異世界娼館で生きる
異世界娼館で生きる
サキは日本の平凡な学生だったが、気がつくと異世界の奇妙な森の中で目を覚ました。状況を理解する間もなく、盗賊に襲われ、集団で犯された。泣き叫び、意識を失った。再び目を開けると、奴隷商人のガロンが彼女を見つけ、「また商品が手に入った」と笑っていた。首には奴隷の刻印が焼き付けられ、逃げ道はなかった。
移送中、ガロンは何日もサキを飢えさせた。パン屋の前で空腹に耐えかね、パンを乞うと、店主は「金か、体か」と言った。飢えが羞恥心を押しつぶした。店の裏で、一斤のパンのために彼に口で奉仕した。自らの意思で堕ちたのは、それが初めてだった。
続いてガロンの「調教期間」が始まった。荷馬車や宿屋で、彼はサキの体を使い、この世界の性的技巧と魔法の媚薬を教え込んだ。「これで高く売れる」と言いながら、何度も彼女を犯した。抵抗する意思は消え失せた。
町では、荒くれの冒険者たちが市場でサキに目をつけた。ガロンは止めもせず、彼らはサキを路地に引きずり込み、集団で犯した。その後、ガロンはただ「この世界では普通のことだ」と言った。
サキは高級娼館「月光亭」に売られた。先輩の娼婦カミラは冷たかった
異世界娼館で生きる - 初夜と観察者
テントの布が揺れた。
夕暮れの薄明かりが、汚れた寝台の上に細く差し込む。泥と血と硝煙の匂い。腐った藁の酸っぱい臭気。
サキは寝台の端に座っていた。
膝を抱え、うつむいている。黒い髪が顔にかかり、表情は見えない。
三日だ。
野戦キャンプに売られてから、三日が経った。
初日、上官がテントに来た。無表情の男だった。サキの顔も見ず、書類を確認する。
「[cold]お前は今日からここで兵士の相手をする」
それだけ言って、出ていった。
入れ替わりで兵士が入ってきた。
二人。
無言でサキの両腕を掴む。
「[scared]やめて——」
首が焼けた。
「——ぐっ!!」
刻印の激痛。膝が折れる。抵抗するたび、焼けた針金を首に巻かれるような痛みが走る。
奴隷刻印——ブランドマーク。所有者から離れようとすれば激痛が走る魔法の枷。逃げることは、物理的に不可能だ。
兵士たちは構わず、サキを寝台に押さえつけた。
一人が左腕を掴む。
袖をまくり上げる。
細い注射針。
銀色の針先が、夕暮れの光を鈍く反射する。中には紅い粉——紅夢粉が溶けている。
「[scared]それは——」
声が震えた。
知っている。月下の館で何度も吸わされた。性的感覚を極端に増幅させる違法薬物。身体が自分の意思を無視して反応する。抵抗できない。
針が刺さった。
左腕の内側。
冷たい液体が血管に入ってくる。
——三十秒。
身体の奥から熱が湧き上がる。皮膚の下で何かが這い回るような感覚。指先が痺れ、息が浅くなる。
視界が歪んだ。
身体が熱い。
布が肌に触れるだけで、電流が走るような刺激が全身を駆け抜ける。
「[scared]やだ……やめ……」
声が震える。でも身体は違う反応をしている。
意思と無関係に、肌が粟立つ。呼吸が乱れる。
(ちがう)
心の中で叫ぶ。
(あたしは、嫌がってるのに)
兵士の手が服の上から胸をまさぐる。
「——っ!!」
背中が仰け反った。
触れられた場所から熱が広がる。脳が溶けるような快感。薬のせいだ。薬のせいなのに。
身体は正直に反応している。
兵士が荒い息を吐く。
サキは唇を噛んだ。
血の味。
痛みだけが、自分のものだった。
——。
天井の染みを数える。
一つ。二つ。三つ。
黄ばんだ染み。黴の模様。乾いた血の跡。
(四つ。五つ)
呼吸が落ち着かない。兵士の体重がのしかかる。腰が動くたびに、身体の奥で何かが脈打つ。
(六つ。七つ)
声を出すまいと、唇を固く結ぶ。でも喉の奥から漏れる息が止められない。
(やめて)
心の中で繰り返す。
(やめてやめてやめて)
兵士は聞こえない。
短い時間だった。
でも永遠に感じた。
——。
一人目が出ていく。
サキは寝台の上で丸くなった。膝を抱え、身体を小さくする。
まだ薬が抜けていない。
肌が過敏で、自分の髪が首に触れるだけでも震える。
(まだ——終わらない)
天幕が揺れた。
二人目が入ってくる。
サキは目を閉じた。
心の中で、日本の歌を繰り返す。遠い記憶の中の歌詞。もう誰が歌っていたのかも思い出せない。でも言葉だけが、頭の中に残っている。
(だれか——助けて)
声には出さない。
出せば、奴隷刻印がまた疼くから。
——。
夜が明けた。
初日の夜が終わる頃には、三人の兵士がサキのもとを訪れていた。
サキは寝台の端で膝を抱えていた。
目から水が出ない。
泣こうとしても、涙が出ない。
身体が痺れている。痛みも、感覚も、全部が遠い。
(あたし——)
言葉が浮かばない。
——。
二日目。
与えられたのは水だけだった。
食事はない。
サキは水を飲んだ。
冷たい水が喉を通る。それだけのことが、やけに長く感じる。
夕刻。
再び兵士が来た。
また腕に針が刺さる。
紅夢粉。
熱が身体を駆け巡り、また自分の意思を無視して身体が反応する。
サキは口を結んだ。
歯を食いしばる。
顎が痛い。血の味。
(あたしは、まだ——)
まだ、何?
問いかけに答えられない。
——。
三日目。
夜明け前。
サキは目を開けた。
天井の染みを見つめる。
目から水が出ない。
泣こうとする。
目の奥が熱くなる感覚はある。でも涙が出ない。
感情が、ない。
怒りも、悲しみも、恐怖も——全部がどこか遠くにある。
それは安らぎではなかった。
何かが死んでいく過程だった。
——。
三日間。
気づいていた。
天幕の入口付近に、時折現れる男がいることに。
他の兵士は声を荒げる。笑う。下品な言葉を吐く。
でも、その男は違った。
腕を組んで、ただ立っている。
表情はない。
冷たい目。
値踏みするような——まるで生き物の標本を観察する学者のような視線。
殴らない。怒鳴らない。
ただ、見ている。
サキは他の兵士よりも、その男の視線が怖かった。
なぜ怖いのか、言葉にできない。
暴力の方がわかりやすい。痛みには意味がある。
でも——あの静かな目は、何かより深いところに届く気がした。
——。
三日目の深夜。
最後の兵士が出ていった。
サキは寝台の端で膝を抱えている。
外は静かだ。遠くから見張りの足音だけが聞こえる。風がテントを叩く。
身体が痛い。痣と擦り傷だらけの肌。
でも——もう痛みにすら麻痺している。
天幕の布が揺れた。
サキは顔を上げない。
また兵士が来たのか。
でも——。
足音が近づいてくる。静かで、落ち着いた歩き方。
兵士たちの乱暴な足音とは違う。
サキはゆっくりと顔を上げた。
そこに立っていたのは——あの男だった。
軍服を着ている。肩に少尉の階級章。
短く刈り込んだ黒髪。鋭い顎の線。
そして——冷たい灰色の瞳。
(この人だ)
サキの背筋に冷たいものが走る。
ずっと観察していた男。
ヴァルター・グレーフェ少尉。
彼はサキを組み敷かなかった。
ただ、寝台の端に腰を下ろす。
静かな動作だった。
無言。
サキも動かない。
二人の間に沈黙が流れる。
外では風がテントを叩き、遠くで見張りの足音が規則正しく響いている。
ヴァルターはサキを見ていた。
殴らない。怒鳴らない。
ただ、冷たい灰色の瞳で。
やがて。
彼の顔がサキの耳元に近づく。
「[whispers]お前は賢い」
低く、静かな声。
呼吸が耳にかかる。
サキの全身が硬直した。
「[whispers]自分の置かれた状況がわかっている」
サキは答えない。
唇を噛む。指が膝の上で震える。
「[whispers]抵抗しない。泣きもしない。ただ、生き延びる方法を探している」
声は静かで、平坦だった。
感情がない。
でも——その言葉は、サキに届いた。
三日間。
誰もサキに言葉を向けなかった。
兵士たちは命令するか、笑うか、無言で身体を弄ぶだけだった。
でもこの男は——。
サキを人間として見ている。
いや、ちがう。
商品を値踏みする目だ。
でも、それでも——。
この地獄で初めて、自分に向けられた言葉だった。
その事実が、サキの心の麻痺した部分に、かすかに引っかかった。
ヴァルターは立ち上がった。
音もなく。
天幕の布を手で押し開ける。
振り返らない。
——。
一人。
サキは膝の上に視線を落とした。
震える手を握る。
(あの男は——)
何をしようとしているのか。
わからない。
でも——本能的に察する。
殴らない。怒鳴らない。
ただ、観察し、理解し、そして支配する。
言葉だけで。
(こわい)
心の中で思う。
他の兵士の暴力より、ずっと怖い。
でも——。
疲れと薬の残滓で、意識が朦朧としている。
考える力が残っていない。
サキは横たわった。
毛布の上に身体を投げ出す。
天井の染みを見つめる。
泣けない。怒れない。恐怖すら薄れている。
ただ——今日も生き延びた。
それだけの事実を、胸の中で確認する。
外で風が止んだ。
キャンプが静寂に包まれる。
サキはゆっくりとまぶたを閉じた。
ヴァルターの冷たい灰色の瞳が、頭から離れなかった。