異世界娼館で生きる
異世界娼館で生きる
サキは日本の平凡な学生だったが、気がつくと異世界の奇妙な森の中で目を覚ました。状況を理解する間もなく、盗賊に襲われ、集団で犯された。泣き叫び、意識を失った。再び目を開けると、奴隷商人のガロンが彼女を見つけ、「また商品が手に入った」と笑っていた。首には奴隷の刻印が焼き付けられ、逃げ道はなかった。
移送中、ガロンは何日もサキを飢えさせた。パン屋の前で空腹に耐えかね、パンを乞うと、店主は「金か、体か」と言った。飢えが羞恥心を押しつぶした。店の裏で、一斤のパンのために彼に口で奉仕した。自らの意思で堕ちたのは、それが初めてだった。
続いてガロンの「調教期間」が始まった。荷馬車や宿屋で、彼はサキの体を使い、この世界の性的技巧と魔法の媚薬を教え込んだ。「これで高く売れる」と言いながら、何度も彼女を犯した。抵抗する意思は消え失せた。
町では、荒くれの冒険者たちが市場でサキに目をつけた。ガロンは止めもせず、彼らはサキを路地に引きずり込み、集団で犯した。その後、ガロンはただ「この世界では普通のことだ」と言った。
サキは高級娼館「月光亭」に売られた。先輩の娼婦カミラは冷たかった
異世界娼館で生きる - 売却
応接間は冷え切っていた。
暖炉の火はとっくに消え、窓から差し込む朝の光だけが部屋を薄く照らしている。空気が肌に刺さるように冷たい。
サキは部屋の中央に立っていた。
裸足の足の裏に、石の冷たさが這い上がってくる。肩を抱く腕に力が入らない。唇の傷がまだ疼く。目の下の痣は青黒く変色したままだ。
机の向こう。
マダム・ヴェスパは座っていた。
真っ黒な長い髪を緩くまとめ、冷ややかな金色の瞳がサキを貫く。痩せこけた手が羽根ペンを握り、書類の上を滑らせている。黒いドレスは微動だにしない。
サキが入室しても、顔を上げなかった。
ペンの走る音だけが響く。
サキは黙って待つ。
床に落ちる自分の影が、やけに薄く見えた。
やがて。
ヴェスパが羽根ペンを置いた。
金属のペン先が机に触れる小さな音。
顔を上げる。
金色の瞳。
怒りも苛立ちもない。ただの計算。まるで商品の在庫を確認するような、冷たい分析の光だけがあった。
「[cold]あら、それは残念ね」
声は静かで、平坦だった。
サキの背筋に冷たいものが走る。
「[cold]あなた、軍に売ってあげたわよ」
言葉の意味が、頭に届かない。
軍に。売った。
サキは瞬きもせず、ヴェスパを見つめていた。
「[cold]地下牢でのあなたの振る舞い——商品価値が大きく下がりましたわ」
ヴェスパは書類を引き寄せ、指先でなぞる。
「[cold]裏メニューでの消耗も激しい。客からの評価も最低。投資に見合う回収はもう見込めません」
淡々とした口調。
「[cold]でも、まだ使える。軍の慰安要員なら、多少壊れていても需要がありますのよ」
サキは口を開こうとした。
でも声が出ない。
「[cold]午後には迎えが来ますわ。それまでに準備をなさい」
準備。
サキは自分の手を見た。震えている。指先が白くなっている。
「[serious]……待って」
声が掠れた。
「[serious]あたし、まだ——」
一歩踏み出す。
首が焼けた。
「——っ!!」
激痛。膝が折れる。床に手をつく。息が止まる。首の奴隷刻印が脈打つたびに、焼けた針金を巻きつけられるような痛みが走る。
「[cold]忘れたのかしら」
ヴェスパの声が、痛みの向こうから聞こえる。
「[cold]あなたの首にある刻印——ブランドマークは、所有者に逆らえば苦痛を生むの。私が所有者。あなたは商品」
サキは床にうずくまり、歯を食いしばった。
息ができない。視界が白くにじむ。口の中に血の味が広がる。
「[cold]抵抗しなければ痛みは消えますわ」
サキは動きを止めた。
痛みが引いていく。
ゆっくりと。
呼吸が戻る。
床に手をついたまま、サキは顔を上げた。
ヴェスパはすでに書類に視線を戻している。
興味を失ったかのように。
「[cold]お下がりなさい」
サキは立ち上がった。
足が震える。膝が笑う。
振り返らず、扉へ向かう。
——
館の裏口。
幌馬車が待っていた。
埃まみれの布。錆びた車輪。馬の鼻息が白く濁る。空気は冷たく、曇り空がどこまでも広がっている。
二人の兵士が立っていた。
無表情。無言。鎧の表面が曇りの光を鈍く反射する。
サキの両腕を掴む。
「[scared]離して——!」
首が疼く。
「——ぐっ!」
膝が崩れる。兵士たちは無理やりサキを引き起こし、馬車へ押し込んだ。
幌の中。
薄暗い。黴臭い。板の床が冷たい。
サキは振り返った。
月下の館の裏口。石造りの壁。閉まる扉。
その影に——カミラの姿はない。
オルドもいない。
誰も見送っていなかった。
幌が下ろされる。
視界が暗くなる。
馬車が動き出す。
揺れ。
石畳を打つ蹄の音。車輪の軋む音。
サキは膝を抱えた。
——
馬車は街を抜ける。
荷馬車とすれ違う音。商人の呼び声が遠ざかる。歓楽街の匂いが薄れていく。
不意に。
馬車が止まった。
外から声。
「[laughing]おいおい、そいつぁあの時の——」
サキの身体が硬直した。
その声を知っている。
幌の隙間から、かすかに外が見えた。
荷馬車のそば。
奴隷商人ガロン。肥満体。笑っている。
「[laughing]月下の館のサキだろ? まだ生きてたのか」
サキは唇を噛んだ。
「[laughing]軍に売られたんだってなァ。やっと商品らしく使われるじゃねえか」
笑い声。
サキは何も言い返さない。
声が出ない。
震える拳を握るだけ。
「[laughing]せいぜい兵隊どものおもちゃになってこい」
馬車が再び動き出す。
笑い声が遠ざかっていく。
サキの耳に、いつまでも残った。
——
幌馬車の中。
揺れが続く。
サキは天井を見上げていた。布が張られただけの幌。ところどころ破れている。
隙間から光が漏れる。
(カミラ)
胸の中で名前が浮かぶ。
無愛想な顔。冷たい銀色の瞳。でも手当てはいつも優しかった。水を含ませた布で傷を拭いてくれた夜。娘を亡くしたことのある人。だから年下を放っておけなかったんだと知ったのは、ずっと後のことだ。
(オルド)
掃除夫の若い男。ガロンの指示で動いていた役者。でも——あの赤くなった頬は、全部が演技だったのか。
今はもう遠い。
月下の館での日々が、現実だったのか夢だったのか曖昧に感じる。
自分の名前さえ、自分で呼んだかどうかわからなくなる。
サキ——あたしの名前。
(サキ)
唇だけで呟く。
(あたしは、まだ——)
馬車から飛び降りよう。
その考えが浮かんだ瞬間——。
首が焼けた。
「——っ!!」
身を縮める。痛みが首から肩へ、背中へと広がる。息ができない。
刻印。
奴隷刻印——ブランドマーク。首に刻まれた魔法銀のインク。所有者から一定距離を離れようとすれば激痛が走る。逃げることは物理的に不可能だ。
サキは床にうずくまり、痛みが引くのを待った。
震える手を首に当てる。
刻印が熱を持っている。
逃げられない。
その事実が、重くのしかかる。
——
三日目の夕刻。
馬車が止まった。
外から男たちの声。テントを打つ風の音。金属の擦れる音。
幌が上げられる。
サキは目を細めた。
光。
そして——。
匂い。
泥と血と硝煙。腐った藁。汗と鉄と焦げた肉。すべてが混ざり合って鼻をつく。
野戦キャンプ第七従軍区。
視界の先にはボロボロのテントが無秩序に並んでいる。松葉杖をつく負傷兵。虚ろな目で地面に座り込む兵士。包帯に滲む血の色。
サキは馬車から降ろされた。
足が泥に沈む。冷たい。
兵士たちの視線が集まる。
品定めするように。
一人一人の目がサキの全身を舐め回す。脚。腰。胸。顔。痣だらけの肌。
サキは立ち尽くした。
身体が震える。
逃げ出したい。でも刻印がそれを許さない。
「[cold]こいつか」
声。
サキは顔を上げた。
軍服を着た男が立っている。書類を手にしている。サキの顔も見ず、紙面に目を落としたまま。
「[cold]名前もいらん。今日からここで兵隊どもの相手をしろ」
サキは口を開いた。
でも声が出ない。首の刻印がかすかに疼く。
兵士がサキの腕を掴む。
引きずられるように、テントの一つへ連れて行かれる。
薄汚れた小さなテント。
中に入れられた。
使い古された毛布。簡素な寝台だけ。壁には乾いた血の跡がこびりついている。誰かの爪で引っ掻いたような傷痕も。
兵士は去った。
一人。
遠くから、キャンプの門が閉まる重い音が響いた。
サキは膝を抱えた。
震えが止まらない。
泥と血と硝煙の匂い。兵士たちの虚ろな目。壁の血痕。
これから始まる地獄。
想像を超える何かが、このテントの外で待っている。
(生き延びなければ)
胸の奥底で、本能だけがかすかに光っている。
(あたしは——まだ)
サキは震える手を握りしめた。
外では風がテントを叩き、どこかで負傷兵が呻いている。
日が沈み、キャンプが闇に包まれていく。