異世界娼館で生きる
異世界娼館で生きる
サキは日本の平凡な学生だったが、気がつくと異世界の奇妙な森の中で目を覚ました。状況を理解する間もなく、盗賊に襲われ、集団で犯された。泣き叫び、意識を失った。再び目を開けると、奴隷商人のガロンが彼女を見つけ、「また商品が手に入った」と笑っていた。首には奴隷の刻印が焼き付けられ、逃げ道はなかった。
移送中、ガロンは何日もサキを飢えさせた。パン屋の前で空腹に耐えかね、パンを乞うと、店主は「金か、体か」と言った。飢えが羞恥心を押しつぶした。店の裏で、一斤のパンのために彼に口で奉仕した。自らの意思で堕ちたのは、それが初めてだった。
続いてガロンの「調教期間」が始まった。荷馬車や宿屋で、彼はサキの体を使い、この世界の性的技巧と魔法の媚薬を教え込んだ。「これで高く売れる」と言いながら、何度も彼女を犯した。抵抗する意思は消え失せた。
町では、荒くれの冒険者たちが市場でサキに目をつけた。ガロンは止めもせず、彼らはサキを路地に引きずり込み、集団で犯した。その後、ガロンはただ「この世界では普通のことだ」と言った。
サキは高級娼館「月光亭」に売られた。先輩の娼婦カミラは冷たかった
異世界娼館で生きる - 夜明けの地下牢 ― 殺意という名の火種
部屋に戻った。
カミラが無言で扉を開ける。手に水の椀を持っていた。サキはそれを受け取る。指が震えて、水面が揺れた。一口、飲む。冷たい水が喉を通る。
「[cold]今夜は休め」
カミラはそれだけ言うと、サキの隣に腰を下ろした。何も言わない。ただ、そこにいる。冷たい銀色の瞳が、窓の外の闇を見つめている。
サキは横になった。身体が重い。全身の打撲が、じくじくと疼く。瞼を閉じる。闇が降りてくる。
「[cold]明日の夜」
カミラの声が、暗闇の向こうから聞こえた。
「[cold]客が来る。備えとけ」
誰だ、と聞こうとした。でも、声が出ない。カミラは立ち上がり、部屋を出ていった。その背中が、なにか言えない理由を抱えているように、サキには感じられた。
——誰が来るんだ。
考えたくなかった。でも、頭のどこかで、もうわかっていた。
眠りに落ちる。
痛みと疲労が、サキを無理やり意識の底に沈めた。
目が覚めた。
窓から朝日が差し込んでいる。身体を起こす。肋が軋んだ。腕の痣が、紫色に変色している。サキはゆっくりと立ち上がり、部屋を出た。
廊下を歩く。
裸足の裏に、冷たい石の感触。遠くから、誰かの笑い声がする。館は朝になっても、どこか薄暗い。甘ったるい香水の匂いが、壁に染み付いている。
玄関ホールの方へ歩く。
窓から外が見えた。馬をつなぐ柱。朝の光を浴びて、石畳が白く光っている。
——馬が来る。
蹄の音。サキの足が止まった。
黒い馬だ。鞍から降りる男。革の鎧。無精ひげ。左目の傷痕。
——右手。
鉤爪の金属義手が、朝日に鈍く光った。
呼吸が、止まった。
ダガン。
七日間、脳裏に焼き付いて離れなかった鉤爪。森の中で、あたしを捕まえ、仲間に売り、この地獄の始まりを作った野盗の頭。
全身の血が、一瞬で凍りつく。
次の瞬間、熱くなった。怒りだ。腹の底から、黒いなにかが湧き上がってくる。手が震える。指先が、壁の石を掻いた。
——殺したい。
初めての感情だった。この七日間、ただ怖くて、痛くて、何も考えられなかったあたしの中に、これがあったのか。
サキは壁に背を押しつけた。息を整える。ダガンが館の入り口に向かう。あの鉤爪が、扉を押し開ける。
廊下の影に隠れる。
見つかってはいけない。まだ。まだだ。
執務室に呼ばれた。
マダム・ヴェスパが机の向こうに座っている。冷たい金色の瞳。黒いドレス。左耳の宝石が、蝋燭の灯りを反射している。
「[cold]今夜の客よ」
羊皮紙を机に置く。指先で、とん、と叩いた。
「[cold]ダガン様。ケルベックの牙のリーダー。常連の上客だから、丁寧に扱いなさい」
心臓が、耳の奥でドクドクと鳴っている。
「[cold]わかったわね」
サキは頷いた。表情を消す。なにも感じていないふり。ヴェスパは満足したように、羽根ペンを手に取る。話は終わりだ。
廊下に出た。
扉を閉める。その瞬間、両手が震え始めた。止まらない。指の震えが、腕に広がり、肩に達する。
——殺したい。
さっきと同じ言葉が、また浮かんだ。でも、今度は恐怖じゃない。殺意だ。本物の、どす黒い殺意だった。
紅夢粉。
あの地下特別室で、助手が使っていた革袋。薬の保管場所を、サキは知っていた。あの地獄の夜、身体に染み込ませた知識。元の世界のネット知識じゃない。この世界そのものが教えた、復讐の方法。
——あれを使う。
夜。
客室に通されたダガンは、椅子に背を預けていた。右手の鉤爪が、肘掛けに軽く当たって、かちりと音を立てる。
「[cold]酒だ」
サキは無言で酒瓶を手に取った。手は震えない。落ち着いて、杯に酒を注ぐ。琥珀色の液体が、揺れる。ダガンが窓の外を見た隙に——指先で紅夢粉をつまみ、杯に混ぜた。粉が酒に溶ける。かき混ぜる。完全に消えた。
「[cold]お待たせしました」
杯を差し出す。ダガンはそれを受け取り、一口含んだ。
——その瞬間。
ダガンの眉が動いた。ゆっくりと杯をテーブルに置く。
「[cold]てめえ」
低い声。
「[cold]紅夢粉の味は知ってんだよ。元傭兵を舐めんな」
次の瞬間、手首を掴まれた。鉤爪の方の右手じゃない。左手が、サキの細い腕を握り潰すように掴む。
——引き倒される。
身体が床に叩きつけられた。背中に走る衝撃。息が詰まる。視界が歪む。ダガンが笑っている。
「[cold]やるじゃねえか、小娘」
笑顔が、恐ろしかった。
引きずられるようにして、執務室に連れていかれた。ダガンが経緯を話す。ヴェスパの金色の瞳が、サキを貫く。
「[cold]あら、それは残念ね」
声は相変わらず冷たい。感情がない。ただの事務処理。
「[cold]ダガン様、ご迷惑をおかけしました。この娘は今夜、地下牢で存分にお扱いください。謝礼代わりですわ」
——存分に。
ビジネスの言葉だった。人間を、罰の道具として差し出す。その声のトーンが、サキには全ての中で一番寒かった。
地下牢。
石の床に押し込まれる。鉄格子の扉が、ギィと閉まる音。湿った空気。カビと鉄の匂い。壁の隙間から、月明かりが細く差し込んでいる。
ダガンが鉄格子を開けて入ってくる。外套を脱ぎ、鉤爪の義手を外した。鉤爪が床に落ちて、からんと音を立てる。
「[cold]一晩だ。たっぷり楽しませてもらう」
拳が飛んできた。
顔に衝撃。口の中が切れる。鉄の味が広がる。倒れる。髪を掴まれ、引き起こされる。もう一発。今度は腹だ。息ができなくなる。
——まだ死ねない。
サキは心の真ん中で、その言葉だけを繰り返す。
ダガンが服を引き裂いた。乳房が露わになる。サキの身体をうつ伏せにひっくり返し、腰を持ち上げさせる。後ろから、硬いペニスが膣に押し当てられる。
——貫かれた。
「う……あぁっ」
痛みが全身を走る。でも、叫ばない。泣かない。ダガンの腰が激しく打ちつけられる。肉と肉がぶつかる音。サキの身体が揺れる。口からは喘ぎしか出ない。
「あ、あぁ……」
ダガンが射精した。熱い精液が、膣内を満たす。男が抜ける。サキは床に崩れ落ちた。
でも、それで終わらなかった。
少し休むと、また犯された。今度は仰向けにされ、正常位で挿入される。ダガンが腰を振りながら、サキの首を絞めた。
「[cold]いい目だ。生きたまま犯されてるって目をしてる」
呼吸が絞まる。視界がぼやける。それでもサキは目を閉じなかった。閉じたら負ける。この男を視界から消したら、あたしは負ける。
——まだ死ねない。
何度も射精された。膣に、顔に、胸に。身体中が精液まみれになった。それでもダガンはやめない。今度はサキの口にペニスを押し込む。
「[cold]咥えろ」
喉の奥まで突っ込まれる。吐き気。でも、吐けない。ダガンが口の中で射精した。しょっぱい。生臭い。飲み込むしかない。
「んぐ……く……」
ダガンが離れる。サキは床にうつ伏せに倒れた。動けない。全身が精液と血で汚れている。
——夜が、どれほど長かったか。
覚えていない。ただ、意識が途切れるたびに、ダガンがまた犯し始める。痛みと屈辱の波。
でも、サキは自分の奥底に、小さな炎があるのを感じていた。
それは消えない。
夜明け。
壁の隙間から、白い光が細く差し込んでくる。ダガンが出ていった。鉄格子の扉が閉まる音。遠い。
サキは石の床に倒れたまま、動けなかった。
全身が重い。痛みで指一本動かせない。顔の血が固まって、皮膚が突っ張る。精液が乾いて、太股にこびりついている。
——泣けない。
涙が、もう出ない。
——声が出ない。
ただ、石の壁の一点を見つめている。
長い沈黙。
サキは上半身をゆっくり起こした。壁に背をもたせかける。膝を抱える。薄暗い地下牢。月明かりは消え、朝の光が石の床に細い線を描いている。
口を開いた。
「[whispers]いつか」
声は震えていない。
「[whispers]全員、殺してやる」
言葉に、震えはなかった。涙もなかった。七日間の地獄を経て、ようやくサキの中に確かに固まったもの——それが復讐という名の目的だった。
その瞳だけが、異様な光を帯びている。
——いつか。
それは今すぐじゃない。手段がない。力がない。それでも、生きる理由を手に入れた。
どれくらい経ったか。
地下牢の扉が、静かに開いた。
カミラだ。手に水の椀と、乾いた布を持っている。いつもの無表情。でも、銀色の瞳が、サキの全身を素早く見渡す。
カミラはしゃがみ込んだ。言葉はない。布でサキの顔の血をぬぐう。その手つきは、乱暴だが、優しかった。
「[sad]なんで」
サキはかすれた声で聞いた。
「[sad]なんで、助けてくれるの」
カミラの手が、一瞬止まった。
「[cold]死なれると面倒だからだ」
いつもの口調。ぶっきらぼうで、短い。
でも、サキにはわかった。その言葉が嘘だと。
——突っ込まない。
サキは黙って水を受け取った。一口、飲む。冷たさが、喉を潤す。
水を飲み終えた。ゆっくりと立ち上がる。膝が折れそうになる。倒れかけた身体を、カミラが無言で支えた。肩を貸す。
「[gentle]……ありがとう」
小さな声だった。
この七日間で初めて、誰かに向けた感謝の言葉。
カミラは答えない。でも、わずかに視線が床に落ちた。その横顔が、いつもよりほんの少しだけ、柔らかく見えた。
地下牢を出る。
朝の光が眩しい。サキは目を細める。カミラの肩を借りて、一歩、また一歩、石の階段を上がっていく。
身体はボロボロだ。
復讐を成し遂げる術は、なにもない。力も自由も武器も知識もない。ただの奴隷娼婦のまま。
それでも——サキの瞳だけは、もう以前とは違って、静かに、確かに、未来を見据えていた。