ける。
「[cold]お待ちなさい」
扉の向こうへ消える。
サキは待った。
自分の鼓動が、壁に反射して聞こえる。
(誰が来る)
数分。
扉が開いた。
現れたのは——ガロンだった。
42歳の肥満体。いつも通りの商売人の笑顔。しかし連れているのは若い少女だ。怯えた目。首には新しい奴隷刻印の痕が赤く腫れている。ガロンはサキを見て、さらに笑みを深くした。
「[laughing]よお、サキ。元気にしてたか」
サキの心臓が跳ねた。
(今だ)
体中の警戒心を押し殺す。怖さを、腹の底に押し込む。
これまで覚えた全てを使う。
「[gentle]……ガロンさん」
声のトーンを落とし、甘く。崩れた胸元が、さらに深く開く。鎖骨から乳房のふくらみへ、なだらかな線が露わになった。
上目遣い。深い茶色の瞳に、わざと光を宿らせる。
指先でガロンの袖に触れた。軽く。引き寄せるように。
「[whispers]あたし……変わりました」
言葉を切る。間を置く。息を、わずかに乱す。
パン屋の親父が崩れた仕草。ワイン屋の配達人マルコが理性を失った誘導。オルドが赤面した接触。全部を、一度に出した。
ガロンは途中まで無表情だった。
サキは手応えを感じた。
(効いてる)
心の中で、支配という言葉が熱く脈打つ。
その時——
ガロンの手が動いた。
太い指がサキの顎を掴む。がっちりと。逃げられない。
「[cold]サキ」
声のトーンが変わっていた。
「[cold]お前、パン屋の親父を手なずけたと思ってるな」
サキの目が見開かれる。
「[cold]ワイン屋の配達人も、マルコって言ったか。あれもお前が支配したと思ってる」
何を言っている。
「[cold]あのな、パン屋は俺の知り合いだ」
ガロンの顔が近づく。息がかかる距離。
「[cold]ワイン屋の配達人も、事前に俺が指示を出しておいた。『若い女が近づいてきたら、好きにしていい』ってな」
声が、頭に入ってこない。
「[cold]掃除夫のオルドもだ。あいつはお前に同情してるふりをして、全部報告してた」
ガロンの笑みが深くなる。
「[laughing]お前が支配したと思ってた男たちは、全員俺が仕込んで演じさせた役者だ。お前が覚えたのは、俺が教えようとしたことの猿真似に過ぎない」
サキの頭の中で、何かが崩れた。
パン屋の親父の、だらしなく崩れた顔。
ワイン屋のマルコの、従順だった様子。
オルドの、真っ赤になった頬。
全部。
全部が、作られた反応だった。
自分が初めて掴んだと思っていた支配は、最初から存在しなかった。
目の前が真っ白になる。
体から力が抜ける。
「[laughing]いい顔だ。今のお前の顔、見たかったんだよ」
ガロンが顎を放した。
そのまま肩を掴まれ、冷たい石の床に叩きつけられる。
衝撃。
肋骨が軋む。口の中に血の味。
「あ……ぁ」
声にならない。
ガロンが見下ろしている。
サキは石の模様を天井を見るように眺めた。ひび割れ。染み。黴の匂い。
涙が出ない。
怒鳴れない。
ただ天井を見上げたまま、感覚がどこかに消えていく。
でも——
サキの視線はガロンの手に向いていた。
自分を床に叩き落とした拳。
その拳が、ほんのわずかに震えていた。
(恐れてる)
消えかけた意識の中で、その事実だけが小さく灯る。
ガロンはサキから手を離した。
「[cold]行くぞ」
連れてきた少女に声をかける。少女は怯えたまま、ガロンの後を追う。二人の足音が廊下に消えていく。
執務室にヴェスパが戻ってきた。
サキは床に倒れたまま。
ヴェスパは無言で、机の前を通り過ぎる。冷たい金色の瞳が、床のサキを一瞥した。それだけ。
椅子に座る。羽根ペンを取る。仕事を再開する。
時間が流れた。
誰も来ない。誰も助けない。
サキは天井を見上げていた。
やがて廊下に足音。
カミラだった。
暗い紫色の長髪を無造作に結んでいる。冷たい銀色の瞳が、床に倒れたサキを見た。左頬の細い縦傷が、朝の薄明かりで濃く浮かび上がる。
カミラは一瞬、立ち止まった。
サキの顔を見る。
声をかけようとして——口を閉じた。サキの目が、泣いていないことに気づいたからだ。
カミラはしゃがみこんだ。
「[whispers]……立て」
サキは動かない。
天井を見上げたまま、唇がかすかに動く。
ほとんど聞こえないくらい小さな声。
「[whispers]じゃあ次は、教えてくれないことを覚える」
カミラの銀の瞳が、見開かれた。
息を呑む。
答えを返せない。
カミラは無言でサキの腕を引いた。肩を貸し、立たせようとする。
サキの目には、涙はなかった。
そこにあったのは——暗く冷たい、別の何かだった。
カミラは唇を噛んだ。
(こいつは、もう止まらない)
確信が胸の中を重くした。
廊下の奥から、ヴェスパの冷たい金色の瞳が二人を見つめている。
黒いドレスが、かすかに揺れた。